穢される
月白もねの説明回
月白もねは三姉妹の次女として生を受け姉の美嶺とは仲の良い姉妹として生きていた、妹の真奈が生まれると姉として世話を焼いたり両親の不在の際には美玲に負担をかけぬように彼女をあやしたりしていた。
両親は三姉妹の中では分け隔てなく愛していて彼女達が欲する物は全て与え差別を受けない様に分配はしていた。
だがもねが才覚をコンクールで受賞して様々な賞を総なめにするなど顕にしていくと美嶺は負けじと彼女に挑むも歯牙にもかけぬ勢いで上り詰めていく太陽の如き才覚の前に彼女はプライドを打ち砕かれなけなしのプライドもへし折られた。
(何で…何であなた達は…もねにはあんなに才能を与えたのに私には…!私はもねの踏み台だったの!?父さん!母さん!!)
そして彼女は古風な風景画や人物画以外にもコミカルな漫画や副業で始めた挿絵等を描くように成り両親は次第にもねに対して最も期待するように成るのは自明の理ではあった。
「ね、ねぇさん…私はねぇさんの絵はそこまで酷評されるような物じゃないからそんなに不貞腐れなくても良いから…ね?」
「…ありがとうもね、いつも貴女は優しいわね」
もねは他の二人に対して謙虚かつ配慮はしていたが推薦を出されたりメディアにも取り上げられる様な若き才媛として扱われる様に成った。
真奈はそんな姉に苛立ちと不公平感を覚えて美嶺と同じく勝負を挑んだものの何をしても勝てずむしろ絵の道において精進するように励まされてしまった為挫けてしまい美嶺と共にコンプレックスを増させていった。
「ま、真奈ちゃん。いつも輪郭をキッチリ描いてから描こうとするけど、そうじゃなくて輪郭をキッチリ捉えるんじゃなくてまずはだいたいの形をデッサンしたら多分─」
「うるさいなぁ!!姉さんには何も分かんないよね、できない子の気持ちなんてさ!!!」
「ま、真奈ちゃん…?どうしたの?」
そんな二人に目をかけたのは同じ高校の神堂龍牙であり二人を慰めつつ取り入っていった。
神堂は学校では素行は悪いものの親がお金で不祥事を揉み消していた、そんな男であり成績は良好だが両親は基本不在の為同級生や上級生、下級生の女子生徒に頻繁に手を出していた曰く付きの男である。
美嶺は彼女の母性をくすぐるように駄目な部分を曝け出して潜り込むように入り込み自分を庇護対象に刷り込ませることに成功した。
真奈は彼女に不良達をけしかけてからその不良達を追い払ってそれから両親の金を使い遊園地の貸切や豪華なホテルへ誘って機嫌を取り王子様として振る舞った。
そして彼女達は神堂に靡き、彼の家で朝を迎えることが多くなった。
神堂は最大10人程と同時に関係を持ちふしだらな日常を過ごしているのはもねの耳にも届いていたが二人には何を言っても何も聞いてもらえずむしろ敵愾心を燃やしていて取り付く島さえなかった。
そんな日常を過ごしていたある日、神堂は姉妹をコレクションとしてコンプリートしようともねも欲しくなって彼女に声をかけるもアッサリと断られた。
「なぁもね、俺今日美嶺や真奈と『勉強会』やんだけど来な─」
もねは神堂が言い切る前に彼女に発言を遮られた。
「お!お断りします!!…貴方のような、人としてどうかしてる男性は私は理解出来ないのです…!」
「そんな酷い事言わないでくれよもね〜、ほらうちきたら」
「お断りしますと言ったでしょう!!」
もねは二人がこの男に靡いた理由は自分に有るとずっと責めていたが神堂と対面して理解した。
(こんな気持ち悪い男に惹かれるなんて姉さんや真奈は…そう、私が悪いんじゃなくてコイツが『悪』なのだと心で理解させられるわ)
そして神堂から誘われてから暫くして、もねの部屋には神堂と美嶺の臭いが籠る悲惨な状況に成った。
せっかく作成した美術部の為の作品を汚された。
せっかく保管していた小学生時代の作品を汚された。
せっかく守り抜いてきた─姉と共に描いた大空の絵を汚された。
限界になりもねは部屋の惨状と神堂の性事情を両親に打ち明けてその夜二人は両親に呼び出されて全てが明るみになり崩壊した。
愚かな判断をした美嶺に手塩にかけて育てていたつもりの父は失望した。
「もねから聞いたぞ!お前は10股をしているような倫理観の終わっている男と交際して、しかもよりによってお前…お前!!!」
「何が父さんに分かるのよ!?りゅー君は私が必要なの!!りゅー君は私と真奈が守ってあげないといけないのよ!!!」
「守るって何だ!?お前をあの男に妾としてくれてやる事が俺の養ってきた結果か!??ふざけるな!!」
母親はさめざめと泣き真奈を非難した。
「どうしてそんな男にあなたが…あぁ、何でなのよぉ…うぅうぅ…うぅぅぅ…」
「おかーさんは勘違いしてるんだよ!!もねお姉ちゃんに騙されて─」
「もねがそんな事言うわけ無いじゃない!もねが、もねがアンタみたいな!売女に慈悲をかけてやったのよ!!それが何で分かんないのよぉぉぉ…」
そんな地獄のような光景を作り出したもねは神堂を許すことが出来なくなった。
翌朝、美嶺の姿は無かった。
真奈はすっかり塞ぎ込んでしまい、やむを得なかったとはいえ
父親にこっぴどく叱られた事が耐えられなかったのだろうともねは朝学校に登校すると人だかりが出来ていた。
そして警官も居て立ち入りを制限していてもねは胸騒ぎがして近付くと友人が
「もね!大変!!神堂が、神堂ともねのお姉さんが!!!」
と声をかけていたのである。
そしてそこに見えたのは
─頭部は潰れていたが美嶺と神堂と思しき男女の遺体であった。
神堂と関係の有った女性達はその場で泣き崩れており、その中には見知った顔の者も居た。
その日はもねは帰されたものの胸騒ぎが収まることはなくむしろ広がり続ける感覚に襲われた。
苦虫を噛み潰したような表情に成り真奈へと警戒心を向けたものの結局は彼女の凶行を止めることは叶わなかった。
「母さん、父さん、逃げて!!早くこの家から出て!!」
「だ、だがもね!お前だけは」
「そうよ、私達にはもう貴女しか居ないのよ!!」
「あははは!もう王子様は居ないんだ、お姉ちゃん達が、お姉ちゃん達が壊したんだああああああ!!!」
やめて、と呼ぶもねの声は届かなかった。
真奈が家に火を放ったのだ。
そして両親を逃がそうと必死なもねは真奈の存在に気が付かなかった。
ドスッ
胸に激痛が走ったもねは後ろを見た。
虚ろな目をした真奈の姿がそこには有った。もねは咄嗟に抑え込み
「早く逃げ、て!母さん!!父さ、ん!!!わた、しが…ごふっ…抑えられてる…内に!!」
「ああ、そんな!もね!!」
「母さん!逃げるぞ!!もうじき家が焼け落ちるぞ!!」
「もね!もねぇ!!もねえええええ!!!!」
そして月白もねの生涯は妹の凶行により幕を下ろされた。
だが彼女は奇跡的に転生者サバイバル大会に参加する事により第二の生を得ることが許された。
だが彼女に待ち受けていたのは力と欲望に支配された愚かな転生者達の狂乱と暴虐であり、空間絵画の汎用性の高さ故に彼女は無事に生き残れて来れたのだ。
ある日は自身に鳩の絵を被せて難を逃れたり、ある日は落とし穴に落として動けない時に攻撃を仕掛けて撃破したり、またある時は「絵の具」で雑に塗り潰して攻撃したりして転生者達を葬ってきた。
そんな形で低地の国を拠点に過ごしていたものの強力な転生者達が念動力や弾幕砲撃、距離無効の次元斬等で暴れて低地の国が壊滅したと言う報せを聞き急ぎジルフェルダムへ駆けつけギフトを用いた偵察を行った上で王国の壊滅と虜囚と化した王国指導部を見つけた。
ウィレム王の配下達が転生者達に遊び半分で殺される様も見て彼らは神堂と同類なのだと悟った。
「…こんなに人とは、アッサリと穢れ、そして堕落出来るものなの…?力を手に入れたら、そんなに…そんなに他人を踏み躙る事が嬉しくなるの?なら─」
私もあなた達を踏み躙るわ。
そこからは早かった。
電光石火の如く無数の兵士や狼、獅子、羆等のペイントを描きそれらを大きな鷲に持たせて空中から撒いて転生者達不意を突き気を取られている間に空なら追尾式の岩石を描いて発射しこれらをアッサリと撃破した。
ウィレム王は娘や臣民、家臣達を弄ばれ尊厳を砕かれた故に驚く体力も無かったので反応も出来なかったが転生者達は怒号が飛び交い同士討ちさえ始めていた。
そして転生者達は何が起きているか分からないまま撃破され続け最後の一人に成ってもまともに反撃出来ないまま物量に押し潰され討ち取られた。
地上に降り立った月白は急ぎウィレム王の許へ駆けつけた。
「え、ええと!こここ国王陛下!お体はご無事でしょうか!?」
慌てふためきながらウィレムに話しかけた。
だが国王は娘を3人とも目の前で惨殺されもう言葉さえ発せぬ程に衰弱しており民草も疲弊し尊厳を砕かれた以上最早何も言えず動けない状況だった。
唯一アードルフは少しだけ動けたので
「…すまない、君の名前は?それと、君はこいつらの仲間か?」
と尋ねた。
「…そんな訳無いじゃないですか…。私は物を描くのは好きですが壊すのは私の最も嫌いな行為の一つですから。」
月白は少しだけ憮然としながら、しかし冷静に答えアードルフの問いかけに答えた。
「…まずは皆さんの手当てを行いますから、少し待っていてください」
もねはその後病院や医者を描き彼らを使役して転生者達の被害者達に手当てをして市民への応急処置を実施して食糧も描いて手渡す事でケアを完了した。
空間絵画は非常に汎用性の高いギフトであり戦闘面では絵の具を塗るだけでも効果を発揮する。
赤を塗れば赤にまつわる概念、炎を纏わせたり溶岩に包み込んだりする事が可能であり青なら水を作り出すことも可能である。
何かを描けばそれを使役することが可能でありまた食糧や資源なら描くと質は一定の基準は超えられないが使用に耐えうるものを供給する事が可能である。
そして月白もねは市民の為に市街地を描き建物をたったの3日で立て直してしまう事に成功した。
この功績を讃えて彼女は今貴族階級を授与され伯爵の位を保持している。
そんな彼女は今姉美嶺によって片腕をもがれて激痛に悶え苦しんでいた。
白濁汚濁の濁流に飲み込まれてスペツナズ隊員ごと攻撃を受けた結果右腕と右脇腹を抉り取られ、スペツナズ隊員達は何とか近くの建物内に逃げ込んだものの隊長が首から上だけになり激痛の中叫ぶしか出来なくなっていた。
「あああああ!!おれの、俺の身体が!!痛ぇ!痛えよおおおお!!お!俺のからだぁぁぁぁぁー!!!」
「ぐっ、あぁっ…はぁ、はぁ、ぐぅっ」
「もね…貴女はまだりゅー君の物にならないの?りゅー君は貴女が欲しいらしいのよ」
「…誰が、はぁ…誰があんな男に…!!」
「りゅー君を悪く言う資格が貴女にあったの?」
激痛で息が浅くなるもねの傷口を抉るように美嶺は踏みつけた。
「あはははは、いい気味ね。私や真奈、そしてりゅー君をこき下ろしていた貴女がこんな無様な醜態を晒しているなんて、もう滑稽よ。妹なのに姉である私よりも優秀なんて元々有ってはならなかったのよ」
「…っ!!」
「そろそろ良いか美嶺?俺も我慢の限界なんだけど」
神堂龍牙は美嶺に対して女性支配のギフト行使をする為にもねから離れるように促した。
神堂は喪失した戦力の穴埋めとコレクションの意味でもねを必要にしていた。
「うん!わかったよりゅー君!!さっさと終わらせて私達のお家に帰ろうね!!」
「ああ、だからまずは…もね。オレを受け入れてくれよ」
もねは服を破かれて下着が露出した。
「!? き、きゃっ」
「叫ばせねぇよ」
「む!?むぐっむがっやめっむうっ!??」
そして神堂はもねの上に覆い被さり無理やり舌をねじ込み彼女に快楽を注ぎ込み始めた。
神堂の妃の一人として彼の子を産み続ける悪夢を見せられもねは涙を流した、もう打つ手は無いし、しかし尊厳は確実に失われる事を。
「むっ。むぐっ。むうっ…」
(ああ、もうだめ…心が、堕ちて…)
屈しかけていたがその時であった。
神堂は真の意味で屈服させる為に腰を持ち上げズボンを下ろそうとしたその時である。
乾いた3発の銃声が響いた。
情けない悲鳴と共に地面にのた打ち回る神堂と彼を庇うように前に立つ月白姉妹。
そして─
「神堂ごめん。俺…お前の股間撃っちゃった」
「お見事です同志閣下、あんな女の敵はもっと股間を撃ってやりましょう!!」
きっと地獄にも救いの仏は居るのだ。




