第3話
試し撃ち
君塚は空気を久しぶりに吸いました。
そして文明に侵食されていない非文明的な清潔過ぎる空気を吐き出しました。
そう、地図もGPSも無しの森のど真ん中で。
「やべえ、ここ何処だ⋯」
右も木左も木前後も木地面は落ち葉に溢れ空は鬱蒼とした木々に覆われています。
そっと君塚は片膝をつき周囲の確認を行います。
臭い─不明、てかガチ森林浴
音─木々のざわめきしか聞こえん
視界─木々が生えてる事しか分からん、てか街道何処なの!?
あっ、負ける理由はこれかぁと思いました。
そう転生者バトルロワイヤルでは何処にスポーンするか不明です。
なら森のど真ん中やスラム街の路地裏、紛争地帯とか現代人が生き残れるか怪しいような場所でもスポーンしてしまった者も居ます。
そう君塚はまだマシです。
まだ近くに狼の群れや熊とか山賊とか居ませんから。
君塚は自身のギフトを確認します。
ギフト『軍隊創造(露)』
ソ連・ロシア系の兵器及び軍隊を造り出すことが可能。
現在はAK-47小銃、SVD狙撃銃、マカロフPM、そしてそれらのパーツや弾薬と糧食を生産可能。
兵器の創造はポイント制であり、ポイントを消費して創造する事ができる。ただし、あくまで『召喚』ではなく『創造』なので、一度創造した物体は世界から抹消できないので注意。
発展すると複雑な兵器や軍事訓練を受けた兵士を創造可能になる。
ギフト『官僚創造』
国家を運営する官僚なら、どのような分野の官僚でも創造でき、24時間働かせることが可能。
但し、所有者が国家元首ないし国家の重鎮である必要がある。
諜報員や外交官も創造可能。
「使えねえ〜⋯のか?これ??」
自身のギフトを確認して、第一声がそれでした。
異世界といえば聖剣とか強力な魔法であり、現代兵器、それもソ連製というのはどうなんだろうと君塚は唸ります。
確かに君塚はミリオタだった時期もありましたが、知識として知っているだけで、兵器の実戦経験など動画配信サイトで見た程度です。
弾薬を幾らでも作れると言われても、ランボーみたいに全身に弾薬を巻き付けて走り回れるわけがありません。
そもそも銃本体も重量物です。森の中で持ち歩くのは骨が折れます。
「まぁ最初はレベル1からだから仕方ねえよなぁ、取り敢えずAK-47作ってから射撃の練習するか。」
事前説明で近くには転生者は居ないらしいので創造したAK-47で近くの木に伏射をしてみました。
銃の反動がコントロール出来ず単射でないとまともに当たらない自身の筋肉の無さに絶望しました。
フルオートなんて当たりません何処に飛んでいったか本人さえ分かってません。
事前説明で近くに他の転生者はいないらしいので、創造したAK-47で近くの木に向けて伏せ撃ちをしてみました。
結果、銃の反動をコントロール出来ず、単発でないとまともに当たらない自身の筋肉の無さに絶望しました。
フルオートなんてもってのほか。弾が何処に飛んでいったか、撃った本人さえ分かっていません。
とりあえず君塚は、単発で戦うことに慣れることから始めました。
森の中で近くの野生動物を手当たり次第AK-47で狩り、糧食を食べて飢えを凌ぎつつ、熊などの獰猛な肉食動物からは逃げ回りました。
あくまでこの転生者バトルロワイヤル大会では生き残れる事が主題であり力を誇示して武を競う大会ではないから無双するチート俺TUEEEEするより地図の端でこっそりと生き永らえる方が正解なのでした。
そして転生から暫くして──人間に対して実戦の機会を得ました。
街道の近くまで来たとき、転生した地帯にある王国の兵士らしき者達が、林道を巡回していたのです。
恐らく民兵なのか、粗末な服を着て槍を持たされ、ぶらぶらと歩いています。
彼らがこちらに近づいてくるのを確認し、君塚はそっとチャージングハンドルを引き、初弾を薬室に送り込みました。巡回していた兵士達へ照準を合わせます。
別に人を殺したい訳ではありません。ギフトを成長させる為に経験値を稼ぐ必要はありましたが、好んで人間を撃つつもりはありませんでした。
しかし、どうやら状況は向こうからやってきたようです。
彼らは、君塚が日々鳴らしていた『発砲音』を聞いた村人達によって領主に報告され、派遣された兵士達だったのです。
ここが王室専用の禁猟地であり、そこで謎の爆音(銃声)が響いているとなれば、当然調査隊が送られます。
つまり彼らは、異常事態の原因である君塚悠里を捕らえ、刑に処す為に派遣された死刑執行人でした。
ひっそりと生き永らえるつもりが、生きるための狩猟が王室の逆鱗に触れてしまったという皮肉。
成長に必要に成る具体的な経験値は不明なままで取り敢えず人を避けつつ手当たり次第獣だけを狩りまくっていただけでしたがそれが王室の逆鱗に触れたようです。
しかし、日々行う狩猟のお陰でフルオートだとしてもある程度撃てるようになり、獣や人の気配を感じ取ることも出来るようになっています。
今回は、自分から人間を狩りに行かねばなりません。殺らなければ、殺されるのですから。
動物とは違い、彼らは人間です。言葉を話し、彼らにも帰る家や守るべき仲間がいるのでしょう。
手は震え、喉は乾きます。
それでも君塚は、生きるために意を決して引き金を引きました。
よう、人殺し




