君塚摂政は悩む
勢い任せにしてしまった結果
君塚軍はハイテンションに成った君塚の思い付きでいきなりの急激な近代化を果たしたは良いものの兵士達からの評価は散々だった。
確かに最新鋭の装備に変わった事で戦闘効率は大幅に上昇し、GLONASSシステムが開放され即座に何故か展開されていたから打ち上げる手間は省けたし、兵士達が情けなく戦場や訓練中の訓練場で迷子になる事もなくなった。
しかしそれでも不評なものは不評であった。
まず小銃がいきなりAK-74からAK-12やA-545に置き換えられたりPKMがPKPに変わったりした件については部品のストックがそれに伴い変わっていった為兵站管理は完全に混乱しており、後方幕僚達は在庫のチェックがまだ完了していなかった状態であった。
戦車部隊は更新された資材の点検や訓練に勤しんでおりロコソフスキー元帥とメレツコフ元帥はそろそろ軍の増強について君塚に要望していた。
増強とは余剰に成った部隊を今居る将帥以外の誰かの指揮下に置くようにする事、そして補給面での弱さの改善である。
ついでに意味のあるか分からない電子戦装備にも少し苦言をもらったが高地の国に居るエリカが少なくとも現代的な軍隊を率いている可能性が高いので必要と君塚が判断していた。
空軍も完全に機材が更新され慣熟訓練中であり今までのようなアナログな兵器から一気に現代的なに変わってしまった事で兵士達は困惑していて更に空軍にも何らかの司令官を置くべきであると言う幕僚達からの意見が上がり、流石に無視は出来ない状況であった。
最後に海軍は巡洋艦が8隻、空母が6隻も居るこの状況で艦隊司令官はクズネツォフ1人と言う過剰な状況なのでこちらも司令官面の増強が必要に成っていた。
「…ついやらかしてしまったな。冷静に成ればこのような装備は本来不要だったような気がするが、まぁ何とかは成るだろう。問題が問題にならない程度にもう片方が爆発的に進化したしな」
一方で官僚創造は著しい発展を遂げていた。
官僚創造は公社システムを開放して鉄道、水道、ガス、資源採掘、兵器の工廠等に至るまで公社として立ち上げる事が可能であり運営を開始していた。
つまり平原の国の君塚の部隊は国内なら兵站線をある程度気にせずに交戦可能である状態まで発達して独自に維持を行える様に成った事を示していた。
『官僚創造』は『軍隊創造』と統合されつつある。
その結果工廠や鉱山等で現地人を雇用する機会が増えて重工業は多大に発展してしまったので経済は一気に多様化し法整備が急ピッチで行われており労働者の権利や雇用主への義務と制限、そして失業者への手厚い保護を行う法案を制定して国内の不穏分子を懐柔し年金制度を整え国民の老後も保障した。
一方隣国の龍の国には抵抗勢力の統一を図るべく『真の王』と称する人物が率いる軍閥と密接な連携を平原の国は模索していた。
真の王は龍の国を在りし日の繁栄していた文明国としての復権を主張しており彼らに対して支援を平原の国は行い神堂龍牙の体制の崩壊を画策していた。
神堂龍牙を潰すなら政権ごと転覆させて最大限苦しませてから死なせる事を君塚悠里個人として考えており、その為なら迂遠な回り道であろうとも透の為なら喜んで通るつもりだった。
(とは言うものの、主力となるのは平原の国内部の戦力が中心であり、各地の残留貴族達が各々軍閥化してて纏まりが無く、戦闘部門下級妃の小規模なパーティーに一つ一つ虱潰しにされていってるし正直あまり軍閥達は頼りに成りそうにない。かと言ってこの『真の王』とやらも率いている兵は旧龍の国軍主力であるが本人は素性不明で求心力低めだしこれでは支援もどこまで継続可能なのやら…)
君塚が対龍の国において検討していたが結論は出ず、片付けられそうな目の前の課題に手をつける事にした。
「ニケ。いつものアレだ、取り敢えず出してくれ」
【はいはーい☆君塚っちのおよびとあればどこでも参上〜!!はい将軍ガチャ置いたよー、さっさと回せ♪】
「ありがとうニケ、これで一通り問題は何とか成りそうだな」
平原の国の摂政として今回の大規模な軍拡で将校クラスを引くためのチケットは10枚有り、これらを用いてガチャを引く予定であった。
そしてチケットを投入してレバーをガコンと言う鈍い音を立てさせながら力強く下ろした。
ピコーンと言う音と共に結果が判明した。
『SSR提督 セルゲイ・ゴルシコフ提督』
『UR将軍 ミハイル・トゥハチェフスキー元帥』
『SSR将軍 ワシーリー・マルゲロフ将軍』
『SSR将軍 アレクサンドル・ゴルバトフ将軍』
『SSR提督 イワン・イサコフ提督』
『SSR将軍 アレクサンドル・ノヴィコフ元帥』
『SSR将軍 セルゲイ・ルジェーンコ元帥』
『SSR将軍 ニコライ・ヴァトゥーチン将軍』
『SSR提督 ウラジーミル・トリブツ提督』
「…何か凄いのばっかり来ちゃったな…」
【…やっぱ他の奴らソ連系将軍お嫌いなのかなぁ…?在庫一掃決算セールでもこんなに大安売りしないわよ…】
そして一斉に並んだ将軍・提督達は同志に対して敬礼し、任務を拝命した。
ゴルシコフ提督を中心に艦隊の運用を行う事に成り
第一艦隊司令官クズネツォフと第二艦隊イサコフ提督、そして沿岸小艦隊のトリブツ提督という編成に成った。
陸軍はトゥハチェフスキー元帥が後方幕僚として司令部に入りヴァトゥーチン将軍やゴルバトフ将軍が司令官として着任して南部にそれぞれ配置されていた。
マルゲロフ将軍は空挺軍設立に伴い新規に立ち上げられた空挺軍を率いる司令官として部隊を率いる様に命じられBMD-4Mの部隊を編成し空挺降下の訓練などを開始していた。
そして既存の将軍達は追加された─特にトゥハチェフスキーに対して色々複雑な表情ではあったものの彼らは着任して様々な作戦計画を立てていた。
例えば低地の国への軍事介入が起きた場合や高地の国からの侵攻であったりで、少なくとも現在の彼らは鉄道による補給や兵站ラインが築かれたその先にトラックや車両で輸送して最悪歩兵戦闘車も兵站ラインの維持に投入するというものである。
ヤケクソ過ぎるドクトリンに対して流石にヴァシレフスキー元帥は
「同志摂政閣下、申し上げます。もう少しトラックを用意して頂くことは可能でしょうか?同志トゥハチェフスキー元帥がその…苦情を申し立てておりまして…」
と苦しそうに伝えて来ていた。
「わかった、君たちがそう言うなら私もそうする。だが今は待っていて欲しい。私が考えるに今は攻勢の時ではなく守勢に回らされている時で敵の行動によって何が起きるか分からないのだからな。だが、確約はしよう」
と君塚は返し「ありがとうございます同志」とヴァシレフスキー元帥もその場を去った。
「分かっているさ…」
しかし面倒な事に陥って居るのは仕方なかった。
ヤドヴィガも今は多忙で君塚がある程度補佐するも本人も負担が増えてしまった状況であり中々会えない状況である。
そんな中君塚悠里は退院した透を迎えに行った。
「兄さん。やっと退院できたよ〜長かった〜。」
「ああ、そうだな透。俺はお前が心配で昼メシを抜いてしまったよ」
「兄さんはいつも何かが気になるとすぐご飯抜いちゃうんだから〜」
「悪い悪い、まぁこれからはずっと一緒だから安心しろよ透」
ワシャワシャと頭を撫でてその美しい銀髪がクシャクシャに成るまで撫で回した。
頬が紅潮した透は黙り込み俯いて震えていたので
「ご、ごめん透!何か気分が悪くなるような事が有ったか!?」と慌てるも
「ううん、兄さんはやっぱり私の兄さんなんだなって…。だって、あんな地獄から救い出してくれたのは兄さんなんだから」
「透…」
君塚はやはりあの男には苛烈なまでの制裁を食らわせねば、とは思うものの無闇に龍の国を転覆させるのは危険であり没落してあばら家のような佇まいに成っているがそれでも地域大国でありもしその国の政権が崩壊してしまったら平原の国以外の国にも政治的難民や食糧危機が発生して平原の国の評価はどん底に落ちて二度とまともな外交は出来なくなるだろう。
だからこそ最低限の混乱で済む反乱軍による政権転覆が重要なのだ。
しかしその平原の国以外の国は比較的消極的であり戦狼の国は近代化政策をスルタンが推し進め近衛兵隊を粛清して近代的な戦列歩兵の導入に勤しんでいると聞き、低地の国では『空間絵画』のギフト持ちの援助を受けて軍備の再生産を開始し再軍備に向けて着々と整えていきつつある中、龍の国では下級妃達の戦闘訓練が本格的に行われ始めており平原の国侵攻を目指して彼女達にパーティーを組ませて4人一組で運用している。
そんな中龍の国に対して支援を表明した国が存在していた。
山の国と呼ばれる国でありノア・カドゥッフ統領が山の国の資源を目当てに協定を結んで山の国は彼らに経済的な支援を表明、そして龍の国にとある要求をしていた。
平原の国諜報部はこれを掴んでいたので報告書に纏めてすぐにこれを君塚に渡した。
内容は─低地の国の弱体化を狙っている傭兵業が盛んな山の国の龍の国に対する低地の国攻撃要請であった。
山の国も低地の国も金融業が盛んであり隣接はしていなかったが対立は日増しに深くなっていったが低地の国は以前の転生者達による攻撃で壊滅し経済規模は縮小、一方山の国に避難してきた預金や証券は数知れずこのまま低地の国が滅びてくれたら万々歳と思い龍の国に融資と経済的支援を確約して攻め込ませるように仕向けていた。
以前彼らは平原の国の王家に対して債権を保有していたがヤドヴィガ政権に移行するとデフォルトを山の国に向けて通達し君塚は龍の国と山の国の国境付近に一度空爆を行って口うるさい彼らを黙らせた事が有った。
夜邸宅で報告書を読んでいた君塚は呟いた。
「山の国か、やつらは面倒だが何とか対処は出来る。でも龍の国と結んでるとか成ってたら話は別だ。」
ため息をついてそっと天を仰いだ。
恐らく神堂は狙うのは間違いなく『空間絵画』その人だが低地の国はそれに対抗出来るかは非常に怪しい状況であった。
しかしそれでもまだゴールは遠い




