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何故現代兵器をファンタジー世界へ持ち込んではならないのか?  作者: ウォルギリウス
第一章

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朝目が覚めれば

いつだって朝は憂鬱さ

朝、目が覚めると、腕の中に温かく柔らかい感触があった。

視線を落とせば、そこには褐色の肌を持つ美少女――ナディアが、目のやり場に困るほど鮮やかな色彩の下着姿で、君塚と同じベッドに潜り込んでいた。

健康的な肌色と、年齢の割に豊かな双丘が目に毒だ。

「……閣下、お目覚めになられましたか?」

ナディアは悪びれもせず、琥珀色の瞳を向けてくる。

「……俺は以前、君には『そういう奉仕』は求めないと伝えたはずだが。ナディア」

「ですが閣下。もし貴方様の寝首を掻こうとする転生者が現れた際、即座に盾になれるのはこの距離しかありません。例えこの命に代えても、お守りいたします」

「やめろナディア。そこまで接近を許した時点で俺は死んでいるか、死んだも同然だ。それに、万が一そうなっても絶対に深追いはするな。いいな?」

「……承知しました(不満げ)」

(俺の周りの女は、どうしてこうもエゴの塊なんだ……というか、朝くらいゆっくりさせてくれ……)

彼女は君塚の手により、母親と共に戦狼の国の地獄から救い出された。

その恩義に対し、ナディアは自分の身を差し出す覚悟だったが、君塚がそれを拒否したため、代わりに「護衛」として彼に張り付くことを懇願したのだ。

戦闘経験があり、魔法の知識もある彼女は確かに有用だ。本来なら司令部の警備だけで十分なのだが、涙ながらに頼み込まれ、押しに弱い君塚がつい許してしまった結果がこれである。


ちなみに、ヤドヴィガ殿下はこの状況に大層ご不満のようだった。

「添い寝」は彼女にとって君塚との特別な儀式だったのに、突如現れた褐色の年上女にその特等席を横取りされた形になったからだ。

「君塚様……やはり私は、もう少し……その、大人の女性のように……」

もじもじと抗議する幼い女王に、君塚は苦笑して諭す。

「殿下。私は貴女に、ただの人間としての幸せな子供時代を過ごして欲しいと願っているのです。そのような貴女に対し、私が不埒な感情を抱くことなどありましょうか?」

「……むぅ」

ヤドヴィガは頬を膨らませた。

(いつか母上並みの美人になって、君塚様を独占してみせるのです……!)

その瞳には、野望の炎が静かに燃えていた。


そんな朝を迎え、軍服に着替えた君塚は、司令部の施設へ向かった。

本日の業務は軍団の再編だ。

コサック兵の2個師団とロコソフスキー元帥の師団を入れ替え、さらに師団規模に増強した国境警備旅団を加えて「1個軍団」を編成する。

だが、これを指揮する人材が足りない。そこで「将軍ガチャ」の出番となるわけだが――その前に、懐かしい顔を見かけた。

「息災か、ソコロワ中尉」

「っ! は、はい同志閣下! え、あ、その……はい。元気にしております!」

配置転換で司令部に来ていたエレーナ・ソコロワ中尉だ。彼女は直立不動で敬礼したが、その表情には緊張と不安が滲んでいた。

「元気そうで何よりだ。……ところで、貴官をこのまま王宮の警護兵、それも『王室直属狙撃手』として推薦しておいた。最前線からは離れることになるが、構わないか?」

「はい。閣下のご命令とあらば喜んで……ですが、私のような者でよろしいのでしょうか?」

ソコロワは自信なさげに俯く。

君塚は内心で(ロシア軍人といえば傲岸不遜が服を着て歩いているような連中ばかりだと思っていたが、彼女やロコソフスキー元帥は例外だな)と思いながら、彼女に語りかけた。

「むしろ、君のような模範的な軍人にしか務まらない任務だ。こんな巨大な王宮の警備は、現地の兵士には荷が重い。……どいつもこいつも、隙あらば物資を横流ししようとするからな」

君塚は軽く愚痴をこぼしてから、真剣な眼差しを向けた。

「君の任務は、ただの門番ではない。城壁の上から長時間、城内および周辺を監視し、不審な動きがあれば即座に排除する『カウンター・スナイパー』の役割だ。君の忍耐強さと正確な射撃技術が必要なんだ。頼めるか?」

「……はい! カモ撃ちよりは得意です。同志閣下の期待に応えられるよう、死力を尽くします!!」

ソコロワ中尉の瞳に光が戻る。以前より口下手なところが改善された彼女を見送り、君塚はいよいよ本題へと移った。


「おい、やかまし屋。さっさと出てこい。将軍ガチャの時間だ」

【はいはーい☆ やったね君塚ちゃん☆ やーっと君にもハーレム要員ができたんだね〜! うんうん、お姉さん嬉しくて涙出そうだよぉ……❤】

「ナディアはそんなんじゃない。彼女はこの世界の被害者だ。そんな子に手を出したら、俺はこの世界のクズ野郎どもの仲間入りだ」

【えー? でもナディアちゃん、君塚ちゃんのこと結構そういう目で見てたよ〜? あれ絶対、恋する乙女の顔だったって!!】

「彼女はまだ16だ。若い頃は優しくしてくれた男にコロッと騙されたりするもんだ。……俺が責任を持って、もっとまともな男を紹介してやるさ」

【うわ……そっちに行くか、あんた……】

担当官の声色が、呆れから真剣なトーンに変わる。

【いい? あの娘とか、あんたの大事なヤドヴィガちゃんはね、あんたという後ろ盾がなくなれば、その聖女の素質ゆえに母親と同じ末路を辿るのよ。どっかの王族か貴族か豪商に、性的な意味で食われておしまい。分かってんの?】

「……ッ」

【だから、あんたがあの子達を誑かした責任を取って、きっちり大会終了まで……いや、一生面倒見なさいよね。分かった?】

「……はい」

珍しく正論で説教され、君塚はしょぼくれながらチケットを取り出した。

使用するチケットは2枚。国盗り成功報酬の残りと、戦狼の国撃退報酬だ。

機械に投入しようとしたその時、担当官が爆弾発言を投下した。

【あ、そうそう忘れてた。その『将軍ガチャ』なんだけど、一つ重要な仕様があるの】

「なんだ? 回したら寿命が縮むとかか?」

【違うわよ。中身の在庫が、他の『軍隊創造』や『軍隊召喚』系のギフト持ちと『共通』なの。だからモタモタしてると、他の転生者に有能な将軍を総取りされちゃうかもねー】

「……は?」

【現に確かえ~と……チューリップだったかジュースだったかな……】

「ジューコフか?」

【そうそれ! その名前の将軍、あんことは別の転生者がもう引いちゃってたわよ!! 全くあんたって奴はどうしてそんなに遅いの……あーもう! 今は担当があんたしかいないのに、あんたまで犬死したらアタシ大ピンチなんだからね!? しっかりしてよね!!】

「……マジかよ。最悪の半歩手前じゃないか。てか、お前の担当、今や俺だけなのかよ」

【そうね、大体そんな感じ。だからさっさと回しなさい! 他の奴にお宝を奪われる前に!!】

君塚は背筋が凍る思いで、祈るようにレバーを回した。


ガコン、ガコン。

重厚な音と共に、ピコーンというファンファーレが2回鳴り響く。

『SSR将軍 キリル・メレツコフ元帥』

『SSR将軍 アレクサンドル・ヴァシレフスキー元帥』

「「……なんか凄いの引いちゃった」」

担当官と君塚の声が重なった。

片や、スターリンの粛清リストに入りながらも生き延び、冬戦争で難攻不落のマンネルヘイム線を突破した「要塞攻略のスペシャリスト」、メレツコフ。

片や、スターリングラード攻防戦から満州侵攻まで、ソ連軍のあらゆる勝利の青写真を描いた「作戦の神様」、ヴァシレフスキー。

呼び出された二人の英雄は、君塚に敬礼した。

君塚は即座に人事を決定する。

頭脳明晰なヴァシレフスキー元帥は総司令部スタフカに入れ、君塚の参謀総長として全軍の作戦立案を任せる。

そして実戦派のメレツコフ元帥には、新たに編成した1個軍団(3個師団+国境警備旅団)を預け、中央予備戦力および攻勢時の中核戦力とした。

これで、君塚軍の頭脳と手足は盤石となった。


それから1年。

ヤドヴィガ殿下の6歳の誕生日を祝うパレードが、王都ズラトポルで盛大に執り行われた。

美しく舗装された大通りを、T-72戦車と機械化歩兵の隊列が行進し、空にはMiG-21がスモークを引いて飛ぶ。幼き女王はバルコニーから手を振り、国民は熱狂した。

平原の国は激変した。

君塚と官僚たちによる中央集権化は完了し、度量衡の統一により経済が活性化。治安は劇的に改善し、女性が夜道を一人で歩けるほどになった。

紡績、食品加工、そして鉄鋼業。内戦が続く龍の国からの難民を労働力として受け入れ、技術革新は加速する。

外交面でも、低地の国とは海運貿易を確立し、戦狼の国とは平和条約と通商条約を締結。事実上、敵なしの繁栄を謳歌していた。

だが、光が強ければ影も濃くなる。

大陸最大の宗教組織、聖女教の総本山「神聖皇務庁」が沈黙を破ったのだ。

要因は「聖女保護政策」による教会の権威失墜だけではない。

最大の理由は「十分の一税」の禁止だ。

教会への莫大な資金流入をカットし、あろうことか過去の徴税分の返還まで要求した君塚に対し、皇務庁の忍耐は限界を迎えた。

『平原の国女王ヤドヴィガ、および摂政キミヅカを、神の敵と認定する』

破門宣言。

それは、大陸全土の信徒国家に対し、「平原の国を攻撃しても罪に問われない」というお墨付きを与えることと同義だった。

世界中の国々が、今まさに平原の国へ牙を剥こうとしていた。

晩も憂鬱になろうよ

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