反則かよ
ああ、憂鬱だ。
「おはよう、裕之」
「おはよう、慎太郎」
今日も爽やかに挨拶してくるこいつは、佐伯慎太郎、イケメンで、2年にしてサッカー部のエース。こんな何にも特徴のない俺のようなやつとも去年同じクラスになった時から仲良くしてくれるめちゃくちゃいい奴。こういうやつが鹿島さんのような人と恋人になったりするんだろうな。
「今日はなんだか元気がないね。どうしたんだい?」
「ああ、まあちょっとな」
「まあよくわからないけど、何かあったら僕で良ければ相談乗るからね?」
そう言って慎太郎は爽やか笑顔で応援してくれる。うわ、イケメンだぁ。
ざわざわ。突然教室の入り口の方が騒がしくなる。
「あ、来たみたいだね。学園の女神様とやらが」
そう言って、騒ぎがある方を見る慎太郎。
「学園の王子様が何言ってんだか」
「王子と女神様じゃ釣り合いが取れないんだよ」
「王子がとれなきゃ、誰がとれんだよ」
「そうだねぇ、英雄、とか?」
「英雄?そんなやつどこにいんだよ?」
「ん?案外近くにいるかもよ?」
そう言って慎太郎は俺の方をチラリと見る。
「少なくとも俺はお前以上のやつは知らねえよ」
「そうか、それは残念」
1ミリも残念に思ってなさそうに言う。
そんなことを喋っている間に、学園の女神様、鹿島沙由里は自分の席である、廊下から2列目の1番後ろの席である俺の右隣の席へとやってくる。
「おはよう、高島くん、佐伯くん。今日も2人は仲良しさんだね」
「おはよう、鹿島さん。僕と裕之はズッ友だからね」
「おはよう。やめてくれ気持ち悪い」
「えー、いいじゃないか別に」
そうやって口を尖らせて抗議しながら自分の席へと戻っていく慎太郎。クソ、画になりやがる!!そういうのは美少女だけの専売特許だろ!?
「あはは、本当に仲良しだと思うよ。まるで、犬と猿みたい」
「それ仲悪くない!?」
「イヤよイヤよも好きのうちだよ?」
「いや、どゆこと!?」
「うふふ、さあ?どういうことでしょう?」
いたずらが成功した、というように少し小悪魔的な笑顔を向ける女神様。今のでさっきまでの憂鬱な気分がぶっ飛んだ。反則かよ。