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蒼糸の繭

朝早くパルウムを出発した《漆黒の魔弓》

は昨日のうちにアレクが調べた鉱山の入口の

一つから鉱石内に侵入していく。

坑道は2,3人が横に並んでも通れるほどに

道幅があり、かつては家畜を使って

運搬を行っていた様子が想像できた。

先頭を探知に優れるアレクが務め中央に

アマリアとミカエラを挟んで最後尾は

カインが警戒を行っている。

用意してあったカンテラをアイテムボックス

から取り出すとアレクとカインがそれぞれ

持ち坑道を進んでいく。


坑道内は、ひんやりとした空気と土の匂いで

満たされアレク達の立てる音以外は全く

聞こえない状況であった。

パルウム鉱山は、元々は採鉱さいこうのみを行い

その他の工程は、王都で行われていたようで

パルウム周辺の環境自体は綺麗なもので

あった。


薄暗い坑道をアレク達が歩いていると

突然、アレクが歩みを止めて仲間達に合図

を出してくる。

合図を受けた仲間達は物音を立てずに

戦闘態勢に入り各自武器を構える。

坑道内に沈黙が流れ皆が耳を澄まして

敵の気配を探っているとアレクが黙って

4mほど先の土壁を指差す。


その瞬間、“ぼろぼろ”と土壁の一部が

崩れ中からサッカーボールほどの大きさの頭

が姿を見せる。

その頭はミミズのようでもあったが……

大きな違いは無数の細かい歯が大きく開いた

口内からみえているところであった。

ズルズルと壁から突き出した頭に続き

ヘビのように長く肌色の体が土から這い出し

周りの様子を窺っているようだった。

全長3mほどある魔物は、アレク達が

見えていないのか“ジッ”と動かずにいる。

仲間達は、アレクからの攻撃の合図を

待っていたが……一向に合図がないことを

不審に思い皆がアレクの方を見て確認して

くる。

そんな、皆からの視線に気付いたアレクは

皆の方を見て“手を出さずに待機”と合図を

出すと足元に落ちていた少し大きめの石を

拾ったと思うと坑道の先に向かって

思いっきり投擲した。


投擲された石が坑道の壁にぶつかり“ガスッ”

と大きな音を立てると魔物が音のした方に

素早く移動していった。

それをしばらく見守っていると

アレクは後退の合図を出してきて仲間達と

一緒に坑道の外にまで脱出したのであった。

魔物を確認したのに討伐しなかったアレクに

アマリアが問いかける。


「アレク、あの魔物は何だったの?

撤退したってことは危険な魔物だったとか?


「あれは、ルーペスワームだよ。土の中に

生息していて岩石や鉱石を主食にする

珍しい魔物なんだ。先程も見たとおりに

目がないために音に過敏に反応する習性が

あって自分達の縄張りに入ってきた侵入者を

音で捉えると仲間が一斉に集まってきて

攻撃を仕掛けてくるんだ」


「うぇぇ、あんな肌色のヘビみたいのが

沢山いるの?それならあそこで1体倒しても

物音を聞きつけて魔物に囲まれてたかも

しれないってことね」


「そういうことだよ、あの場で戦うことは

不利になると思ったから攻撃しないで

撤退してきたんだ。今さっきのは、敵を

確かめるための偵察みたいなものだから

対策を立てて再度、挑むとしよう」


「けどアレク、あの魔物とどう戦うつもりだ?

アレクは【無の歩み】があるけど攻撃すれば

場所がバレるし俺達にいたっては隠密系の

スキルすら持ってないから問題外だぞ?」


「それについては、実は考えがあるんだ

カイン!そもそも依頼を受けて時点で

ここの魔物がルーペスワームかもしれないと思っていたから対策も用意してあるし

それに倒すなら纏めて倒した方が楽だと

思わない?」


そういうとアレクは、ルーペスワームを

一網打尽にする策の準備をするといい

仲間達に鉱山の入口を見張るように指示を

出すと少し離れた場所で魔法を発動した。



===============================



準備を終えたアレク達は、先程ルーペスワーム

と遭遇した坑道とは違う場所から再度

鉱山に侵入し少し進んだ先にあった

採掘された鉱物を運び出すための中継地点に

たどり着いていた。

学校の体育館ほどのスペースの壁に

何箇所も坑道が掘られており色々なところに

繋がる中心にいることが分かる。


外でアレクから策を聞いた仲間達は、

各自戦闘態勢に入り準備を終えていた。

皆、物陰に身を隠してルーペスワームの

襲撃に備えてアレクの合図を待っている。

中継地点の中心付近にもアレクが待機し

仲間に向けて合図を送る。

合図を受けたカイン・アマリア・ミカエラは

一斉に両手に持った鉄の筒を力一杯に

ぶつけ合い“カンッ!カンッ!カンッ!”と

金属が耳障りな騒音を発生させる。


音を鳴らし始めて数十秒で探知系のスキル

がなくとも坑道の奥から何かが迫ってくる

気配が感じられるほどの数ものが……

うねるように中継地点に押し寄せくる。

次の合図を受けて皆が一斉に鉄の筒を

中継地点の中心に向かって投げる。

その後は、気配と物音を殺して様子を

窺っていると坑道の穴から“ズリュズリュ”と

ルーペスワームが溢れ出してくる。


それと同時に【無の歩み】で気配と物音を

消したアレクが中心点に向かって拳の大きさ

の皮袋を投擲する。

すると、耳が“キイィィィン”する音を発する

皮袋に中継地点に現れたルーペスワームが

一斉に群がりだす。

それはやがてヘビが絡み合ったような

形容し難い肌色の塊となり、そのあまりに

気持ちの悪い光景に《漆黒の魔弓》の全員が

苦い表情を見せる。


坑道から遅れて接近するルーペスワームが

いないことをスキルで確認すると中心点の

近くに潜んでいたアレクが物陰から飛び出し

アイテムボックスから直径6mほどの巨大なドーム状の底が抜けた石窯を取り出すと

そのままルーペスワームの塊に覆い被せる。

見事にドームの中にルーペスワームを

閉じ込めたアレクは、素早くドームの上に

登ると頂点に空いた人の頭ほどの穴の場所に

たどり着く。


再度、アレクが仲間達に合図を出すと皆が

耳を両手で抑えて次の攻撃に備える。

アレクは、火炎弾ファイヤボールを穴に

向かって放つと次の瞬間には片手に持って

いた蓋で穴を塞ぎ自身も【縮地】を使い

耳を塞ぎながら距離を取った。

すると、ドームの中で火炎弾ファイヤボールが破裂すると同時に何倍にも増幅された高音が中継地点の中に響き渡る。

耳を塞いでいるアレク達でも顔を歪める

ほどの騒音は時間ともに地面に吸収され

中継地点に静寂が訪れる。


距離を取っていたアレクが、スキルで

ドーム内の反応を確認するが反応がない

ことから皆に合図を出し集合を掛ける。

念のために戦闘態勢を継続しながら

パーティーで陣形を組むとアレクが

ドームをアイテムボックスに収納する。

そして目の前に残されたのは、ピクリとも

動かないルーペスワームの大量の死体だった。


「うげぇ〜死体でも、これだけ量があると

気持ち悪すぎるよ〜指定部位をさっさと

回収して終わりにしようよ」


「アマリア、気持ち悪くても吐かないでね?

それじゃあ、俺と一緒に指定部位の回収に

入ってくれ!アマリアが指定部位を回収したら俺が死体を回収するから。今回の部位は尻尾だから間違えないようにね」


「アレクひどいっ!私ことそんな目で

見てたの!?私は、そんなにどこでも

吐くような女じゃないよ!まったく……」


指定部位と死体をアレクとアマリアが回収していると周辺警戒を終えたミカエラがアレクが投げた皮袋を持って近付いてくる。


「あ、アレクさん!皮袋回収してきました!

ど、どうぞ!」


「ああ、ありがとうなミカ!それにしても

自分で考えたにしては効果抜群だったな

“これ”!」


そうミカエラに話しながら皮袋の中身を

手の平に出して異常がないか確認してみる。

アレクの手の平には、いくつもの白い石が

清廉な色を映している。


「そ、それが“共鳴石”ですか?確か効果は、

強い衝撃を受けると石が衝撃を吸収して

そのエネルギーを増幅して音に変えるもの

でしたけ……?」


「そう、ミカエラの言う通りの効果だよ。

昔は“共鳴石”を街中に等間隔に設置して

警報装置として使ってたらしいけど……

頻繁に誤作動して次第に使用されなく

なったらしいね。少しの振動でも反応して

うるさ過ぎたことから別名騒音石とか

呼ばれてるよ」


「最初に依頼を受けた時から、これを用意

していたなんて流石ですアレクさん!

でも、あの釜は必要だったんですか?

四角い箱でも良かったのでは?」


「一応、あの釜も意味があるんだよ?

土魔法のストーン・ウォールで魔力を多く消費して

壁の密度を上げて音を反響させやすくしたり、

ドーム型にして音が均等になるようにし

音が増幅しやすくしたりと色々な意味が

あるものなんだよ」


「へぇ〜、あの釜にそんな効果があったん

ですか!簡単な釜に見えて色々と工夫された

ものなんですね!僕、全然知りませんでした!」


アレクとミカエラが、ワイワイと喋りながら

指定部位の回収を済ましていると周辺を

見回っていたカインが帰ってくる。

先程のことについて各自が疑問を口にすると

今回の策ついてアレクは再度説明をする。

カインがルーペスワームの死体の処理に

ついて問うてくる。


「あの量の死体をもう回収したのか?

ルーペスワームの死体なんて素材としては

使い物にならないだろう?アレクが一旦

収納して外で処分するか?」


「いや、俺のスキルで“あるもの”を死体から

取り出そうと思うから死体は処分しないよ!

ちょっと待っててくれるか?」


そう言うとアレクは、アイテムボックスに

手を突っ込み《素材生成》の機能を選択し

ルーペスワームの死体を選択すると

一つのアイテムが大量に手に入れた。

その瞬間にアレクは、小さくガッツポーズ

をするとすぐに手に入れたアイテムを

アイテムボックスから取り出して皆に

見えるように差し出す。


それはサファイヤのように深い青さをした

手の平の大きさをした鉱石だった。

いや、鉱石というには見た目は幾重にも

編み込まれ繭の姿をした塊であった。

皆が、その美しさに息を飲み輝きに

目を奪われているとアレクが話し始める。


「これは、“蒼糸の繭”と呼ばれる超レア鉱石で

ルーペスワーム自体がレアな魔物なんだけど

そのルーペスワームが鉱石などを主食にする

ことで体内でのみ生成するものなんだ。

あまりにレア過ぎて生態まで調べたものが

ないので生成する理由までは分からない。


しかも、生きたルーペスワームからしか採取

できないと言われているものなんだけど……

ギルドの資料によると毒で仕留めた個体から

は採取できたって記載されてたから大量に

血を失わなければ大丈夫かと考えてダメ元で

大掛かりな仕掛けを用意して良かった!」


余りの興奮でべらべらと“蒼糸の繭”について

珍しく熱中して喋っているとカインが

勢いを遮るように質問を投げかけてくる。


「とりあえず凄い鉱石ってことは、分かったけど……実際には装備にすると効果があるのか?」


「ああ、こいつで作られた装備なら

防具なら魔法防御力が高まり魔法耐性も

高くなる。逆に武器として加工すれば

魔法を強力にしてくれるし魔力の消費も

少なくなると言われている!かなり有用な

鉱石だから市場に出れば大騒ぎになる

代物なんだぞ?」


アレクの話を聞いて“ゴクリ”と唾を飲む

一同だったが……アマリアが皆が気になって

いる質問をしてくる。


「……ちなみにこの“蒼糸の繭”って

いくらで取引されるものなの?」


「そうだな……以前に冒険者ギルドで

発見された時は親指ほどの大きさで

金貨50枚ほどだったらしいから……

これなら6倍くらいの大きさがあるから

最低でも一つの金貨300枚にはなるんじゃ

ないのかな?アイテムボックスには26個

あるから合計で金貨8,100枚くらいには

なると思うよ?」


「「………………えええええぇぇぇ!!」」


カイン・アマリア・ミカエラが、ほぼ同時に

大声を出したので急いで耳を塞ごうとして

アレクが“蒼糸の繭”を落としそうになると

必死の形相で皆が“蒼糸の繭”を受け止めよう

とする。

すぐにアレクが拾い直すと皆が生きた心地が

しなかったらしく一瞬で汗だくになり

その場で、へたり込んでいた。


《漆黒の魔弓》全員から管理を任され

“蒼糸の繭”はアレクのアイテムボックスで

預かることになった。

皆が落ち着きを取り戻したところで

アレクは今後の予定を話し始める。


「この鉱山での依頼は、ルーペスワームを

討伐したことで完了したと思うけど……

まだ、鉱山でやりたいことがあるから

村長には数が多いから数日に分けて

討伐していると伝えてまだ滞在しようと

思う!それに一応、他の魔物がいることも

考えて様子見もしたいからね。

反対意見がなければ今日のところは

村に戻ろうと思うけどどうかな?」


アレクが、皆の顔を見て確認すると全員が

黙って頷き村に向けて帰還を開始した。



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