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無価値な鉱石

依頼の魔物であるルーペスワームを

一網打尽にし超レア鉱石“蒼糸の繭”を

手に入れたアレク達《漆黒の魔弓》は

昨日に引き続きパーティー全員で

鉱山に潜っている。


昨日と違い既にルーペスワームを倒して

いるアレク達は呑気に喋りながら

坑道を歩いていた。

不意にカインが今日の目的について

アレクに質問してくる。


「で、アレク!今日は具体的には何を

するんだ?まだ潜んでるかもしらない

魔物を警戒する他にもやりたいことが

あるんだろう?」


「うん?今日は鉱石を探そうと思ってるよ?

【鑑定】を使って探そうと思ってるから

鉱石を見つけたら力仕事を手伝ってほしい

かな?アマリアとミカは俺達が採掘してる

間の周囲の警戒をお願いね」


「いや、そうことなら行きの馬車でも

言ったけど既に鉱脈は尽きてるんじゃ

ないのか?じゃなきゃ閉山してないだろ?」


「俺も、そう思ってたんだけど……昨日の

ルーペスワームがいたことで事情が変わった

んだよ!俺がルーペスワームについて話した

こと覚えてるか?」


そこまで話しているとミカエラが、

話に割り込みルーペスワームのことについて

アレクが話していたことを復唱する。

“ルーペスワームは、土の中に生息していて

岩石や鉱石を主食にする珍しい魔物”と。


そこまで話すとアマリアが気付いことを

口に出してアレクの意見を求めてくる。


「……なるほど、岩石や鉱石を主食とする

ルーペスワームがあれだけ大量にいたと

言うことは鉱石もまだあるのかもしれない

と思ったわけね!」


「うん、そしてあれだけ高純度の“蒼糸の繭”

を体内で生成していたから高純度の鉱石が

多くある可能性が高いと思う」


「なるほどねーそれなら鉱石を探すのも

無駄にはならなそうだな!それにしても

アレクは、なんでルーペスワームが

この鉱山にいるかもしれないと思ったんだ?

ギルドの資料に情報が詳しく書かれて

いたのか?」


「ああ、それは別に資料に明記されてた

わけではなくて複数あったルーペスワームの

報告書を見比べた時に気付いたことを

覚えてたからだよ。どうやらルーペスワーム

は綺麗な環境でしか生きられないみたい

なんだ……過去の事例でも手付かずの鉱山や

採鉱のみを行っていた鉱山の跡地のみ

発見されていたから。だから今回の依頼を

受ける前にパルウム鉱山が採鉱のみの場所か

確認もしたしね」


「けど、それだけじゃ条件としては弱く

ないか?無駄足になる可能性もあった

はずだろ?」


「あとは、閉山して長く時間が経っている

ことも条件だったかな?ルーペスワームの

特性上うるさい場所には、そもそも生息

しようとしないから。綺麗な環境で

長く人が寄り付かずに静かな場所、

この2つの条件が揃ってたから今回の依頼

を受けたんだよ。これでカインの疑問は

解決した?」


「……うぅぅ、なんかすまない……

しつこく問い詰めるような感じになって

しまって。

アレクが、どんだけ調べて今回の依頼を

選んだのか気になって質問ばっかりして

しまった!悪気があったわけじゃないから

許してくれ!」


そう話し頭を下げるカインをアレクは笑って

許して今日は力仕事をガンガン頼むぞ!と

背中を叩くのであった。


しばらく坑道を進んでいると

【鑑定】を連続使用しながら歩いていた

アレクの足が急に止まり壁の一部に触りながら

鑑定を再度行う。


「ここに鉱石があるな……カイン!俺と

一緒に採掘してくれ!アマリアとミカは

予定通りに周辺の警戒を、頼む」


皆に指示を出しながらアレクは、

アイテムボックスに手を突っ込み真新しい

ツルハシを2本取り出すとカインに手渡す。

もちろん、拝借したわけではなくアレクの

アイテムボックスの機能である《武具作成》

で昨日の中継地点に落ちていたツルハシを

コピーしたのだ。

あとは、元々持っていた素材で新しい

ツルハシを作成したというわけだ。


しかも、ただ採掘するのではなくアレクは

ツルハシに特性【付与】と【身体強化・極】

を使用してついでにトレーニングを

並行して行っていた。

カインも、アレクを見習いエネルギーを

武器に乗せるトレーニングを行っている。

足・腰・肩とエネルギーを螺旋状に集め

上段の構えからツルハシを振り落とす。

硬いはずの採掘場所が、まるでプリンの

ようにサクサクと削れていき驚きの声が

後ろから聞こえる。


そんな感じにアレクが、ひたすらに【鑑定】

を使用しまくり反応があった場所を

トレーニングしながらアレクとカインの

2人でガンガン掘りまくった。

3日目は、あっという間に過ぎて

4日目にはアマリアがカインと交代して

トレーニングをしながら採掘を手伝った。

2日かけて鉱山内部をマッピングしながら

採掘したお陰で大量の鉱石を見つけることに

成功した。


まだ【鑑定】できていない未開拓のエリア

まで到達したアレクは、十分な成果を

既に得ていたので期待することなく

最奥で【鑑定】を発動させながら

パーティーメンバーと談笑していた。

すると、突然にアレクの様子が変わり

真剣な表情で壁を調べ始める。

そんなアレクを見守っていたアマリアが

ツルハシを肩に乗せながらアレクに

採掘するか聞いてくる。


「どうしたのアレク?そこを掘ればいいの?

何かレアな鉱石でも発見したなら遠慮なく

言ってよね〜丁寧に採掘するから」


「うん、それじゃあ……この辺りの採掘を

お願いしようかな?もしかしたら硬いものに

当たるかもしれないから力加減に気をつけて

採掘してみて」


アマリアが、採掘し始めてしばらくすると

ツルハシが硬いものに当たり“ガキィ”と

重い金属同士でぶつかる音が坑道に

響き渡る。

ツルハシを持っていた手を強い反動があった

のかアマリアが手をぶらぶらと振って

痺れを取るような動作を見せた。

その様子を見ていたカインが挑戦してみたく

なったのかアマリアにカンテラを任せると

足元から力を練り上げて上段の構えから

思いっきりツルハシを振り抜く。


その瞬間、“ガギッ”と嫌な音を立てて

何が吹き飛び坑道の地面に落ちる。

アレクがカンテラを近づけて何かを

確認すると、それは折れたツルハシの先端

であった。

自分の持ったツルハシとぶつかった鉱石を

見比べて悔しそうな表情を浮かべるカインの

肩を叩きカンテラを預けると今度は、

アレクが肩を回しながら前に出てくる。

2人の様子を観察してきたアレクは、

最初から【付与】をツルハシに施し

【身体強化・極】で力を下から練り上げると

全力でツルハシを振り落とした。



===============================



パルウム鉱山の依頼を合計5日間掛けて

達成したアレク達《漆黒の魔弓》は、

討伐したルーペスワームの尻尾を見せ

パルウムの村長から依頼達成の木札を

受け取ると村を後にした。

その先に鉱山内が静かな環境のままだと

再度、ルーペスワームが住み着く可能性が

あることを伝え対策としてアレクが作った

鉄の筒を定期的に坑道の見回りをする際に使うと良いと手渡しておいた。

村長と村人にもルーペスワームの生態を

詳しく教えて村を守るためにできることを

するように伝えて村を去ったのである。


アルテスへと帰還する馬車を上機嫌に

鼻歌交じりにアレクが操っていた。

一緒に御者席にいるカインも上機嫌に

その鼻歌を聞きながらアレクに話し掛ける。


「今回の依頼は、色々と手に入れることが

できて大当たりだったな……“蒼糸の繭”に

大量の鉱石に最後のアレには驚いたな!

やっぱりアルテスに帰ったらアレを使って

何かを作るのか?」


「本当に今回の依頼は幸運だったよ!

うん?アレなら一応、フェルムさんに相談

した上で何かしら作ろうと思ってるけど……

カインは何か作ってほしいものでもあるの?


「そうだな……やっぱり防具の強化とかかな?

他に思い付くものだと、アマリアなら

武器にも盾にも使えるんじゃないか?」


「そうだね!活用法は色々とあるだろうし

帰還の間にパーティー全員で案を考えるのも

いいかもしれないな。相当量確保できたし

戦力増強にもなるから真剣に考えないと

勿体無いよな」


その後も、《漆黒の魔弓》の戦力増強に

ついてカインとの話は盛り上がり移動中

ずっとその話をしていた夜にはアマリアと

ミカエラの希望も聞いたりして1日の野営を

はさんでアレク達は、無事にアルテスへと

帰還した。

真っ先に冒険者ギルドに向かい借りた馬と

依頼完了報告を済ませると受付の女性に

レナードへの伝言をお願いするとギルドを

後してパーティーは旅の間に消費した

アイテムの買い出しに向かい、アレクは

早速フェルム武具店へと向かっていった。


「こんにちは!フェルムさんいますか?」


直接工房に顔を出すと弟子の数人と挨拶を

済ませフェルムの居場所を聞くと工房の奥

の鍛冶をしているところに案内された。

集中して仕事をしているフェルムの邪魔を

しないように仕事がひと段落するまで

待っていると15分ほど経った頃にフェルム

から逆に声を掛けられる。


「おい!アレク待たせちまったみたいで

悪いなっ!今日は、どんな用件で工房に

きたんだ?装備の催促にきたわけでは

ないのだろう?」


布で額の汗を拭いながらフェルムが、アレク

の顔を見つめて真意を探ろうとしてくる。

するとアレクは、黙ってアイテムボックスに

手を突っ込むと1つのインゴットを取り出し

フェルムに手渡した。

不審なものを見る目でインゴットを受け取る

とフェルムの瞳は大きく見開かれインゴット

を何度も確認して大声で問いかけてくる。


「アレク!このインゴットは、ウルティムの

インゴットじゃないのか!?どうやって

この高品質のインゴットに仕立てたんだ!」


「落ち着いて下さい!ちゃんと説明しますし

逃げたりもしませんから!!だから、肩を

掴む手を離して下さい!!」


アレク達が先日、パルウム鉱山の未開拓

の場所で発見した鉱石は“ウルティム鉱石”

と呼ばれるものだった。

特徴として超硬度を誇り、そして驚くほど

軽いことで有名な鉱石だったのだ。

かのアダマンタイトに並ぶとも言われる

硬度を誇るウルティムだが……1つの大きな

欠点を抱えていた。

それは、加工が不能なくらいに硬すぎること

だった……熱にも半端ない強さをもつために

武器にもできず防具にもできないことから

無価値な鉱石として有名なものだった。


アレク達も入手するまでに大変苦労し

アレクが【付与】と【身体強化・極】を

使用してツルハシを5本廃棄してやっと

一部を採掘することができたのだ。

それからは、採掘したウルティムを使って

《武具作成》でツルハシを作り直すことで

なんとか普通に採掘することが可能に

なったのだ。


そこまで終わった時に、何故この場所が

未開拓になったままになっていたかを

アレク達は理解したのである。

鉱脈が枯れたから閉山したのではなく

ウルティムの鉱脈にぶつかってしまった

から閉山することになっただと。

その後は、パーティー全員でウルティム製の

ツルハシを使って大量に入手してアルテスに

帰ってきたと言うことだった。

そして、採掘したウルティム鉱石を

今度は《素材生成》で高品質のインゴットに

生成し直したという事情を正直に話した。

話を最後まで聞いていたフェルムが、

大きなため意を吐いた。


「まさか、生きているうちにウルティムの

インゴットを目にすることになるとは……

まったくアレクと出会ってから驚かされる

ことばかりだぞっ!驚き過ぎて心の臓に

悪いから少しは手加減してくれ……」


「でも、フェルムさん……俺がこれを

黙ってたら絶対に怒るでしょ?それとも

見せない方が良かったですか?」


「まあ、お前さんが自らの秘密能力を

明かしてまで事情を話しウルティムを

持ってきてくれたことには感謝している!

秘密にされたままでは、後で知った時に

ワシはきっと怒っただろうな……

こんな大切なことを何故黙っていた!とな」


「なら、お話して良かったです。

それにまだ話は始まったばかりですよ?

先程の話でも言いましたが……ウルティム製

のツルハシなら普通に採掘することが

できたんです。それならウルティム製の

加工道具があればウルティムのインゴットを

武器・防具に利用することも可能なのでは

ないでしょうか?」


「なるほど……しかし、それならワシが

言うことではないがアレクの《武具作成》

とやらで武器・防具を作った方が早いんじゃ

ないのか?職人としては悔しいが……

ウルティム製の鍛冶道具があったとしても

すぐに武具を作れるほど現在の鍛冶技術は

洗練されたものではない。将来的には加工

できるようになるかもしれないが現段階では

年単位で時間が必要になるだろう……」


「やはり……鍛冶道具が揃っていても

難しいですか……俺の《武具作成》も

万能というわけではなくて一度、収納した

ものでないと作成できないんです。

簡単な装備ならそれでも良かったんですが

オーダーメイドとなると……」


アレクとフェルムが、ウルティムの活用法に

ついて語り合い互いの意見を交換していると

急にフェルムが黙り込み悩み始める。

アレクが声を掛けようかと考えるが……

何かを葛藤している様子を前に声を掛ける

ことをやめる。

時間にして20分ほど経過したところで

答えが出たのかフェルムがアレクに1つの

提案をしてくる。


「なぁアレク……これから言うことは

鍛冶職人として恥ずかしいことなんだか……

聞いてくれるか?」


「……はい、お聞きします。」


「ワシが武器や防具の雛形を作り、

それをアレクが《武具作成》で作り直し

最後にワシが仕立てはどうかと考えたのだ。

鍛冶職人としてウルティムを一から仕上げる

ことができないなぞ恥以外のなにものでも

ない!しかし、ここで諦めてはアレク達に

用意してやれるものがウルティムを知って

しまった以上は中途半端なものになって

しまう。……だから、今は恥を忍んで

ワシからの頼みを受け入れてほしい……」


「……フェルムさんの誇りを傷つけて

無理なことをさせてしまってすみません。

けど、今はその職人の魂に感謝します……

本当に……ありがとうございます」


「いいってことよ!それにウルティム製の

鍛冶道具についてはアレクに頼んでも

いいか?今回の武具については製作者として

名乗ることはできないが……将来、必ず

自力でウルティムを加工して逸品を作って

やるからな!」


「はい!喜んで用意させてもらいます!

その時は、最高の逸品を見せて下さいね!!

俺も楽しみにしてますから」


装備の作成の目処がついたアレクとフェルム

はウルティム製の武具について相談を続け

早速、雛形の作成に取り掛かるので

あった。

その後、2人で休憩している時にアレクが

もう1つ素材があることを思い出し

無造作に“蒼糸の繭”を取り出してみせると

水を飲んでいたフェルムは、壮大に吹き出し

こんな大切ことを何故黙っていたっ!と

殴られたのであった。








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