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閑話 冒険者ギルド受付 セシリア

私はセシリア。

ウィリデ王国・王都ドゥールムの冒険者ギルドで現在は受付をしている。

冒険者であった父と村人であった母との間に生まれた1人娘であった。

3人は、王都に移り住み私も王都で少女時代を送っていた。

しかし、幸せは唐突に終わりを告げる。


私が13歳の時、父が冒険者の依頼の途中に

強力な魔物に襲われ帰らぬ人となったのだ。

母も私も悲しみに暮れ何日も涙が枯れることはなかった。

幸いにも、父が冒険者として大金を稼いで

くれていたおかげで貧しい思いをすることは

なかったが、母は父を失ってから段々と元気がなくなっているように見えた。


そして、私が15歳になり成人を迎え

しばらくして母が流行病で亡くなった。

私は、悲しかったが……涙が出なかった。

父が亡くなってからの母の様子を見てきて

いつか母も父の後を追うのではないかと

覚悟をしていたからだ。


私を残して両親がいなくなってしまったこと

は、とても辛かった……寂しかった……

けれど、父も母も天国で一緒にいると思うと不思議と救われた気持ちになった気がした。


私が、1人になり世間の右も左も分からない

時に声を掛けてくれたのは父の冒険者時代に

お世話になった人達である。


王都 冒険者ギルド

ギルドマスターのガルドさんと

弟で副ギルドマスターのバルドさんだ。

2人は、後輩であった父の娘である私を

心配し冒険者ギルドで職員として働かないか

と誘ってくれた。

私は、1年間で冒険者ギルドの受付見習いの

仕事を全て覚え16歳の時に正式に受付と

なった。


それからは、あっという間に時が過ぎた。

野蛮で粗暴な冒険者達を相手にしながら

時には大声で怒鳴られ、時には依頼失敗で

金が払えないと泣かれたこともあった。

4年間で、そんな環境にも鍛えられ

受付として逞しく成長できたと思う。

職員同士の人間関係も良好で信頼できる人達

ばかりで本当に助かった。


そんな、ある日2人組の女性と少年が

冒険者ギルドに入ってきた。

冒険者ギルドには、様々な事情の人が

訪れる為2人が特に珍しいということはなかった。


「すまない、冒険者登録をお願いしたい。

私と、この子の2人だ」


いつも通りに丁寧に仕事を進め

必要書類と確認事項を伝えていく。


(女性の人は、魔法士かな?綺麗な人……

少年は、明らかに成人前ね)


少年に冒険者見習いの注意事項を伝えて

2人とも問題なく冒険者登録が完了した。

女性は、登録を抹消されたようで

説明は少年のみだったが銀色の髪の彼は

ギルドカードが珍しいらしく驚きながら

私の説明を聞いてくれるで微笑ましく思い

口元が緩みそうになってしまう。


やがて、冒険者についての説明が終わると

少年は丁寧に一礼してくれる。

普段、仕事として受付をしているが

それに対して感謝されることは殆どなく

これには驚いてしまった。


(あのくらいの歳で、しっかりした少年ね。

意外と中身は大人なのかも!)


内心、嬉しい気持ちになり受付から

去っていく彼を見つめていた。

受付業務を進めていると何やら

入口側が騒がしいのに気がつく。


(うん?なにかしら?また揉め事?)


冒険者ギルドでは、荒事も日常茶飯事だが

傷害することは禁止されている。

もしもの場合は、職員が仲裁しなければ

ならないので様子を伺う。

入口付近に冒険者3人と先程の2人組が

向かい合っている。


(しまった!あの3人は、ギルドから注意を受けている問題のある人達!!)


ギルドからの注意を繰り返し無視する

冒険者などは重い処分として冒険者登録を

抹消され追放されることになる。

にもかかわらず、入口の3人は何を勘違い

したのか迷惑行為や傷害未遂を繰り返して

いた。


彼女達が、一方的に絡まれているのは明白。

ガルドかバルドを呼ぼうと受付の席を

たった瞬間、凄まじい寒気が背中を走る。


(なっ!なに!?なにがおこ……)


凄まじい寒気の正体を考える前に

セシリアの目線は1人の女性に固定されていた。

先程の女性が、堂々とした姿で立ち

視線だけで冒険者を気絶させていた。

女性から放たれている威圧感にギルド全体が

驚愕と畏怖に包まれているようだった。


やがて、何事もなかったように威圧感が

霧散していきギルドに安堵の空気が戻る。

後に残された問題の冒険者達は、ギルド全体

からの愚か者に向けられる目線に

耐えられず逃げて行った。


(とんでもない女性だったわ、あれは

すごい冒険者になるでしょうね……)


手にかいた汗を拭きながら、これからの

彼女の活躍を想像し胸が踊る。

すると、ギルド内にいた他の冒険者からも

口々に感想が溢れてくる。


「すごい新人が現れたものだぜ……

お前、今度あの女冒険者に声掛けてこいよ」


「はあ?ふざけんな!あんなおっかない女に

話し掛けたら見られただけで漏らすわ!!」


「だよな〜、いくら美人でもありゃ無理だ!

けど、お前気づいたか?あの子供の方」


「は?子供?……隣にいたやつか!

あいつが、どうしたっていうんだ?

普通の子供だったろう?」


「はぁ〜、お前は分かってねぇな。

あのギルドの誰もがビビる威圧感の中で何事もないような涼しい顔で、あの女の隣にいた

んだぞ!あの子供は!!普通な訳ないだろ!

あの子供もしかしたら大物になるかもしれんぞ?」


ギルド内の各所で、同じような会話が

交わされていた。

話に上がっている少年の姿を思い出しながら

ギルドマスターと副ギルドマスターがいる

執務室へと足を向ける。


執務室で仕事中のギルドマスターガルドさん

と副ギルドマスターのバルドさんに

たった今、ギルド内で起こった内容を

報告する。


「……以上が今回の件の報告になります。

問題を起こした3組の冒険者の処分は

いかがなさいますか?」


「問題を起こした者達には、冒険者ギルドを

追放もとい自主的に抜けてもらうことにする

その際にギルドに、これ以上迷惑を掛けたら

どうなるか分からせるとしよう」


「では兄貴、手配の方はこちらでやっておこう。その後は、一定期間で監視は付けるか?


「いや、監視は必要ないだろう。やつらも

そこまでバカではあるまいよ」


その会話に、不安を感じたセシリアは

確認の為に質問する。


「ガルドさん、彼らは何度もギルドの注意を

無視するような者達です。そんな者達なら

今日の新人冒険者を逆恨みして襲うことも

考えられないでしょうか?」


「うむ、それもそうか。なら一カ月程

監視をつけ様子を見することにしよう」


「まぁ、それでもいいが半年程は定期的に

様子を見させてはどうだ兄貴?奴らが

すぐに動くとは限らないだろ?」


「いや、今回の件は一カ月で済ませたい。

ギルドの冒険者も遊ばせておく訳には

いかないからな」


セシリアは、納得できていなかったが……

ギルドのトップが決めた決定に従わない

わけにはいかず、渋々了承した。


「それは、ともかくセシリア。君の目から

見て新人冒険者の2人はどうだった?

期待できそうな者だったかな?」


ガルドさんの質問にセシリアは即答する。


「あの新人冒険者達は、かなり期待しても

いいと思います。女性の方は格好から

魔法士だったように思いますが実力は

もう完成した力を持つ者だと感じました。

少年の方は、まだまだ未熟なようですが

ギルド内の誰よりも資質が……

いえ、伸びしろがあると思います」


「ほぅ?セシリアが断言するとは珍しいな?

なら機会があれば俺が鍛えてやるか!最近は

教官もしてなくて体が鈍っていたからな。

セシリア、もし少年の方が訓練する意思が

あるなら話をしてやってくれ」


バルドさんが機嫌良さように語る。



===============================



それから新人冒険者の2人に関わることに

なるのだが……きっかけは薬草採取だった。

通常は、1日掛けても採取するのが難しい

依頼を数時間で完了させてきたのだ。

2人のことは、特殊だと認識していたが

ここまで規格外だとは思わなかった。


あまりの驚きで失礼な態度を取ってしまった

ことが、どうしても許せずにお詫びとして

食事に誘うことを考えついた。

もちろん2人のことをもっと詳しく知る

というギルド職員としての考えもあったが……1番は、2人に対しての個人的な興味が

とても大きかったからだ。


受付を他の職員と代わってもらうと

2人の姿を探す。

すぐに少年は見つかったが換金中だった。

薬草を換金している少年の邪魔はできないと

思い周りを見渡すと女性の方が、すぐ

近くにいたので話し掛けに向かう。

女性は話し掛けると非常に話しやすく

とても落ち着いた雰囲気を持つ人だった。

名前をルシアさんといい、少年は方は

アレクサンダー君と言うらしい。


受付では、1日に何度も冒険者登録を

行う為に名前を忘れがちになる。改めて

2人の名前を忘れないように覚えた。

先程の件を話し、食事のことを伝えると

快く誘いを受けてくれた。

その場を離れる際にアレクサンダー君と

入れ違いになったが手を振ると笑顔を

向けてくれた。


その夜、ルシアさんとアレク君と自己紹介や

お互いの経歴に現在のことなど色々なことを

話すことができた。

特に興味深かったのはアレク君がルシアさん

の弟子になるまでは独学で修行をしていた、

という点だった。


(村人の子供が独学で修行してるなんて

聞いたこともないわ……もしかしたら強靭な

精神力も、そこに秘密があるのかも)


そんなことを考えながらアレク君の顔を

見ているとコロコロと表情を変え、私を見てくる。そこで、ふっと思う……。


(もしかしたら私に弟がいたらアレク君

みたいな子なのかな?)


そう考えると、目の前の少年がとても愛しく

思えてきて自分の中で彼の存在が少しずつ

大きくなっていると感じることができた。

その後も、ギルド内での2人に対しての評価やアレクに訓練のお誘いを伝えたりと多くの

話をして楽しい時間過ごすことができた。



===============================



最近、アレク君は友達になったカイン君と

仲が良いようで休憩中に訓練所で話している

ところを良く見かける。

訓練に関しては最初は訓練で上手くいかずに悩んでいる様子だったけど、ここ数日でコツを掴んだようでメキメキ実力をつけいると

バルドさんが嬉しそうに話していた。


(頑張ってるみたいね、アレク君!基礎を

しっかりと鍛えることは生存率にも関係して

くるから、地道に頑張るのよ!)


心中でエールを送っていると受付にきた

冒険者に話し掛けられ意識を目の前に集中する。


「あの〜地下訓練所で訓練してる冒険者見習いの子と模擬戦をしたいんですけど取り次いでもらえませんか?」


予想外の案件に、混乱しながらも冒険者から

模擬戦を申し込んだ経緯を確認して訓練所に

いるアレク君とバルドさんの元に向かう。

アレク君は、当然断ると思っていたのだが

またしても予想外に模擬戦を受けるという

返事だった。


あっという間に模擬戦、当日になり私は

アレク君がケガをしないか心配で心配で

仕方なかった。

それも当然だろう、彼が相手にするのは

Dランク冒険者で明らかな格上なんだから。


(あ〜も〜、何でことなことになっちゃったのよ!アレク君は大丈夫かしら?無理して

ケガでもしたら……)


そんなことを考えていると模擬戦が

ギルド職員と冒険者達などの野次馬に見守れ

ながら開始された。

野次馬から発せられる歓声、驚きの声

訓練所に響き渡る剣撃と金属がぶつかる音

誰もが訓練所の中心で戦う2人の戦士に

目を奪われ魅了されていた。


(すごい……あんなに勇敢に怯むことなく

格上の相手に挑んでいくなんて)


結果としてアレク君は、一撃も受けることなく格上の冒険者を見事に倒してみせたのだ。

その勇敢に戦う姿は、多くの人々を感動させ

そして心に熱くなるような火を灯した。

女性である自分ですら体の芯から熱くなり

模擬戦の一進一退の攻防に歓声を上げていた。


「アレク君、本当にすごかったわ!お姉さん、感動しちゃった!!」


興奮冷めやらぬままにアレク君に声を掛けると、こちらが大きな声を出して応援している

ところを見ていたのか。


「セシリアさんも、応援ありがとうございました。お陰様で、なんとか勝てました」


なんてことを言うので、先程の自分の姿を

思い出し急に恥ずかしさがこみ上げて自身の

顔が赤く染まっていくのが分かる。


無事に模擬戦が終わり受付で先程の戦闘中の

アレク君の姿を思い出してニコニコしていると、そこにルシアさんが依頼を終えて帰って

きた。模擬戦の件を当然知っていると思い

結果を上機嫌で話すと逆に不機嫌になって

いくルシアさん。


(あれ?私、余計なこと言っちゃった?)


私にお礼を言いながら帰っていくルシアさん

の背中を見送りながら心の中でアレク君に

謝っておいた。


(アレク君!本当にゴメン!!)



===============================



その後もアレク君は、私達を驚かせてくれる

ことばかり起こしてくれる。

勉強の為に冒険者ギルドの資料室を良く

訪れていると思ったら、今度は険悪な関係で

ある教会に勉強しに行っているらしい。

しかも、司祭様と偶然出会い何故か気に入られて直々に自由に教会を出入りする許可まで

もらってきたのだ。


驚くのを通り越して呆れてしまうほどの

行動力と運で長年にわたる冒険者ギルドと

教会の確執を彼は和らげてくれた。

そして何が、きっかけになったのか教会で

医療改革に乗り出し数多くの困難を色々な

人々の協力を取り付け見事に打ち破って

みせたのだ。


アレク君は、まだ13歳の少年だが……

その未来にはどれだけ多くの人々を助ける

ことになるのか?私には分からない。

けれど、彼が何かの危機に陥った時は

私は迷わずに助けるだろう。


私の可愛い弟の顔を思い浮かべながら

パーティーメンバーと共に馬車に乗り

冒険に出掛けた一行を見送った。


























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