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異世界やりこみドMプレイ〜持たざる者から始めます〜  作者: 塚木 仁
1章 【少年期 修行と検証の日々】
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弓の真価と初ダンジョン攻略1

晴れ渡る草原の中にアレクは立っていた。

傍にはルシアが期待に胸を膨らませ

これから起こることをうずうずしながら

待っていた。


以前の魔弓の試射と同じように藁の的を

大岩の場所へと設置する。


「これで、準備よし!そろそろ始めます。

師匠は、少し離れてて下さいね」


「えぇー、もう少し近くで見せてくれんのか?

良く見えなくて詳細が分からなかったら

どうしてくれる!」

訳の分からないことを言って近くで

観察しようとする師匠。


「あーもう、仕方ないから近くでもいいですよ……何かあったら自分で何とかして下さいね?【身体強化】本気モード」


雑談を打ち切るようにアレクの表情は

真剣なものになり纏う空気も変わっていく。

(【付与】【雷魔法】【風魔法】)

スキルを展開し終わるとアレクは静かに

弓を引く、やじりの先に的を捉え

今自分に出来る全てを乗せて放つ。


矢を放った刹那、大気を引き裂くように

甲高い音が辺りに響き渡る。

発生した雷鳴は大岩に吸い込まれると

同時に重たい音へと変わった。

『ドゴオォォ!!』


あまりの威力に唖然とするルシアと

自身の想像を超える光景に焦るアレク。

弓から放たれた矢は藁の的を撃ち抜き

更には後ろの大岩まで貫通してゴルフボール

程の大きさの穴を作って地面に傷痕を残していた。


「おっ、思ってたのと違う……」

喘ぐようにアレクが言葉を絞り出す。


「ぼーや、今のは何をどうしたんだ?

あまりに、非常識な光景に驚きを禁じえないんだが……」

師匠も、目を丸くして穴が開いた大岩を

見つめている。


アレクは、自分が行った事を隠さずに

ルシアに説明した。


魔弓を扱う為に【身体強化】本気モードを

展開し、【付与】を雷魔法と風魔法に

使用した。簡単に説明すると以上だが

厳密には違う。


【付与】は対象の特性を

付与することが出来る。今回は雷魔法の

雷によって貫通性能を高める特性と

風魔法の空気抵抗を軽減する特性を

矢に【付与】した。


その結果、常人ならざる力で射出された

矢はやじりに雷の貫通性能を持たせ

矢自体の空気抵抗を限りなくゼロにすること

で大岩おも貫通する1撃必殺の矢へと姿を

変えたのである。


「自分のやったことを、ありのままに

説明すると以上になります。ちなみに

今の魔力(MP)消費は2です」


【付与】は基礎魔法を発動させただけで

特性を付与出来る為に魔力の消費を多く

要さずとも可能な攻撃手段と化していた。


「魔力(MP)の消費が2!それは本当

なのか!?信じられん!あれでけの威力で

そんな制限しかないとは……」

口を手で隠しブツブツと独り言を呟く師匠。


「師匠!自分の世界に行かないで下さいよ!

一応、これで魔弓での戦闘は可能になったん

でダンジョンに一緒に行けると思うのですが

どうでしょうか?」


「うん?ああ、前に言ってた初心者向けの

ダンジョンか。いいんじゃないか?ぼーやの

武器も装備も整ってきたしスキルも育って

きたと思うしな。そろそろ実戦を積む方が

いいだろう」


「やったー、ありがとうございます!

僕の準備は、終わってますので師匠の都合に

合わせて予定を組んでダンジョン攻略に

向かいましょう!」


こうして、ルシアとアレクはダンジョンに

挑戦することになった。ルシアの依頼の都合

でダンジョン攻略は10日後になりアレクは

食料や装備を整えて時間を過ごした。



===============================



10日後、ルシアとアレクは王都より

5日の距離にある階層ダンジョンに来ていた。

ダンジョンの周りには森になっており

その中に石製の地下に続く階段がひっそりと

姿を現していた。


その入口に2人は並んで立っている。

「さてと、ぼーや。これからダンジョンに

入るが……ダンジョンについてどれくらい

理解している?」


「えっと、ダンジョンは魔素が異常に多い

エリアに出現するもので中には魔物が

生息している。種類は石造りの階層ダンジョンや

土壁の洞窟ダンジョンなどがあり

共通なのは、ダンジョン最奥の核魔石を

取ると自然消滅する。ってこと位です」


「それ位に理解しているなら、あとは

ダンジョン内で実戦を行いながら説明すると

しようか」

ルシアは、そう言うとダンジョンに向けて

歩き出す。アレクも遅れて後に続く。


ダンジョンの中は、少し薄暗く石造りの為

ひんやりとした空気に包まれていた。

しかし、魔素を含んでいるからか壁からは

微かな光量が発生しており視界は最低限

確保できていた。

道幅は5m程で2,3人なら並んで戦える程の

広さをしていた。




「魔法で灯りを作れるが、どうするぼーや?

ダンジョンでの判断は、任せるぞ?」

師匠が俺に判断を委ねてくる。


「魔物に発見されやすくなりますし、先手は

譲りたくないので灯りはなしでお願いします。

そのかわり、【気配探知】【魔力探知】

を発動して襲撃に備えておきます」


「いい判断だ、ではまずはぼーやが

片手剣と盾で前衛、私が後衛で行こう。

しばらく戦ったら交代だ」


「はい、了解です」

アレクは、模擬戦の勝利祝いにルシアから

貰った小盾。ターゲットシールドを装備している。盾には中央部に金属製の突起がついて

いるが軽量で扱いやすくなっていた。


するとすぐに気配探知に4体の魔物の反応が

引っかかる。

「前方、4体います。姿を確認して倒せそうならこちらから仕掛けます。フォローお願いします!」


隠密と歩行術で、静かに近づき敵の姿を

捉える。4体は獣の姿に近いゴボルドと

呼ばれる魔物だった。1mない大きさで

素早い動きが特徴の魔物である。


「……師匠、こちらから仕掛けます。

先制のウインドカッターを1発お願いします。あとは僕が突っ込んで殲滅しますので」

小声でアレクがルシアに指示を出す。


「いいだろう、だが無理はするなよ?」

諭すような表情で師匠から気遣いを受ける。


「はい、安全に十分配慮して仕掛けます。

では、行きましょう!」


「【ウインドカッター】」

鋭い風圧がゴボルドめがけて飛んでいく。

それを確認したアレクは身体強化を行い

盾を構えながらゴボルドの群れに突っ込んだ。

目の前で1体が切り裂かれるが残り3体は

動揺することなく攻撃を受けた方角を

注視していた。


「はっ!!」

そこから、現れたアレクが鋭い剣撃を

1体に放ち首をはねる。


残り2体が、鋭い爪と牙でアレクに飛びかかるが盾で攻撃を逸らすとカウンターで1体を屠り更に残り1体も首と胴体が離れ絶命して

ちりのように消えていった」


「ふっ〜」

周りに探知を行いながら、アレクが戦闘で

緊張した気持ちを弛緩させる。


「お疲れ様、ぼーや。中々に安定した戦い

だったぞ?戦闘前の指示も出来ていたし

合格点だ」師匠が声を掛けながら後ろから

近づいてくる。


「ありがとうございます。それにしても

ダンジョン内では死体が残らないのですね……」アレクの視線の先には先程まで

ゴボルドの死体があった場所に魔石だけが

転がっていた。


「そうだ、ダンジョン内では死ぬと

エネルギーとして吸収され新たな魔物の元に

なったりレアな宝物に変化したりすると

言われている。ただ素材を落としたりすることはあるから注意するんだぞ?後これは人間なども例外ではないからな」


「人間も……ですか……?」

その発言に不安を感じながら師匠の話に

耳を傾ける。


「ああ、ダンジョン内で冒険者などが死ぬと

しばらくは大丈夫だが時間を経て

ダンジョンに吸収され養分とされる。

装備品などもダンジョンに取り込まれると

新たな宝物として出現したとも報告された

ことがある。これらの事からダンジョンは

魔物だと考えられている」


(ちょっとしたホラー映画より怖いな……)

「ダンジョンの最奥に核魔石があることも

その説を裏付ける根拠という訳ですね」


「まあ、冒険者もダンジョンを宝物探しや

レベルアップなどに利用してるから街中や

街近郊に出現しない限りは核魔石を取らないで存続させているがな」


「この初心者ダンジョンも、その1つと

いう訳ですね……」


師匠は思い出したように情報を付け加える。

「大きい街中にあるダンジョンは核魔石を

取っても消滅せず沈静化するだけの所も

あったはずだから一概には一緒にできんな」


(どういう条件で復活するんだろうか……

調べられるなら、いずれ調べてみたいな)

「ちなみにダンジョンは何階層まである

ものなんですか?」


「特に階層は、決まっていないが

階層ダンジョンは30〜100階層までが

出現の幅と言われている。ここは30階層まで

だから初心者ダンジョンという訳だ」


その後、ルシアとアレクは次々と現れる

魔物。ゴボルド・ゴブリンなどを倒しながら魔石を回収し5階層まで辿り着き階段で休憩を入れていた。


ここまでダンジョンを探索していて

分かったことは1階層辺りの大きさが

400m四方くらいで階層と階層を結ぶ

階段部分には魔物がいないということだった。地図などもない為に最初は階段を

探すのに手間取ったが途中から気配探知と

魔力探知を使って、階段部分に魔物がいないことを逆手に取って階段を探せば楽に

進むことが出来ることに気付いた。


「ぼーや、頭を使ってダンジョンの攻略を

うまく進めたな。本来なら地図埋めをしたり

探索のスキルがないと、スムーズに進めないが大したものだ」師匠が満足そうにウンウン

頷いていた。


「師匠、本当に何も教えてくれないんですもん。実力をつける為とはいえ、ここにきて

ノーヒントは意地悪でしょ?」


師匠からはダンジョン攻略は命の危険が

あれば助けるから極力1人でなんとかしろと

言われていた。


「なんでも、私が教えていては成長しまい?

それに、なんだかんだ言っても1人で解決

しているじゃないか」


(師匠が後ろにいるから安心して対応できていることは確かだが、今はなんか言いたくないな)師匠のドヤ顔を幻視して言葉を飲み込む。

「まだまだ浅い階層で魔物もゴボルドと

ゴブリンばっかりですからね……デカイ虫

とかじゃなければ僕は平気ですよ?」


「なら、安心して進むといい。この先からは

デカイありやらクモやらが出現する

から楽しいと思うぞ?」

悪魔の微笑みを浮かべる師匠。


「師匠……嘘……ですよね?冗談……

なんですよね?」すがるように師匠を見つめる。


『ニコッ!』とした笑顔の師匠に首根っこを

ガッチリ掴まれ5階層へと続く階段を降りていく。


「やーーだあーー!!かえーーるーー!!」

子供のように抵抗するが努力は実らなかった。


それからは地獄だった。1m程のキラーアントやグリーンスパイダーに出会い発狂しそうになったり前衛を懇願して師匠と交代して

もらったら後ろから飛んできたフライアントに吐きそうになりながら弓矢で応戦した。


必死に9階層まで辿り着き、石の扉の前で

小休憩を入れていた。


「ぼーやが、あそこまでデカイ虫が

嫌いだとは思わなかったぞ?ただの魔物だろ

あんなのは……情けないな」


「仕方ないでしょう!あんなの!飛ぶ虫も

嫌いですが……特にクモは無理です……

あの動きに気持ち悪い口、それに表面に

毛みたいのがあるのが本当に無理です」

ゲッソリしながらアレクは語る。


「まあ、ここの主部屋を攻略すれば

中で休めるし次の階層からは別タイプの

魔物だから安心していいぞ?」

師匠が子供をあやすように話す。


「それなら、なんとか頑張れそうです。

主部屋の魔物はゴーレムとかがいいな……

魔弓の威力も確かめたいし」


「それより、準備は大丈夫か?装備確認や

アイテムの確認は済んでいるか?」


「はい、大丈夫です。いつでも行けます」


「よし!なら扉を開けぞ!」

師匠の声と同時に石の扉が重い音を鳴らしながら開き中に入ると閉まっていく。


主部屋の中は50m四方に開けており

薄暗くカサカサと何か蠢めく音が

耳に入ってくる。嫌な予感がしつつ

【気配探知】と【魔力探知】に集中すると

上に何かがへばり付いているのを感知する。


「師匠……上に何かいますが……すごく嫌な

予感がします」

自分の中の本能が、全力で魔物の正体を

隠しているが視覚が暗さに慣れ始め

やがて魔物の姿を露わにする。


(おええぇぇぇぇ、でけえぇぇぇぇ!)

「…………………うっわ」

心の声と実際に発した声がショックで

逆転してしまう。


目の前に現れたのは、全長3mほどの

巨大なクモだった。周りには先程倒していた

グリーンスパイダーが6体ついている。

「デカイのは、ポイズンスパイダーだ!

糸にも毒が含まれているから不用意に

動いて毒をもらうな!」

師匠が前に立ちながら警告してくる。


(【身体強化】【付与】

【雷魔法】【風魔法】)

「………………おえっ」

吐きそうになりながら弓を構え、矢を番える。

師匠が子グモを処分している間に主に

狙いを集中する。

「気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い」心が折れそうになるが頭を狙って

矢を放った。

一瞬、雷鳴と共に閃光が走り大グモの

体内を矢が貫通するグロい音が聞こえる。


大グモが絶命すると同時に死骸はちりになり消え去ってしまう。残ったのは

大グモの大きな牙と中指程の魔石だった。


ルシアも小グモを全て処理し終わると

アレクの近くに戻ってくる。

「……大丈夫か?ぼーや?」


「…………………」


「ぼーや?」


「師匠の嘘つき!!」

『ぶわっ』とアレクの目から涙が溢れ

真っ直ぐに頬を流れる。


「っ!!すまなかった!ぼーや!」


その日のダンジョン攻略は10階層までに

なり、ルシアとアレクは主部屋で仮眠を

取ることになった。


そして、その日……

アレクは、この世界で初めてガチ泣きし

ルシアは、初めてアレクの前で狼狽ろうばいした

姿を見せた。


2人の初めての夜は、悲しく過ぎていった。
















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