初ダンジョン攻略2
ダンジョン攻略2日目
10階層の主部屋を攻略したルシアとアレクは
主部屋で仮眠と食事を済まし次の階層へ
降りようとしていた。
2人の間には気まずい雰囲気が流れている。
アレクが初めて見せた子供らしい部分を
ルシアが苛め過ぎたせいで昨日の夜は
散々な時間をお互いに過ごしていた。
「ぼーや、そろそろ機嫌を直してくれないか?昨日は私が悪かったから!な?」
アレクの様子を伺うようにルシアが
問いかけてくる。
「別に怒ってませんから……」
アレクは昨日のことは確かに怒っていなかった。しかし、前世のこともあり精神が若返っているとはいえルシアの前でガチ泣きした
ことが恥ずかしくルシアの顔を見れずにいた。
反省したようにルシアが語り出す。
「昨日は、本当に申し訳なかった。
ぼーやは普段から子供っぽいところを
あまり見せないから素直な反応に嬉しくなり
やり過ぎてしまった……」
ルシアが頭を下げる。
ルシアの反省した様子を見て
アレクも観念したように喋り出す。
「本当に、もう怒ってませんよ?ただ
師匠の前で情けない姿を見せたのが
恥ずかしかっただけです」
ため息をつくとアレクは話を続ける。
「それに師匠は嘘は吐いてませんでしたし。
あの時、師匠は「まあ、ここの主部屋を攻略すれば中で休めるし次の階層からは別タイプの魔物だから安心していいぞ?」って
言ってましたからね……」
次の階層から、つまりこの階層はまだ
虫タイプの主がいる。って言ってたから
嘘でない。
「いや、悪意のある言い方だったな。
今度からは、ぼーやが本当に嫌なことは
事前に教えるように気をつけよう」
「それこそ、必要ありませんよ。今回の
ことで分かりましたが僕はデカイクモに
苦手意識があります。これからも冒険者と
してやっていくなら、あれよりも巨大な
クモと突然遭遇することもあるでしょう。
それに慣れる為にも必要なことですから」
かなり気持ち悪いが命の大切さの前では
些細なことと割り切り対応していくしかない。
「分かったよ、ぼーや。けど無理そうなら
遠慮なく言うんだぞ?」
こうして、いつも通りに戻った2人は
11階層の攻略をスタートさせる。
11階層の魔物は、ゴブリンであったが
上層とは大きく違う点があった。
それは、簡易的ではあるが武器を装備
しているということであった。
ボロボロ剣やボロボロの斧を装備し
3体ほどで接近戦を仕掛けてくる。
もちろん、武器を装備したからといって
チームワークで攻めてくる訳でもなく
ただ愚直に攻めてくるのみで危険は
少ない。しかし、アレクはダンジョンの
本当の恐ろしさを肌で感じていた。
(下層に向かうにつれ、リーチの長い槍や
弓とかを使ってくるやつが増えるかも
しれないな。もしかしたら集団戦を
仕掛けてくるかもしれない……これが
ダンジョンの怖さか)
前衛で攻撃を受け流しながらアレクは
一層の警戒を強めるのだった。
11階層〜15階層までは比較的楽に攻略を
することが出来た。しかし、16階層から
ゴブリンの中に槍を持つ個体が出始め
一気に5,6体が出現するようになった。
普通の【身体強化】と【歩行術】で
ヒット&アウェイを繰り返し離れた時に
師匠に魔法で援護を入れてもらい殲滅する。
このパターンで安定して攻略して行った。
17階層〜20階層まではスムーズに進み
現在は主部屋前で戦闘準備をしていた。
「主部屋の前まで来るのに結構な時間が
掛かりましたね……腹の空き具合から
夜にはなってるでしょうか?」
装備の点検を行いながらアレクが
ここまでの感想を口にする。
「ああ、安全を重視した立ち回りをして
いるから時間が掛かるのは仕方ない。
主部屋を攻略したら、ゆっくり休むと
しようじゃないか」
師匠も、念の為に魔力ポーションを飲み
準備を整えている。
アレクは入る前に作戦を確認しておく。
「ここの主部屋は、ゴブリンである可能性が
高いので僕が前衛で囮になり、離れたら
師匠の魔法で敵を削る作戦で行きましょう」
ここまでの安定パターンを採用する。
「ぼーやの言う通りの作戦で行こう。しかし
ぼーや、予定外のことは必ず起きる。特に
ダンジョンの主部屋ではな……」
「予想外のことですか……一応、対応
できるように心構えはしておきます」
覚悟を決め、石の扉を開き
中に入ると静かに扉が閉まっていく。
(結構、中は暗いな……【気配探知】と
【魔力探知】に集中しないと)
そんなことを考えていると『ヒュ!』と
聞き慣れた風切り音を感じ盾を構える。
「師匠!弓矢です!」
師匠に警告しながら盾を構えて音のする
方角と師匠の間に立つ。
「ぼーや、姿勢を低くしろ!」
師匠は俺の肩を掴むと体重を掛ける。
すると頭の上を威力の弱いウインドカッター
が通り過ぎていく。
(今のは判断ミスだ!魔法まで意識が
回ってなかった!)
暫く敵の出方を窺ったが
再度、魔法は飛んでこなかった。
その間に、【気配探知】【魔力探知】を
集中して行う。
「弓持ちのゴブリン5体に
魔法使いのゴブリンが5体か多いな」
(魔法を使ってこないところをみると
魔力切れか?メイスのような武器を
持ってるし近接戦闘をしてくる気か)
(【身体強化】)
「師匠、僕が近接戦闘を仕掛けます。
弓持ちは魔法で牽制お願いします!」
「分かった!行けぼーや!」
師匠の声を合図に一気に距離を詰める。
矢が何本か飛んでくるが全て師匠の魔法で
撃ち落とされる。
メイスを持ったゴブリンが前に出てくるが
魔法使いなせいか弱かったので
一気に殲滅する。その後は師匠と共に
弓持ちのゴブリンに対して
ヒット&アウェイ戦法を行い戦闘は
無事終了した。
戦闘終了後、主部屋で食事を取り
休んでいると師匠が話し掛けてくる。
「今日の主部屋での戦闘、ぼーやは
どう感じた?反省点はあるか?」
アレクは先の戦闘を思い出しながら
重い口を開いた。
「はい、事前に師匠から予定外の事が
起こると言われていたのに弓矢での攻撃を
察した時点で師匠を守ることに集中し過ぎて
気配探知と魔力探知を疎かにしてしまった点。
それにより、魔法の接近に気付けなかった点。
そもそも師匠の実力を考えれば守る必要
がなかったことが挙げられます」
師匠は、落ち着いた様子で助言してくれる。
「そうだな、予定外なことが起きるとどうしても普段出来ていることが疎かになる。
魔法の感知は、そもそも部屋に入った時点で
魔力探知が緻密にできていれば魔力の高い個体がいたことに気付けたはずだ。
最後に仲間の実力は正確に把握しておかないといざという時に動けなくなる」
「これから、自分が何をすればいいか
分かるかな?ぼーやは」
師匠は、俺の顔を見ると答えを促す。
「まず、【気配探知】と【魔力探知】を
意識せずとも自然に使えるようにします。
同時に2つのスキルの熟練度を上げ
より遠くまで、より正確に探知できるように
訓練します。最後に仲間とは何ができて
何ができないのか話し合い実力を出来るだけ
把握できるようにします」
(スキルを沢山覚え、スキルを少し使いこなしたくらいで慢心していた!実戦では少しの間違いで命を落とす。もっと自分の可能な
ことを極限まで鍛え備えるべきだった……
俺は〈持たざる者〉なのだから)
「いい解答だ、ぼーや。今日は明日からの
作戦もあるし私の出来ることを質問して
みるといい。全てではないができるだけ
答えよう」
その夜は、師匠に使える魔法についてや
スキルについて質問し情報を頭に入れた。
明日からの敵に、出来るだけ対応するべく
作戦を改めて考える。
こうして、2日目の夜は主部屋で過ぎて行き
次の日に21階層へと足を踏み入れた。
ダンジョン攻略3日間
21階層からは、武器を持ったコボルドが
出現するようになった。下層のゴブリンと
同様にボロボロの剣や斧で攻撃をしてくるが
1番の違いはスピードで通常の【身体強化】で対応できる程度だったが確実に強くなっている。3,4体で行動しており単純な攻撃を
仕掛けてくる。
26階層へ続く階段で休憩中に疑問に
思っていたことを師匠に質問してみる。
「師匠、僕レベルの冒険者2人だと
このダンジョン難易度高くないですか?」
初心者が2人で攻略にきた場合、単純に
魔物の強さ・出現数を考慮しても攻略できる
ようには感じませんでした」
「ふふっ、気付いたか……ぼーや」
思わせぶりな発言をする師匠。
「ダンジョン攻略を終えるまで黙っていようと思っていたがバレては仕方ない。
ここのダンジョンはな……
実は初心者パーティーにオススメの
ダンジョンなのだよ!」
師匠が語ったのは、このダンジョンは本来
4〜5人程の初心者パーティーが訓練するのに
最適な環境ということだった。底ランクの
魔物が多く出現し進むにつれて連携を
して仕掛けてくる。それを効率的に
打ち破ることができるかを試すのが
理想的なダンジョンの利用法だという。
ここで、1つ疑問が浮かぶ。
「師匠、じゃあなんで今回は2人で攻略に
きたんですか?」最初から言ってもらえば
カインも誘って攻略にきたのにと考える
アレクにルシアが答える。
「最近、ぼーやは対人戦を意識した技術や
スキルを学んでいたようだったからな……
少人数 対 多人数 の劣勢に慣れる意味でも
このダンジョンでの攻略が有用だと判断
したという訳だ」
師匠の言ったことは俺の考えを正確に
読み取っていた。将来、多人数の盗賊や
魔物に対応できるように自分を鍛える。
それが最近の目標になっていたし
それが前提の戦い方を勉強していた。
(この人は……俺のことを本当に良く
見てくれているな)
「師匠、ありがとうございます。その……
師匠の弟子になれて僕は幸せ者です……」
珍しく素直な気持ちを師匠に伝える。
師匠は、少し驚いた表情を見せたが
すぐに笑顔になり俺の頭をポンポンしてくる。
「私は師匠だからな!当然だろう?」
弟子からの感謝を、そんなことは師匠として
当然だから遠慮するな!と伝えてくる師匠に。
アレクは将来、自分もこんな師匠になりたい
という想いを抱くのだった。
休憩を終えた2人は、26階層に突入して
行った。そこに待っていた魔物は
ゴブリンナイトとゴブリンソルジャーという
武器と防具を装備した個体が2,3体の群れで
出現した。ただのゴブリンとは違い
連携して攻撃を仕掛けてくるし防具がある
から急所を狙って攻撃しないと致命傷に
ならない。
格段に難易度が上がってきていたが
アレクの前衛で敵の足を止めルシアの魔法で
体力(HP)を削り、最後にアレクがトドメをさす。手堅い連携で乗り越えていく。
ダンジョン後半になり宝箱なども発見しながら順調に進み2人は30階層の主部屋の前まで到着していた。




