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かまちょな彼女  作者:
9/13

かまちょな彼女とともちん

ここまでお読みいただきありがとうございます。

前回からの続きです。

よろしくお願いしますm(__)m


更新は朝の6時を予定しております。

 艶のある長い黒髪。


 どこか愁いを帯びている端正な顔立ち。


 すらりと伸びる四肢。


 可愛いというよりも美人と形容したほうが当てはまる女子高生、滝ノ沢千寿はそんな少女だ。


「だーれだ」


 登校してきた千寿が教室に入ろうとしたとき、不意に背後から首に腕を回される。


 その声には聞き覚えがあった。


 いや、聞きなれているものだった。


「おはよう。ともちん」


 フックされた腕をほどきながら振り返る。


 そこには八重歯をのぞかせながら快活そうに笑う少女がいた。


 ショートヘアと健康そうな小麦色の肌。


 彼女は大場巴、千寿の小学校からの親友だ。


「おっはよう、千寿」


「なんか久しぶりだね」


「そうなのよぅ。最近部活が忙しくって。千寿の背中見えたから思わず抱き着いちゃった。ビックリしちゃった?」


「……ううん。こういうの好き」


「うむうむ。千寿は愛いよのぅ」


 巴がまたハグしてくる。


「あ、そうだ。ともちんにこの前のことお礼言わないと」


「ほ? あたしがじゃなくて? 千寿に感謝することはあっても、されることは思い当たることないんだけど」


「そんなことないってば。ほら、“かまちょ”教えてくれたでしょ」


「かまちょ……あー。そんなこともあったっけね」


「あれ、すごくいい……っ」


 大したことなさそうにしていた巴に、千寿はずずいっと身を乗り出す。


「近い近い。じゃあ、例の人とはうまくいってるってことね」


「うん。かまちょは魔法の言葉……かまちょを使ってない人は人生の八割を損してると思う」


「大げさだなぁ。でも」


 巴が頭を撫でてくる。


「千寿が楽しそうであたしは嬉しいよ」


 巴と千寿は小学校からの付き合いだ。


 そんな彼女だからこその言葉だった。


 ともちん……。


 巴が本当に自分のことを大切に思ってくれていることを感じ、千寿は胸のあたりが温かくなった。


「……うん。ありがとう。あ、でもこの話は内緒でお願い」


「へ? 別に言いまわったりはしないけどなんで?」


 千寿は宙に視線を向け、先日の幸重の言葉を思い出す。


 ――「学校ではさ、俺のことあまり話すなよ」


 シゲくん、なんであんなこと言ったんだろ?


 千寿は巴にそのことを説明する。


「うーん。それは謎だねぇ」


「でも別に変ったところとかないんだよ」


 ふたりで頭をひねる。


 そのとき、



「大場!」



 突然、声がかけられた。


 ふたりが弾かれたように振り向く。


 そこにはジャージ姿のいかつい中年女性がいた。 あれは巴の所属する水泳部の顧問だ。


「朝練が終わったってのにずいぶん元気が余ってるじゃないか。もしかして手を抜いてたんじゃないだろうね」


「そ、そんなことは……」


「先輩たちを差し置いて県大会に出るんだ、気合入れなおしな! 今日は授業終わったらすぐにプールに来るように!」


「ちょ、先生、いきなり!?」


「返事は?」


「は、はいっ」


 顧問の先生は「それでよし」と満足げに頷くと、豪快な高笑いを響かせながらのっしのっしと去っていった。


 その背中が見えなくなるまで石のように直立していた巴が、がっくりと肩を落とす。


「うう……今日は厄日だ。でも先生の言う通り、先輩たちのためにも県大会は負けられないからなぁ」


「ともちん。頑張って」


「あ! そう言えば今日は理科準備室の掃除当番だった! さいあく~~~~」


 へなへなとへたり込み、頭を抱えてしまう。


「ともちん。掃除当番、私が代わるよ」


「千寿……いいの?」


「うん。私、部活に入ってないしっ。暇だしっ」


 決して意気込む場面ではないのだが、千寿は両手をぐっと握って言って見せる。


「そう言えば千寿って部活とか入らないの?」


「うーん……今は考えてないかな」


「せっかく運動も出来るのに勿体ない気がするけどなぁ」


 キーンコーンカーンコーン。


 そのとき、始業のチャイムが鳴る。


「おっともうこんな時間。じゃあねっ。あたしのほうがひと段落したら例の人のこと聞かせてよねっ」


 身をひるがえして颯爽と走っていく巴に、千寿はゆるゆると手を振って見送った。

明日も更新予定です。

読んでいただけると幸いですm(__)m

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