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無関心三十路ヤンデレ♂×平凡♀
ピピピピ!
「…ん。」
ピピピピピピピピ!
「…………。」
ピピピピピピピピピピピピピピピピ!
「…はいはいはいはいっと。」
ピ!
花はモゾモゾと布団から顔を出し、鳴り響く携帯のアラームを止めてそのままボフンと布団に沈んだ
「眠いぃ。」
昨日遅くまでバイトをしていたから寝足りない。
バイトから帰ると大体そのままベットへダイブしてしまうため寝癖だらけの髪はもはや定番だ。フラフラと目を擦りながら風呂場へ消えていった。
15分後。水シャワーで目を覚まし身支度を整えて再びリビングへ戻ってきた花。先程の雰囲気は一切なく、どこから見ても有名なお嬢様学校ーー桜花女学院の生徒になっていた。
黒のセーラー服にシンプルだが品のあるスカート、そして指定の白いハイソックス。セーラー服のとハイソックスのロゴは桜。それだけで一種のブランドだ。
「いただきます。」
牛乳をかけたシリアルを食べながら何気なしにテレビをつけると占いをやっていた。もう最後の最下位の発表のようだ。
『ごめんなさ~い。今日の最下位は天秤座の貴方!でも大丈夫!ラッキーアイテムは水玉模様のハンカチ!持っていれば新しい出会いがあるかも!』
「……。」
それでは行ってらっしゃい!と終始高いテンションだったアナウンサーの声を聞きながら最後の一口を飲み込んでテレビを消す。
花は水玉模様のハンカチをスカートのポケットに入れてアパートを出た。
吉野花、天秤座。占いを信じる16歳の乙女である。
「ご機嫌よう。」
「ご機嫌よう。」
近隣の県でも有数のお嬢様学校ーー桜花女学院の朝は運転手付きの車で登校してくるお嬢様達の上品な挨拶とともに始まる 。白を基調としたイギリス様式の校舎は多額の寄付のお陰で控えめながらも贅沢な造りになっていて、春にもなればその名のとおり見事な桜が咲き乱れる。
そんな優雅な雰囲気の中、花はゼーゼーと息を切らせて机に突っ伏していた。
あ、有り得ない…
徒歩で片道たったの15分。しかし、今日の道のりはチョッピリ…いや、かなり大変だった。
まずアパートの階段でつまずいて膝をす擦り剥きそれを見ていた小学生にからかわれ、突風で髪はグシャグシャになり、さらに犬には吠えられ黒猫には横切られ不良に絡まれそうになりついには車にひかれかけて命からがら学校にたどり着いたのである。ギリギリとはいえ遅刻しなかった自分を褒めたい。
ラッキーアイテムなはずの水玉模様のハンカチは、つまずいた時に血が出たため応急措置として膝に巻いた。今は保健室でもらった絆創膏を貼っている。
恐るべし星座占い。
「今日生きてアパートまで帰れなかったりして。」
机の冷たさでクールダウンしながらふと思った事が言葉に出た。
…いやいやいや、大丈夫大丈夫。
階段の中腹でつまづいたのに擦り傷ですんだし、クソガキには説教したし、犬も猫も可愛かったし、不良からは逃げれて車にもひかれてないし学校にも間に合った。
あれ、逆に運良くない?
スーパーポジティブ思考は花の長所である。
水玉模様のハンカチを机の真ん中に置き、取りあえず拝んでおこう。
ーー無事に一日が終わりますように。
しかし、そのお願は叶うことなく、最下位の呪い(?)はまだ序章にもなっていなかった事に後に花は思い知ることとなる。
ありがとうございました。