01 眠る記憶はアルディティア教会にて
「……。」
『……。』
「……。」
『……なんだ。』
「ん?」
『先程から、そなたの視線をやけに感じる。』
「う…、……。」
『なにか言いたい事があるのなら口にしてみろ。』
「でも…。」
『遠慮はいらん。我々は―――なのだから。』
「?……あのね?」
『うん?』
「じゅうねん…って、どのぐらい長い?」
『…?どういう意味だ?』
「あのね、どれだけ日が昇って沈めば、迎えに来てくれるの?」
『ああ…、3650日だな。約、だが。』
「……?」
『……分からぬか?』
「うん。」
『そうだな…。そなたが、今まで生きてきた6年が、今言った3650日の半分と少し、と言ったところだ。』
「……えっと、じゃあ、6年ともう半分ぐらい経たなきゃ駄目なの?」
『そうなるな。』
「え、や、やだ!そんなに待てないよ…!」
『時間を捻じ曲げる事は、我も出来ぬ。我慢しろ。』
「でも…っ。…………その間、ずっとひとりぼっちなの?」
『…。』
「もうやだよ…、一緒にいたいよ…。」
『……契約に違反すれば、破棄される。全てがなかった事になる。』
「…っ。」
『だが…、そうだな。』
「…?」
『確かに幼いそなたが人間にしたら長い10年という月日を一人で過ごすのは無理があるだろう。』
「う、ん?」
『仕方ない…。少し我慢しろ。』
「うぇ?………い、ひゃい。」
『額に少し爪が刺さっただけだろう。我なんて割れた事があるぐらいだ、気にするでない。』
「う、ふぇ、…分かった。」
『いい子だ。……これで道に迷わず行くことが出来るだろう。導かれるままに進むのだ。』
「…?」
『そこで、10年の月日が流れたのなら、我はそなたを迎えに行こう。その折りに名前もつける。』
「なまえ?」
『ああ。』
「私が、あなたの名前を?」
『ああ。』
「だったらね、私、あなたの事を―――と呼びたい!」
『…なに?』
「あのね、とっても、―――だったから!だめかな?」
『…よかろう、私の名は―――だ。そなたと我とだけの、永遠の―――。』
「えへへ。きにいった?」
『ああ。これで、我はそなたのもの。永遠の時間を共に過ごす事が出来る。』
「…?よかったー。………うにゅ、なんか、眠くなった…。」
『ああ、もう寝るか。休むまで傍にいよう。』
「ありがとー…。」
『ああ。』
「ねえ、――――」
『ん?なんだ?』
「あのね、――――――だよ。ずっと―――――で――――ね。」
『ああ。――――、―――――――――――――――――――――――――――――