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星降る国であなたと共に  作者: シルクティー


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後編

祭り当日。


セスは、食堂まで迎えにくると言ってくれたので、時間に合わせて準備を進める。


「女将さん、髪はあげるのとおろすの、どっちの方がいいと思う?」


一目惚れして買ったお気に入りのワンピースを着て、髪型が決まらず悩んでいた。


「そうだね、どっちも可愛いけど、アップの方が好きかな」

「じゃあそうする!」


意見をもらって、いつもみたいに高い位置で一本にまとめるが、少しサイドにアレンジを加えていつもと違う感じを出す。


二年も経てばできることは増えていくもので、ヘアアレンジなんて全くやったことがなかったのに、今ではいろんな髪型が作れるようになった。


「ふふ。ステラも恋するお年頃だね。」

「もう、茶化さないで。」


初めてセスに会った時は、顔立ちが整っているな程度にしか思っていなかった。

でも、街で会った時に自然に荷物を持ってくれたり、馬車やぶつかりそうになった人からも守ってくれる優しさに触れて、気づいたら毎日セスが食堂に来るのを今か今かと待つようになっていた。


そして、初めて女将さんに揶揄われた時に自分の気持ちを自覚した。


セスが好き。


迷子にならないように握ってくれる大きな手も、私のことを優しく見守ってくれるあの眼差しも大好き。


自惚れかもしれないが、セスも同じ気持ちでいてくれていると思っている。


「さ、セスが来たよ。楽しんでおいで。」

「ステラ、行こうか」


女将さんが開けた扉の向こうにはいつもと違うヘアセットのセスがいる。


「うん。いってきます。」


女将さんに見送られながら食堂を出てお祭り会場の広場に向かう。


「お祭り、ちゃんといくのは今日が初めてなんだよね。」

「そうだったのか。去年は行かなかったのか?」

「うん。去年は食堂も営業してたから。でも、常連のみんながたくさん買ってきてくれて、いろんなもの食べたんだよ。」


去年の話をすれば、「お互いにこの街での初めての祭りだな」とセスが笑う。


会場に着けば、ウインナーや肉串、フルーツジュースなんかも売っていて、賑わっていた。


お祭り限定のハンドメイドのお店なんかも出店していて、楽しくなる。


「どこから回ろうか?迷っちゃうね。」

「お店は逃げないから、あそこのお店からゆっくり回ろっか。」


少し興奮気味の私の手をはぐれないようにと繋いで、エスコートしてくれる。


まず初めに向かったお店には、カラフルなお菓子が所狭しと並んでいた。


「あら、ステラちゃんとセスじゃない。焼きたてなの。食べて行かない?」


店を出していたのは、お菓子のお店をやっているお母さんだった。


「ステラちゃん!これ、私も手伝ったんだよ!」

「まあすごい、上手だね。じゃあ、これをもらってもいいですか?」

「もちろん!」


お母さんの娘がすごいでしょと言わんばかりの表情でクッキーを渡してくれたので、ありがたくそれを買わせてもらうことにした。


「今日は俺に払わせて。」

「え、でも・・・」

「いいから」


お金を払おうとしたらセスに止められてしまった。

短い付き合いでも、セスが頑固で、こうなってしまったら諦めるしかないと知っているので、お言葉に甘える。


「ありがとう。」

「どういたしまして」


お母さんと娘ちゃんにもお礼を言って、近くのベンチに座って買ったばかりのクッキーを食べる。


焼きたてで、まだ熱を持っているそれは、口の中に入れるとふわっと崩れ、とてもおいしかった。


「美味しいです!セスも食べてみて」

「ん。確かにうまいな」


確かに、食べてみてとは言ったが、私が持っていたクッキーをそのまま食べるとは思わず、赤くなる。


「ステラ、赤くなってて可愛い。」

「なっ。誰のせいだと!」

「俺だね。ごめんね?」


確信犯すぎて怒る気にもなれなくなってしまった。

いつもは優しく紳士なセスだけど、時々からかってくるいたずらっ子な一面を隠し持っている。

でもそんなところにも好感を持ってしまう私は重症なのかもしれない。


「さあ、他にも美味しそうなお店いっぱいあるから、行こうか。」

「もちろん!目指せ全制覇!」


その後も、フルーツジュースや肉串、焼きそばなんかも2人でシェアしながらお祭りを楽しんだ。


「これ、ステラに似合いそう。」


お祭り限定のハンドメイドショップでセスが見せてきたのは深い青色の色ガラスがセンターにあしらわれた上品なネックレス。


「可愛い。似合うかな?」

「似合うよ。付けてあげるから後ろ向いて。」


言われた通りに後ろを向けば、優しくネックレスをつけられる。


「うん。よく似合ってる。すいません、これください。」

「あいよ。あれステラちゃん!いいね、似合ってるよ。」

「ありがとうございます。」


たまに食堂でも見かけるおばあちゃんで、私を見れば首元で光るネックレスに気づいて褒めてくれる。


セスから初めてもらった贈り物。


「ステラ、打ち上げ花火、あの丘の上から見ないか?」


そうセスが指すのは、コメット・リリーが一面に咲くあの丘。


「うん。いいよ」


今から移動すれば、ちょうど花火が上がる頃には丘に着く。

2人で丘に続く道を進んでいく。


何やらセスが緊張していて、それに釣られて私まで緊張し始める。


「ネックレスありがとうね。大切にする。」

「ああ、ありがとう。」


なんてことない会話をしながら歩いていれば、ようやく丘に着いた。


あたりはすっかり暗くなり、下の方に見えるお祭り会場だけが明るく輝いていた。


「そろそろだな。」


2人で星が輝く空を見上げていれば、小さくヒューという音が聞こえ、夜空に大輪の花が咲く。


「わあ、綺麗・・・」


星が輝く夜空に色とりどりの花が咲く光景を、私は忘れることがないんじゃないかと思う。






隣で花火をキラキラした瞳で楽しむステラは、いつもにも増して魅力が増して見える。


高めの位置で一本にまとめてる髪のサイドはいつもと違い、アレンジされていて可愛いし、お気に入りだと言っていたワンピースもとても似合っている。


「ステラ。」

「ん?」


名前を呼べば振り返ってくれる君に、何から伝えようか、頭の中を整理する。


「ステラ、好きだよ」


口をついて出たその言葉は、紛れもない本音で、焦ることなく真っ直ぐにステラを見る。

少しおどおどしながら赤くなるステラが可愛くて、自然と笑みが溢れ出す。


「私も、好きだよ。セスのこと」


ステラから呼ばれた名前に少しだけ眉を困らせれば、案の定ステラは首を傾げる。


「聞いてくれる?俺のこと。」


ステラが頷いてくれたのを確認し、本当の髪色を隠していたウィッグをとって、この街に来た本当の理由を話し始めた。


自分がこの国の王太子、シリウス・セレスティアルで、みちしるべで見た女性を探して国中をまわっていたことも。

この丘で君が1人楽しく踊っているところを見てみちしるべが示していたのが君だと気づいたことも。


「でも、勘違いだけはしないでほしいんだ。確かに、君に出会うきっかけになったのはみちしるべがあったからだ。でも、俺は、君のすぐに赤くなるウブなところや、街中の人たちから愛される君の愛嬌、俺自身をまっすぐ見つめてくれる君の瞳に惚れたんだ。」


「みちしるべなんて今はどうでもいい。俺は、王になった時に、ステラに横に立ってほしいんだよ。」


話終わるまで静かに話を聞いてくれていたステラが、意を決して言葉を発してくれた。









驚いた。

でもどこか納得した。


セスは、貴族の三男坊で家族は放任主義だから国中を回って旅をしていると言っていた。

でも、思い返せば、彼の纏う雰囲気までは隠しきれず、細かな所作から高貴な身分が滲み出ていた。


シリウス殿下は全てを話してくれた。

そして、王になる時に隣にいてほしいと、そう言ってくれた。

かつての婚約者が言ってはくれなかった言葉だ。


ここに来て、自分だけ何も話さないのは間違っている気がする。

でも、言ってしまって、この関係が終わるのも嫌だ。


でも、きっと彼は受け止めてくれる。そんな気がしたから、わたしは意を決して話し始めた。


「私の本当の名前は、ステラ・ベルン。隣国、テルターニャ王国のベルン公爵家の長女で、元、王太子の婚約者です。」


彼がどんな顔をしてこちらを見ているのか、怖くて確認はできない。


でも、私の次の言葉を待ってくれている。そんなふうに感じた。


「小さい頃から、両親からの愛を感じたことはなくて、ずっと、乳母だけが私の家族だった。でも、妹が生まれて、始めは仲が良かったとは思うんだけど、いつしかどんどん嫌われていっちゃって。」


「王太子の婚約者に選ばれたときは、嬉しかった。初めて家族に認めてもらえると思った。新しい家族ができると思った。だからこそ、厳しい王太子妃教育も耐えられた。でも、ダメだった。」


「すべて、妹に奪われた。妹は私にいじめられてると嘘をついて、国外追放にしたくらい、私のことが嫌いだったみたい。『常に、どんな時でも優しさを忘れてはいけませんよ』大好きな乳母のお言い付けを頑張って守っていたはずなんだけど、どこかで間違ってしまったみたい。」


祖国や家族との関わりで流す涙なんて、とうに枯れ果てたと思っていたが、一粒の涙が頬を滑って落ちていく。


「泣かないで。ステラ。こっちを向いて」


シリウス殿下が優しく涙を拭ってくれる。


そこでようやく、怖くて見れなかった彼の方に目を向けた。


「ステラは、もう、王太子の婚約者はいや?俺との結婚は、嫌?」


そう問いかける彼の瞳は、ひどく優しかった。


「肩書なんてどうでもいい。私は、あなただから好きになった。初めて、恋をした。」

「俺を好きでいてくれるならそれでいいよ。結婚しよう。ステラ。」


とまることなく流れ続ける涙でぐしゃぐしゃな顔のまま精一杯自分の気持ちを言葉にして伝えれば、彼は優しく包み込んでくれる。


「隣国の王太子の元婚約者があなたの婚約者になって、迷惑をかけてしまうかもよ?」

「迷惑なんて思わないよ。それに、この国ではみちしるべが大きな意味を持つからね。大丈夫。安心して。俺が絶対に守るから。」


彼の優しい声に、心から安心させられる。


泣き疲れて意識が落ちそうになるが、落ちる前に伝えたい言葉があった。


「シリウス、大好きです。」









◇◇◇



一年後


王都では盛大に王太子殿下と王太子妃の結婚式が催され、招待客の中には、星くず食堂の女将さんの姿もあったらしい。



その後も、幸せな家庭を築き、2人の王子と2人の王女というきら星に恵まれることになる。


ほら、今日も王城に小さな星の煌めきが輝いている。

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