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[愛の形、孤独の形]  作者: 情緒不安定
『心と心が通じ合う』
17/30

#16『馬鹿と鋏は使いよう』

オブシディアンは藪蘭が居る囲炉裏の部屋に向かうと、囲炉裏の傍に座り、文目にまつりごとの社での出来事を伝えた。


「次私に嘘ついたら、脱走しないように下駄を燃やす事になるからな。」


「はい.......」


「まぁ、これに懲りてちゃんと鍛錬してくれるんなら、今回の事は水に流してやってもいい。」


「あの......」


「なんだ」


「俺、アイツに勝ちたいです」


「その為にお前を鍛えるんだろ?あ、そういや名前を聞いて無かったな。」


『......オブシディアンだ。』


「オブシディアン......この辺じゃ聞かない名前だな。まぁいい。オブシディアン、今話してくれた、妖刀を持っている奴の名前、一応もう一度聞いてもいいか?」


佐久巳灰礬(さぐみかいばん)と名乗っていた。』


「佐久巳、な。」


「知ってるんです?」


「私の夫が昔渦律組って組作っててな。島の治安を守る目的で作られたんだが、その中に佐久巳八重(さぐみやえ)って名前の奴がいてな。話を聞く限り、そいつの刀を持ってたみたいだな。私も見た事がある。真っ赤な2つの刃はまるで、妖怪「大百足」の牙を連想させる。藪蘭の父親も、渦律組に居た金緑仏桑(かなみどりぶっそう)ってんだ。何の因果か、灰礬は藪蘭を見るなり興奮した様子で戦いを挑んできたと。」


『あぁ。』


「そんで、オブシディアンだったか。あんた、神子を探してるんだったな。神子の居場所を、灰礬は知ってるようだったと。だが神子はとっくに亡くなってるし、墓もあんたたちが居た所に建ってる。まぁとりあえず、そいつもこいつのモチベになってくれたんなら、最終的に良かったのかもねぇ。そうと決まれば、早速明日から猛特訓と行こうじゃないか。」


「お手柔らかに......」


「んでオブシディアン、道場破りの件頼めるかい?」


『道場破りって、道場の中の奴から頼まれるような事なのか?』


「まぁ、正確には藪蘭の特訓に付き合ってくれってこった。もちろんタダとは言わねぇ。礼も奮発するよ。」


『礼はいい。目指す方向は一緒だ。』


「そうかい。まぁとりあえず頼んだよ。あとは......あんた、何処に住んでんだい?」


『特に住む場所は無い。』


「そりゃ宿無しって事かい!?世話になったんだ、うちに泊まっていきな。」


その日はそのまま道場に泊まり、外は雨音と暗闇に包まれた。食事も勧められたが、オブシディアンの身体にはその必要は無い。貴重な資源を無駄使いはさせられないと、テキトーに誤魔化して断った。



〈翌日、渦律道場、剣道場〉



翌日、オブシディアンが剣道場へ向かうと、文目、藪蘭の他に、少女の姿があった。


「おぉ、起きたな。」


正確には寝たふりである。オブシディアンの身体は食事も睡眠も必要ない。と言うより、睡眠に関しては、刻動の街での事がどうしても気がかりで、寝るに寝れなかったからだ。


「オブシディアン、紹介する。こいつはうちの貴重な門下生、尖晶(せんしょう)だ。尖晶、訳あって藪蘭の特訓に着き合わせてる、オブシディアンだ。」


「よろしくおねがいします。」


『あぁ......』


「なんだい、人見知りなのかい?」


『まぁ......話そうと思えば話せますが』


「安心しろ、あんまりかかわる事は無さそうだからな。」


『......』


「まぁとりあえず、オブシディアンは藪蘭と一回やってみてくれ。」


「はい?」


遠くで用具の準備をしていた藪蘭が、いつの間にか近くに居た。


「妖刀を使っての鍛錬だ。尖晶、今日は面白いもんが見れるぞ」


「妖刀?」


「まぁ、見ればわかる。見ればな。」


なんやかんやあってオブシディアンと藪蘭は広い空間に向かい合い、藪蘭は鎌鼬を構えた


『......行くぞ。』


「よろしくお願いします。」


オブシディアンも、腕から刃を形成する。


「ふむ......面白いな、」


両者、武器を構えて―――


「はぁっ!!」


藪蘭は風を発生させながら、その推進力を使い斬りかかる。オブシディアンはその刃を直接受け止めると、そのまま藪蘭が吹き飛ばそうと起こした風を横に受け流す。


「文目さん、あれは?」


「藪蘭が持ってるのはうちの倉庫の奥に眠らせていた妖刀だ。それをあいつが見つけて、鍛冶屋で錆び取りしてたらしい。そこからなんだかんだあってオブシディアンと出会い、オブシディアンに同行した先で妖刀を目覚めさせた。妖刀ってのは神子石ってので出来てる。聞いた事あるか?」


「いえ、知りません。」


「簡単に言えば、刀に魂が宿ってる。正確に言えば、魂の器が出来て、そこに人間の意思を注ぐことで、その者の潜在的な力を引き出す事が出来る。あの刀は前の持ち主の魂が、残留意思を残し、今の姿になった。旧友との再会か、はたまた宿敵との再開か。」


2人は互いに刃を振るう。そんな中、文目は2人に向かって風の音にかき消されない程度に大声を上げる。


「あんまり道場に傷付けんなよ!!それと!!力ずくで振るうばかりじゃ駄目だ!!頭を使え!!!!」


「そんな事言われたって!!どうしろと!!」


「だからそれを考えろ!!!!」


文目の意図を察したのか、オブシディアンは灰礬との戦いを思い出し、藪蘭の風圧をそのまま弾いて間合いから遠ざける。藪蘭は再び何度かオブシディアンに接近しようと試みるが、結果は同じだった。


『頭を使え。お前も人間だろ。その力の活かし方を考えてみろ。』


「そう言われたって、全く分かんねぇ!!」


『じゃあ1つ聞く。なんで俺はお前の間合いから遠ざかる?』


「なんでって......あぁ、そうか!!」


藪蘭は刀の構え方を変える。一度後退し、道場の柱に風をぶつけると、その反動でオブシディアンに急接近した。オブシディアンは姿勢を低くすると、藪蘭と居合切りに持ち込んだ。


「はぁっ!!!!」


少しの沈黙の後、オブシディアンの刃にヒビが入った。


「あっ、すみません......」


『心配するな。』


欠けたはずの刃は、見る見るうちに再生し、先程よりも少し大きな刃になった。


『さぁ、続けろ。』


「なっ、はい!!」


藪蘭はつむじ風を推進力に変え、オブシディアンに機敏な動きで立て続けに刃を振るう。


「応用もばっちりになったな。あとは.....」


内側に向いていたつむじ風が外側に向き始めた事により、道場が少し揺れたように感じた。


「戸を開けよう。風を外に逃がすぞ。」


「はい。」


文目と尖晶は風の直撃を避けながら、戸を外して行った。相も変わらず攻防は続く。


「ふぅ......馬鹿と鋏はなんとやら、まぁ、あいつは馬鹿と言うより、ポンコツだがな。」


「聞こえてますよ!!!!」


「おっといけね。」


藪蘭の動きがどんどん速く、研ぎ澄まされて行く。やがてオブシディアンがその刃を防いだかに思えた時、藪蘭の刃はオブシディアンの首元にあった。


「はぁ......はぁ......」


「そこまで。」


『悪くなかったぞ。』


「あぁ。まさかたった1日でここまでやるとはな。オブシディアンもやるじゃねぇか。どこでそんなの習ったんだ?」


『特に師匠は居ない。生ま......』


「うま?」


オブシディアンは口から出かかった言葉を飲み込む。


『......馬に乗った騎士を相手にした事があるくらいだ。』


「乗馬歩兵を仕留めた事があるのか、やるな。」


馬と言うより、馬を肉食にして強靭な尻尾と爪、羽を生やした化け物だ。


「とにかく、一旦これでやってみるか。例の佐久巳灰礬とやら、どこに居るんだ?」


「森の中に消えて行ったので、詳しい場所は......」


「なんだ、随分開放的な所だな。」


「なっ!?なんでここに居る!?」


噂をすれば、その人はそこに居た。


「へぇ、あんたが噂の。」


「そっちは俺の推測が間違いじゃなけりゃ、珪灰(けいかい)だな?」


「名は文目だ。旦那の性を継いだんだ。」


「そうかい。おい藪蘭!随分自信に満ちた目してんな。明日まつりごとの社に来い。相手してやる。」


「臨むところだ!」


「へッ、じゃあ伝えたからな。遅刻したらこの道場ごとズタズタに刻んでやる。」


「おい聞いたか藪蘭、遅刻したらズタズタに刻むぞ。」


「分かってますから2人がかりで圧かけないでください。」


灰礬は伝える事を伝えると、そのまま塀を飛び越えどこかに消えて行った。


「さてと、今日はひとまず片して終わるか。」


「そうですね。」


一同は戸を戻し、用具を片すと、その日やる事を終えた。


  To be continued.

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