私の当たり前 sideアレクセイ
今回初めてのアレクセイsideの話です。
騎士団見学の頃の話です。
――――――アレクセイ様が凄いんですよ。
君は私をそういってくれた。
私が凄いって言ってくれたんだ………
『さすが騎士団長の息子』
そういう褒め言葉が殆どだった。
勿論父上の息子であることは誇りであるし、そう言われるのは私としても誇らしかった。
でも、君はただ私を認めてくれたんだ。
………初めてだった。騎士団長の息子ではなく、ただ私を認めてくれた人。
それがこんなに嬉しい事だなんて知らなかった。
クリストファー殿下。クリスとは物心つく頃から一緒に過ごした。
そのクリスがリナティシア令嬢の誕生会の時に、ずいぶん気に掛けてる事に驚いたんだ。
クリスは同じ年頃の令嬢に対して少し冷めてる。
表面はとても優しく穏やかに接して居るけど、実際は全く心は動いていないし、煩わしく思ってる。
だけど、リナティシア令嬢は違った。
初対面の筈なのにとても大切にしているのが解った。
………だから不思議で、少し気になってたんだ。
リナティシア・シュトーレンご令嬢。父親のシッキム・シュトーレン宰相は凄く頭も切れるし、魔力の腕もかなり卓越している人だ。
貴族社会は大きく2つに別れると私は思っている。
自己の欲にしか目が行かず全てが自分の欲を満たす道具か、駒としか思っていない腐った貴族と、自分の正義を信じ貫こうと己を律し国のために身を捧げる人と。
シッキム・シュトーレン宰相はまさしく後者の貴族だろう。
だが、シュトーレン家第3子のリナティシア・シュトーレンご令嬢は魔力も無い、精霊の加護も受けていない令嬢と聞いていて周りからは出来損ないと言われているのを聞いたことがある。
だが、蓋を開けば彼女は至高の存在だった。
「アレクセイ様!私なんて、なんて言ってはダメです!
アレクセイ様が何時もしっかり鍛えているからこそ、しっかり筋肉がついているんじゃありませんか!!
家柄やお金では筋肉は買えません。努力しなければ筋肉はつかないんですよ。」
彼女がちょっと頬を膨らませて可愛くそう言った時、正直最初は頭がついていかなかった。
………えっ?なに言って………。
………でも………言われてみると確かに、筋肉はお金では買えない。そんなこと考えた事もなかった。私は騎士団長の息子だし、出来て当たり前鍛えて当たり前だった。
でも彼女は努力しないと筋肉はつかないと………
そっか、そうなんだ。確かに自分が鍛えないと筋肉はつかないよな。
爵位が高くたって、お金があったって身体は鍛えられない。
「………ふっ、あははっ。」
そんなこと初めて言われた。本当に考えた事もなかったよ。
「家柄やお金で筋肉が買えないって、……ははっ」
とにかく嬉しかった!自分が当たり前だったことを、私の努力でそうなったんだと言ってくれた事がこんなに嬉しいなんて。そう、誰かに自分の頑張りが認められたことがこんなに嬉しいなんて、今まで知らなかった。
「だってそうでしょう?国王陛下だってお金を払ったからって筋肉は買えないわ。
アレクセイ様の筋肉はアレクセイ様自身が努力して手に入れたものだわ。
だからアレクセイ様が凄いんですよ。」
何時も周りが言うことは、さすが騎士団長の息子。自分は騎士団長の息子だから凄いんだと。
何時も父上に恥をかかせないように、父上が褒められるように頑張って鍛練してきた。
でも君は、努力をしている私が凄いと言ってくれるんだね。
こんな風に自然に笑うなんてあったかな?彼女が凄く自然に言ってくれるから。お世辞でもなんでもなくただ純粋に言ってくれるから。
少し膨れながら私を褒めてくれる君が凄く可愛くて。
こんなキラキラ輝いてる、こんな可愛い存在。きっとこの世界に君1人だけだね。
「ありがとう。
確かにそうだね。
それにしても、リナティシア令嬢の発想がなかなか普通のご令嬢には出てこない発想ですね。」
ありがとう、今初めて満たされるって気持ちが解った。私にそんな気持ちを教えてくれてありがとう。
「ふふっ」
そんな私に君は女神のような優しい笑顔をくれて、本当に気持ちが追い付かないよ。
どうしよう、本当に自分の気持ちが自分で止められない。
私はどうしてしまったんだろう。でも、それがまた、こんなに幸せなんて。
「あー、アレクセイ様!
私達明日は一緒に原始の森に行くわけですし、今の呼び方では呼びづらいでしょうから、どうぞ私の事はリナとお呼びください。」
えっ………君の名前を愛称で呼ぶ事を私に許してくれるの?本当にそう呼んでいいの?
「えっ………あ、はい。
ありがとうございます。
ではリナ様と呼ばせていただきます。」
「ちっがーーーう!
私達同い年ですし、様なんて要りません。
ただのリナとお呼びください。
私は今までほとんど家から出ることもなかったし、是非友達になって頂ければ嬉しいです。」
………君はまたそんな嬉しいことを言ってくれる。
顔がほてってくる。なんだろうこれ。胸も凄くドキドキして、私は大丈夫だろうか。
「…………リナ。」
凄い。名前を口にしただけで全身が震える。私はどうかしてしまったようだ。
「はい!」
「では、私の事もアレクとお呼びください。」
「はい、アレク。
アレク、明日は宜しくお願いしますね。」
彼女が私を愛称で呼んでくれる。他にも私を愛称で呼ぶ人は沢山いるけど、全然違う。君だけが特別みたいだ。
「はい、明日はリナの事を必ず守ります。
守らせてください!」
精霊達の愛し子。
全ての精霊達に愛される存在。
でも、彼女は愛されているだけじゃなく、愛する人でもあった。
精霊も人も国も世界も。全てを愛してくれている。
この世界が綺麗なだけの世界なら良かったけど、そんな筈がない。
君の笑顔が好きだよ。
君の歌声が好きだよ。
そんな君を守りたい。
クリス以外で初めて守りたいと強く思った人なんだ。
自分はまだまだだ。これからもっと強くなる。
『さすが騎士団長の息子』
ではなく
『さすがアレクセイ様』
と言われるようになってみせる。誰より強くなって、この先何があっても必ず私がリナを守って見せる。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
アレクセイまだ7歳で恋とは自覚のない気持ちですが、これからどんどんこの気持ちが育って自覚いくといいです!
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