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転生先で愛を求む  作者: もろ刃
幼児期
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第4話『逃亡者』


 あれから数日俺は自己愛の鍛錬を続けた。

 その中で自己治癒だけがどうしても出来なかった。

 詠唱や自己愛を流し込むイメージを変えたりしたのだがどれも上手くい気配がなく、行き詰まっている。


 そこで俺は最終手段に出ることにした。

 本当は自分で出来るようになりたかったが仕方がない。

 諦めることも時には重要だーー


「それで、僕はどうすれば出来るようになりますか?」


 母に直接教えてもらうことにしたのだ。

 上目遣いで頼んだら二つ返事で了承してくれた。

 

「えっとねー、自己治癒をする時どんなふうにやってる?」


「えっと、自己愛(ナルシズム)が血管をつたって傷口に流れ込むイメージをしてやってるよ」


「そうなのね・・じゃあそのイメージをイジっちゃいましょう。まず自己愛で傷口の入り口を塞いで。それから流し込んでみて」


「うん、分かった」


 自分の腕にナイフで切り傷を作り、言われた通りやってみる。

 俺はまず絆創膏をイメージしそれで傷口を塞ぐ、そして自己愛を流し込む。

・・・・できた、こんなに簡単だったとは。


「よし!」


 しかしそういうことか、今までは傷口から自己愛が逃げてしまっていたということだな。


「すごいわアミ!本当にできるなんて、みんな一回じゃ出来ないのよ。もう!うちの子天才だわ」


 それもそうだろう。


 恐らくこの世界には傷を何かで覆うという概念がないのだと思う。 

 現にこの世界へ来てから一度も絆創膏や包帯の類を見ていない。


「母さん・・」


「ん?なあに」


「・・いや、やっぱ良いや、教えてくれてありがとう」


 ついでに無詠唱の事を聞こうと思ったのだが、どうせなら自分で習得したいと考え直し言葉を飲み込んだ。

 暇つぶしにもなるしね。


「えーなによ、気になるじゃない、ママに隠し事なんてかなしいわ、しくしく」


 わざとらしく泣き真似をし訴えかける


「やめてよ母さん、まだやる事あるんでしょ。やって来なよ」


「もう!分かったわよ」


 ふくれっ面で言い歩き去っていく。


「ママ、本当に行っちゃうわよ」


「いいよ、早く戻りなよ」


 このやり取りは姿が見えなくなるまで繰り返された。


 そして俺は鍛錬に母は家事に戻っていったーー




ールティア領王都ー


 王都は人々が騒々しく動き回っていた。

 

「いたか?!」 「いえ、こっちにはいません」


「そうか、見つけたら必ず生け捕りにしろ!」


「はい、承知しました!」


 そういうと偉そうな男は捜索に戻っていった。


 残された男は探している人物がいるであろう隠し扉に言い放つ。


「姫さま、みーつけた」


「・・・見つかっちゃったー、ここは見つからないと思ったのにな、えへへ」


 満面の笑みを作る少女、彼女こそが探している人物、この国の王女である。

 いや今は元王女と言った方が正しいか。


(可哀想な子だ。かくれんぼとでも思っているのか、、呑気なもんだ)


 だが悪いな俺にもやらなきゃならない理由がある。


「いやー全然分からなかったですよ。さぁ、お父様の所へ向かいましょう」


「うん!」


 姫の手を引き王室へ向かうーーーー



「失礼します!ペンドルトン様、王女様を連れて参りました」


「入れ!」


 玉座の間の扉を開け中に入る


 そこには肥えた腹をさすり卑劣な笑みを浮かべる男がいた。


「元王女、フィラティア・アガペーを連れて参りました」


「うむ、よくやった褒めて遣わすぞ」


「ははっ、ありがたき幸せ」


 本当に気持ちの悪い男だ、自分では何もしない臆病者なくせに無駄に偉そうな態度をとる。


 こいつが王ならこの国も終わりだな、全て終わったらこの国から出て行こう。 


「どういう事なのペンドルトン!そこは父様の座る所ですよ、どきなさい」


 大嫌いな叔父へ警告する。


「すまないねフィラティア、でも君のお父様とお母様はもういないんだよ」


「いないってどういう事?答えなさい!」


「だからお前のお父様とお母様はもう死んでしまったのだよ」


「何を言ってるの?ふざけるのはやめてーーー


 ゴトッ


「それが証拠だ」


 投げ捨てられたのは父と母の生首だ。

 九歳の少女に見せて良いものではない、それが親のものであれば尚更だろう。


 しかしもう手遅れだ。


「・・・・お父様?お母様?何、これ・・・・ウッ・・・オ゛ェー・・・・」


 口から吐しゃ物がゴボゴボとあふれ出す。


 そりゃそうだ大人の俺でさえ吐きそうなほど醜怪なありさまだ、子供が我慢できるわけない。


「どうだフィラティア、それがお前の父と母だ。なんとも悍(おぞ)ましい」


「ウグッ・・パパ、ママ・・何で・・さっきまで一緒に・・私一人じゃなにも・・グッ・・・・」

 

 その先を口にするのは心が拒んだ、口にしてしまえば本当になにも出来なくなってしまうと感じたからだ。

 


「お父様、お母様・・私、一人でも大丈夫だよ・・だから・・・・だから見てて・・・・」


 抱きかかえた父と母に最後にそう伝える。

 本当は父に助けを求めたいだろう、母の胸の中で泣きわめきたいだろう。

 しかしもう二人はいない生き残るためには自分自身で何とかするしかないのだ。

 そう自分を奮い立たせ細い足で気丈に立つ。


「私はルティア領の王ヘイヴン・アガペーと王妃フィアラ・アガペーの娘フィラティア・アガペー!父と母の意思を継ぎ私がこの国の王になる!」


・・・・・・プッ、はははははははははは!

 

 そう宣言する彼女を周りの皆は嘲笑う。

 当然だ、それはよわい七歳の子供の妄言、女王という肩書を失った少女の戯言でしかないのだ。


「威勢を張るのはよいが、地位も力もない今のお前に従う愚かものは誰一人いないぞ」


「それでもです!私はお父様とお母さまが残したものを守らなければなりません」


「ははははは!本当に出来たお方だ。お前の父様と母様もさぞお喜びだろう、あの世でな」


「ふん!臆病者で愚鈍な弟を持ってお父様も憂(うれ)いているでしょうね」


「わしが愚鈍で臆病だと?大人しくしておれば、わしの妾にしてやろうと思うたが、気が変わった」


「あなたの妾になるぐらいなら死んだ方がマシだわ!オエッ、考えただけで反吐が出る」


「お前どれだけわしを愚弄すれば・・もうよい、望み通り死なせてやる、貴様らそいつを殺せ!」


 しかしその指示に従うものはいない。

 それもそうだろう、俺たちが聞いていたのはここに連れてくることだけだ。

 誰も子供を手にかけたくなど無いのだ。


「おい!早く殺せ!やらないと貴様ら全員死刑にするぞ!」


 その言葉でようやく一人また一人と動き出す。

 

 (殺さないと聞いたから、連れてきたのに、俺が殺したみたいになるじゃないか)


 そうこうしてるうちにフィラティアに複数の刃が切りかかる


(あーーもう!)


「姫さま!」


 刃が彼女に触れる直前その間に体を滑り込ませる


(なにしてんだ俺!あー痛い!痛い!)


 刃を全て背中で受け止める


「何してるの、イグニ!」


「何してるんですかね、裏切っておいて」


「え、裏切ったってどういうこと?」


「気づいてなかったのですか、姫様の父上にあなたのことを頼まれていたのですよ、私はそれを裏切りここに連れてきてしまった、報酬金に目がくれてね」


「でも今守ってくれたじゃない」


「・・ただの罪悪感ですよ、さてゆっくり話すのもここまでです、今から姫様を此処から逃がします」


「逃げるってどうやって、外も中も兵士でいっぱいですよ」


 彼女の言うとうり外にも中に兵士が待ち構えており、二人だけじゃどうしようも逃げられない。


「誰にも言ってませんが私の加護は対象のものや人をどこかに転送させることが出来るのです、場所は選べないので今まであまり使い道はありませんでしたが」


「それで逃げるってことね、早く逃げるわよ」


「姫様、この加護で自分自信を飛ばすことは出来ません、なので姫様だけで」


「ダメよ、じゃあ他の方法を」


「姫さま!方法はこれしかありません・・私はこの後処刑されるでしょう、なのであなたは死ぬ気生きてください」


「でも、でも!」


(俺は幸せ者だな、こんなに主君に思ってもらえるとは)


「我が神プラグマよ、愛をもってこの者を導きたまえ」


 詠唱後フィラティアを光の膜が包み込む。


「イグニ!此処から出しなさい!」


「お許しくださいフィラティア様・・最後に父上様と母上様からの言伝です。『ごめんね、愛してる』だそうです」


「ダメよ!許さない、私はーーーー


 彼女は必死に訴えかけるが発動した加護にそんな事は関係なく、彼女を何処かへ連れ去っていく。


(こんなとこで死ぬとは、まあちょっとカッコ良かったかな)


 残された男、イグニ・ルーヴエルは元女王フィラティア・アガペーを逃した罪として処刑された。



ーアルハトス共和国ー


「ふぅー、加護の扱いにもだいぶ慣れてきたな」


 母に加護の使い方を教わり一年の月日が経っていた。

 ちなみに無詠唱での発動は未だに出来ていない。


「今日はこれくらいにしておくか」


ドゴォォン!!!


 区切りがつき休みに入ろうとした時一筋の光と落雷に似た轟音が鳴り響いた。


(なんだ?何か落ちてきた、気になる、ちょっと見に行ってみよ)


 俺は好奇心に負け光が落ちたであろう、近くの山へと入っていく。


 落ちてきたものは案外すぐに見つかった、落ちてきた地面に大きなクレーターを作っていたからだ。


(あれは、人か?)


「おーい!大丈夫か?」


 呼びかけるがぴくりともしない。

 近くまでやってみると俺より歳が少し上の少女だった。


(子供、なんで一人で?)


 その少女は高そうな洋服をまとっており、整った顔に綺麗な金髪のかみをしていた。


(貴族の娘とかだろうか)

 

 俺はその子を家に連れて帰ることにした。

 なんか悪いことをしている気分だ。

 帰ったらまず母に見せようと、怪我もしているし。


 俺は体に自己強化を施し彼女を担いで家に向かったーー


 














 












 





 


 


 


 



 



 

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