第1章:二人とも転生しちゃった!!!
カイオ「荒木!」
カイオが荒木の花屋のドアを勢いよく押し開けた。
荒木紫鳥、30歳。現在は東京近郊で花屋を営んでいる。
荒木「カイオ、お前なあ、ドアを――」
カイオ「遮って はいはい、わかってるよ。でも今は大事な話があるんだ!」
カイオ・ネオシグマ、30歳。自称科学者で、IQは2008。研究のこと以外は一切ダメな男だ。
カイオ「時空を超える転送マシンを完成させたんだ、荒木! 多次元を移動できるマシンだぞ!!!」
荒木「ちょっと静かにしてくれないか。」
チリンチリンとベルが鳴る。白い髪の女性客が入ってきた。
白髪の女性「先に注文しておいた花を受け取りに来ました。」
荒木「白い菊の花束ですね?」
荒木は微笑みながらカウンターの下から白い菊の花束を取り出した。
荒木「デート、うまくいくといいですね。」
女性は花束を受け取り、会釈をして去っていった。ドアのベルが再びチリンチリンと鳴る。荒木はため息をつき、カウンターの後ろの木製の椅子に腰を下ろした。また一日が過ぎていく。
カイオ「お母さんが生きていたら、きっとこの店を気に入ってたよ。」
カイオが窓の外を見ながらつぶやく。窓の向こうでは、建物の陰に夕日が沈んでいくところだった。
カイオ「でも、そんな話は置いといて――くそっ、荒木、お前、今すぐ一緒に来てくれ!」
荒木「なぜだ?」
カイオ「さっきも言っただろ! 多次元転送ガンを完成させたんだ!」
カイオが青い銃を取り出す。
荒木「行かない。」
カイオ「え?」
荒木「行かないと言ったんだ。俺は行かない。」
カイオ「どもりながら で、でも! これは人類史上最大の発明だぞ! お前、多次元を旅する最初の人間になりたくないのか?」
荒木「なりたくない。」
カイオ「どれだけ時間をかけたと思ってるんだ?! 6年だぞ、荒木! 6年間、寝ずに食わずに、実験室が3回も爆破されかけたんだぞ――」
荒木「だからこそ、お前と一緒には行かないと言っているんだ。安全かどうかもわからないんだろうが。」
カイオは歯を食いしばり、銃を握りしめた。花屋の中を行ったり来たり歩き始め、蘭の鉢を蹴りそうになる。
カイオ「わかった、わかったよ……怖いんだな。わかるよ。でも考えてみろよ、荒木! 別の世界だぞ! 未知の文明! 見たこともない生物! 人類が一度も目にしたことのない花だって!」
荒木は眉をひそめた。「花」という言葉が何かに触れたようだった。しかし、すぐに首を振る。
荒木「明日は小野夫婦の結婚式に花を届けなきゃならないんだ。お前の頭のおかしい企てに付き合ってる暇はない。」
カイオ「頭がおかしい?! これを頭がおかしいって言うのか?!」
カイオは興奮して銃を振り回す。指が滑り、汗でテカテカしている――
ピッ
小さな音がした。
カイオ「……え?」
荒木「……何を押したんだ?」
二人は銃を見下ろす。銃口に青い円が渦を巻き始め、まばゆい光を放っている。花屋の中の空気が突然重くなり、花びらが震え始める。
カイオ「待てよ……俺、まだ押してないぞ! どうやら引き金が詰まって――」
光の門がカウンターの目の前で空間を裂いた。強い風が吸い込まれ、伝票が舞い散る。そして――
ブォーン
転送ゲートの中から巨大なトラックが飛び出してきた。
荒木「な――」
カイオ「うわ――」
ドカァン!!
花屋が爆発した。通り全体が揺れた。砂煙が立ち込める。
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カイオが目を開けると、自分は奇妙な紫色の花が咲く野原に寝転がっていた。空には月が二つ。角のあるウサギのような生物がカイオの頭をかじっている。
カイオ「……俺、トラックに轢かれて死んだのか?」
カイオ「……」
カイオ「はあっ!!!」
カイオが飛び起きると、目の前には見渡す限りの青い空、広大な緑の森、滝が流れ落ちる山々、そして空にはドラゴンが飛び、地面には六つの目を持つイタチのような生き物、さらには――
カイオ「スライム!」
カイオ「信じられない……俺は異世界に来たんだ……」
カイオ「それに、一人ぼっちだ。」
荒木「それはどうかな。」
カイオが落ち込んでいると、突然元気が戻った。
カイオ「荒木!」
カイオ「生きてたのか!」
荒木「あんな程度の衝撃で俺が死ぬと思ったのか?」
カイオ「うん。まあ、そうだな。」
荒木が前に歩み出て、目の前の光景を見渡す。少し驚いた様子だったが、すぐに落ち着きを取り戻して言った。
荒木「よし、戻ろう。」
カイオ「えーと……残念なことに…俺、壊しちゃったんだ。」
荒木「はあ。」
カイオ「事故を起こしたときに、あの銃が自壊したんだ。トラックが銃に衝突して、現実が歪んで、俺たちはここに飛ばされたってわけよ。」
荒木は無力な目でカイオを見つめ、背を向けて歩き出した。
カイオ「おい、どこ行くんだよ?!」
荒木「この山の下り道を探すんだ。」
カイオ「おい、待ってくれよ!」
第1章 終わり




