第1600話 夜のカロル部屋で混ぜ棒をクルクル
食事が終わったので、カロルと一緒に部屋に行って、 錬金釜の中身を混ぜ棒でクルクル回している。
「今回の薬草は、ヒソップ、アイアンウィード、アキチョウジね。効能は心身の鎮静、消炎、消化促進よ。あと、栗を少々」
「栗?」
「早生の栗を匂い付けにね、秋だし」
「秋だからしょうがないね」
うん、確かに栗の匂いがする薬液だな。
グールグル。
毎回毎回ぐるぐるやってたので、大概慣れた感じだけど、光魔力を込めていくと、やっぱりだんだん重くなるね。
ぐぬぬ。
ぐるぐる。
ああ、でも栗の実の匂いはモンブラン味があって良いよな。
私がぐるぐる回している間に、カロルは包丁を持って何かをトントンと切っている。
何の薬草かねえ。
ボワン、と黄色の煙が出て、薬液の粘度が急に下がった。
「出来たわね」
「良い匂い、秋の匂いね」
「二学期だからね」
新作聖女の湯の素をちょっと舐める。
おお、ほんのり甘くて後口が良いな。
「アンヌ、瓶詰めをお願い」
「かしこまりました」
アンヌさんが薬用の杓子で高級そうなガラス瓶に薬液をつめていく。
「新作の湯の素は明日からね」
「楽しみだね」
カロルが応接セットでお茶を出してくれた。
対面ではなくて、なぜ横に座るのだろうか。
まあ、そっちの方が親密な感じでいいんですけどね。
お茶を飲みながら、たわいの無い話をして楽しむ。
カロルが寄りかかってきて、こちらも自然と体重を預ける。
手と手を繋ぎ、思いあまってキスを交わす。
よし。
よしよし、この夜ではアダベルの介入はあるまい。
これでゆっくりとですね。
よしよし。
ピンポーン。
「……」
「……」
「夜にごめんなさい、同室の子が熱を出して苦しんでいるの。お薬を売ってください」
にゃろう、せっかくカロルと良い雰囲気になったと言うのに。
カロルが顔を振って立ち上がった。
ドアを開けて、病人の症状を聞いている。
あれだな、夏風邪だな。
あと、明日から学校なので、精神的なストレスかな。
しょうがない。
私も立ち上がってドア前に出た。
「あら、聖女さま」
「私が行ってキュア掛けてあげるよ」
「え、でも、お高いんでしょう?」
「銀貨三枚で」
「それはお安い」
女学生はポケットからお財布を出して、銀貨三枚を私にわたした。
「んじゃ、行ってくる」
「私も行くわ」
案内された部屋は三階の四人部屋であった。
下級貴族さんだな。
「トーラ、聖女さまが来て下さったわ、もう大丈夫よ」
「ハアハア」
なんだか、思ったより具合が悪いな。
来て良かったかも。
『オプチカルアナライズ』
ピピッ。
……うわあ、これは不味い。
「不味いの?」
「腎臓が破裂してる、急ごう『ハイヒール』」
うお、一発で治らないぞ。
これは来て良かった。
『ハイヒール』
よし、一応落ち着いた。
『ハイキュア』
腎臓破裂の余波の身体不良も治した。
トーラさんの顔色が良くなって、息も平静になってきた。
「あぶないあぶない、なんで腎臓が破裂?」
「ああ、お昼にトーラは落馬して、腰を打ったんですよ。平気だって言うから校医に掛からず、ほっといたのですけど」
「あー、内臓破裂は意外に重体になるまで元気なのよ」
「マコトが来てくれて良かったわ、私のキュアポーションだと、治ったように見えても、朝に冷たくなっていたかもしれなかったわ」
「よかったー、トーラ良かったねえ」
トーラさんは安らかに寝息を立てていた。
念の為にもう一度『オプチカルアナライズ』
ピッ。
うんうん、完治してるね。
「何かあったら私を呼びに来なさいね」
「はい、聖女さま、ありがとうございます」
私たちはエレベーターホールまで行った。
「なんか」
「なんか雰囲気が削がれたわ。また明日ね、カロル」
「そうね、マコト」
あれだ、また甘々な雰囲気を戻すのも大変なのだ。
中々仲が進展しないのだが、まあ良いよね、二年生までには、こう、ただれた関係になれるでありましょう。
肩を落として205号室に戻った。
「あれ、カロルとエロい事しなかったのか」
「なんだよ」
「いや、あの子が夏休み終わりだから、なんとかしないと、とか言ってたよ」
ああ、そうだったのか。
すんなりと甘々ムードに入れたわけだぜ。
よし、今から戻ってエロエロ行為をしよう。
と、思ったが、よけいな光魔法を使ったので、だるくて面倒臭い。
くそうくそう。
とふくれっ面でパジャマに着替えてベッドにハシゴで上がった。
今日は魔国まで行って疲れたぜ。
マメちゃんが影から出て来て、私の胸の上でちんと座った。
彼の背中を撫でながら、私の夏休み最後の夜は更けていくのであった。
おやすみなさい。
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