第1583話 夏休みが終わっていくのだ
庭園の東屋からは、走破してきた山塊が遠くにみえるね。
今年の夏は長くて沢山の思い出が出来たな。
前半はみんなで島にバカンスで、後半は徒歩で巡礼の旅だ。
夏が、終わっていくね。
ちょっと寂しい。
明日、みんなを拾って、蒼穹の覇者号で王都に戻る。
もうすぐ二学期だね。
派閥の集会所も大きくなるし、いろいろ変わっていきそうだ。
「もうすぐ二学期ね、秋もよろしくね」
「文化祭とか、魔法大会とかあるらしいね」
「アライド王国からメリンダ公爵令嬢が、ジーンからギュンター皇子が留学にくるわ。二人とも聖女派閥に入りたがると思うわよ」
「メリンダさんは良いけど、ギュンターはなあ、どうしたものか」
「ポッティンジャー派と繋がられても面倒臭いわよ」
私はお茶菓子のクッキーをポリポリと噛んだ。
「まあ、出たとこ勝負で」
「マコトらしいわね」
カロルはふんわりと笑った。
というか、二学期の大きい行事は、ポンコツ魔導戦艦をぶっ潰して部品を取って、ガドラガ基地に持って行って、飛空艇をレストアするのがあるなあ。
ビタリの人工聖女計画に介入するのは冬休みからだな。
二学期も、なにげにやる事が一杯だなあ。
きっと、ハゲもなんか余計な事をするだろうしな。
騎乗部でレースがあったら出てもいいなあ。
まあ、でも今は、過ぎ去ろうとしている夏の終わりを楽しもうか。
「マコトがファルンガルドに来てくれるなんて、思ってもいなかったわ」
「カロルの居るところに、私ありだよ」
「ふふふ、仲良しなのね」
「そうとも」
私とカロルはアップルトン一の仲良しだからな。
ふふふ、今晩こそは、一緒の部屋でさらにさらに仲良くなってやろうではないか。
むふふっ。
わくわくするなあ。
カロルの目をのぞき込む。
深い深い川の淵のように濃い緑色だね。
しずかに肩を寄せて、キスをする。
とくんとくんと心臓の音が聞こえる。
バッサバッサと羽ばたきの音がした。
カロルと私は黙って空を見上げた。
籠を背負った水色のドラゴンが降りて来ていた。
『マコトー!! みんなでカロルの領にきたぞーっ!』
「……」
「……」
騎士団の練兵場にアダベルは着地して、ボワンと子供モードに変身して駈け寄って来た。
籠からはわらわらと孤児たちが出て来た。
「エイダにマコトがファルンガルドに今日着くって聞いて、朝から半日掛けて飛んで来たよ! 会いたかったぞ」
「マコねえちゃん」
「マコトおねえちゃん」
「来たよ、来たよ、寂しかった~!」
「ここがファルンガルドなんですね、素晴らしい街です」
私は黙ってカロルと目を合わせた。
まあ、いつもの事だなあ。
アダベルと孤児のみんなも好きだから良いけどさ、良いけどさ。
「よく来たわねみんな、歓迎するわ」
「ここがカロルの街かあ、すごい綺麗だなあ」
「ナタリー、あなたも孤児院を卒業したら、この街で働くのよ」
「わあ、夢のようですっ」
「アンヌ、フリオに晩餐を、ええ」
「孤児と私で九人で来たぞ」
「九食増やすように伝えて、あと、寝室を三つね」
「かしこまりました」
アンヌさんが唐突に現れて去って行った。
アダベルがテーブルに出ていたクッキーをバリバリ食べた。
庭園で子供達が遊び始める。
メイドさんがお茶とクッキーのおかわりを持って来てくれた。
東屋のテーブルがティーカップで一杯になったよ。
「お茶、面白い味~」
「ハーブティーよ、体に良いの」
「クッキー美味しい-」
ワイワイ子供達が騒ぐので、カロルと私の甘々な雰囲気はなくなったが、活気がでて、これはこれで悪く無いね。
子供のお世話は慌ただしくも楽しい。
「じゃあ、まず、ファルンガルド大聖堂にみんなでお参りに行きましょう」
「おお、大聖堂か」
「大神殿より大きい?」
「さすがに小さいわよ」
子供達と一緒に大聖堂に参拝に行くこととなった。
領城の跳ね橋を通って外に出ると、普通にヒューイが鞍を置いて空から舞い降りてきた。
「「「「ヒューイ、ヒューイ」」」」
《みんな久しぶりだな》
綺麗に整ったファルンガルドの街をみんなで歩く。
ヒューイの上に子供が満載されて雑技団みたいになっているなあ。
道行く人達もニコニコと笑いながら見ている。
大聖堂に入ると、夕方近いのに参拝者は減ってないな。
「あら、マリー」
洗濯籠を抱えたアントンが通りかかった。
洗濯のバイト中らしい。
「マリーじゃないけどな、アントン」
「あら、子供が一杯」
「アップルトンの守護竜さまと、大神殿孤児院の一行だっ、洗濯娘」
「あら、アダベルさま」
「知ってるの、アントン」
「前は学園でうろうろしていたから、アダベルさまにはファンが多いのよ。アダベルさま、ファンの人が寂しがってましたよ」
「そうか、学園の生徒には沢山おやつを貰ったからな、また顔を出してみようではないか」
「ええ、おねがいしますね」
子供達と一緒に礼拝堂に入り、女神さまに参拝した。
「わあ、ここの女神さま、優しそうね」
「名工の手の彫像なのよ」
「ステンドグラスが綺麗ねえ」
やっぱりファルンガルド大聖堂は素晴らしい建築よね。
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