第1563話 ミルカタ中央教会発
朝起きてぐいっと背伸びをしてからパジャマを脱いで新しい下着を付けて修道服を着る。
ダルシーと共に洗濯室に行き、乾いた服を取り込んで台の上で綺麗に畳む。
むむ、やっぱりダルシーの方が畳むのが上手いな。
家事メイドのカリーナさんに、ダルシーもアンヌも洗濯は駄目駄目と言われていたが経験という物は凄い物だな。
ミラナとアントンもやってきて、二人で洗濯物を畳み、小袋にそれぞれ入れていた。
「誰の服か判るの?」
「おう」
「ええ、刺繍がありますから」
お? と思ったらダルシーが指さして教えてくれた。
私の修道服の袖にも『マリー』と刺繍があった。
なるほど。
下着にも刺繍があって、服が混ざらないようになっているらしい。
生活の知恵だなあ。
多人数で生活する教会ならではというか。
というか、それだけ衣料品が貴重なんだな。
大量生産前だしね。
ミラナとアントンは洗濯物を届けに行った、私たちは一足先に食堂へと向かう。
朝の食堂は活気があって良いね。
大きな教会だけはあって、巡礼団は私たちの他にも居た。
教会系じゃなくて、町内の集まりみたいな市民巡礼団だね。
王都の大神殿に向かうのかな。
ミラナとアントンが戻って来て、となりに座り、全員が揃った。
「日々の粮を女神に感謝します」
「「「「「日々の粮を女神に感謝します」」」」」
みんなで食事のご挨拶を斉唱していただくのである。
今日は焼いた黒パン、ハムエッグ、カップスープだね。
パクリ。
なかなか良い味わいであるね。
「本日はアイアンリンド往還に入り、昼食はクリアタの街のセンゲン教会で取ります。その後往還を進み、夕方までにアイアンリンド城内、アイアンリンド教会に行き、宿を取ります」
ああ、アイアンリンド教会というと、あの狂信者のリンドン師の居る教会か。
五体投地されると面倒くせえなあ。
まあ、ばれなきゃ大丈夫だろうけどね。
さて、アイアンリンドで一泊、そして中一日移動して、明後日にはファルンガルドに入れるね。
巡礼の旅ももうすぐ終わりだ。
平穏に終われば良いんだけど。
ミラナはどこで昇天するのか。
いまはなんか巡礼をエンジョイしておるが。
アントンも歩くことで何か掴んだのか、大人しくなってきたね。
教会で一生を過ごす、という運命を受け入れ始めたかな。
他に道が無いもんなあ。
あとは別の国に逃げて売女するしかねえよな。
教養があるからスラムから成り上がるのも不可能ではないんだが、いかんせん時間がかかるので、運が悪いと、途中でババアとなり、一巻の終わりだ。
教会で静かに暮らすのが一番無難よな。
ダルシーと厩舎に行き、ヒューイとクリスティーナに荷物を載せる。
マメちゃんを荷物に乗っけて、二頭を引いて行くと、教会の入り口で巡礼団が待っていてくれた。
「さあ、出発しますよ」
「「「「はい」」」」
巡礼団は香炉を振りながら御詠歌を歌い、行進する。
昨日までの山道ではなくて、平坦な道だから歩きやすいね。
ただ、ここの所、雨がないから街道から砂埃が立つね。
歩いて行くと、旅人の人が我々を拝んでくれる。
「平たい道は久しぶりだから歩きやすいよ」
「そうですわね」
「アントンはだいぶ歩くの慣れたね」
「それは、まあ、沢山歩きましたから」
「最初の頃はよろよろしてた」
「あ、あれは歩く靴では無かったからですわ」
アントンはそう言うと、自分のブーツをしげしげと見た。
結構汚れて傷が付いているけど、なんだか風格のような物もあるね。
「最初は旅が嫌で嫌で、逃げようかと思ってましたけど……、いまは結構楽しく思えてきましたの、不思議ですわね」
そう言って、アントンは静かに微笑んだ。
長距離を歩くのは自分を見つめ直すのに良いんだよね。
なんかアントンは変わりつつあるな。
女神の巡礼団のすごさよ。
「旅は楽しいなあ、アントニアさんとお友達になれたしなあ」
「あら、マリーさんより私ですの?」
「マリーは、まあ、血縁みたいな感じだからなー」
「まあ、そうだなー」
テイムしてるとどうしても身内感でるよな。
あと、思うのだが、私がテイムすると、ほがらかな阿呆となるのか? 知らんけど。
ペスとかもそうだったしなあ。
大きい渓谷があって、長い長い吊り橋が架かっていた。
馬車も通れる大型吊り橋だな。
「おおお、ここを通るのか」
「ちょっと揺れますわね」
ジョルジュは来ないだろうな。
サーチ!
カアアアアアン!
居ない……。
あれ、前方を馬で行ってるな。
先回りする感じか?
どこかで待ち伏せか?
「どうした、マリー」
「何でも無いよ、おねえちゃんっ」
「そうかそうか」
にゅふふふふと笑うのはやめなさいよねダルシー。
しかしジョルジュの動向が気になるな。
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