白井の過去
家の隣に3つ上の兄ちゃんがいた。実際に血が繋がっているわけではないけど、兄弟のように仲が良かった。
小学校の頃は兄ちゃん達と公園とかに集まって遊んでいた。
兄ちゃんが中学に入ると、忙しいからか会える機会減った。それでも定期的に遊んでいた。
そして兄ちゃんが高校生に、俺が中学生になると、お互いに忙しくなって時間を合わせられずに殆ど遊べていなかった。
とはいっても連絡は結構取っていて、よく互いの近況について話していた。だから疎遠ではなかった。
しかし俺と兄ちゃんが三年生になった頃、俺たちは連絡を交わさなくなった。兄ちゃんからの連絡が止まったんだ。
最初は受験だからかなと思っていた。兄ちゃんも忙しいし俺も受験生だから気遣ったのかなと思っていた。
しかし実際のところはそうじゃなかったんだ。
とある日ふと窓の外を見てみると兄ちゃんが学校から帰ってきていた。
思わず声をかけようとしたがいつもと様子が違い、思いとどまった。
その日から度々兄ちゃんが帰ってくるのを見ていた。
少しずつ、少しずつ兄ちゃんの様子が悪い方へ、悪い方へ行っているようにも見えた。
兄ちゃんを見かけるようになって一月くらい経った頃、もはや昔の明るく優しかった兄ちゃんの面影は無かった。
だけど俺は何も言えなかった。何も出来なかった。
連絡が止まったメッセージアプリにコメントを打てなかった。
怖かったんだ。今の兄ちゃんが悪い方へ向かっていることを認めるのが。
聞きたくなかった。兄ちゃんの悪い話を。
実際に考えていたわけじゃないけど、無意識にそう思っていたんだ。今ならわかる。
そんな日々を過ごしていると兄ちゃんがいつもの時間に帰ってこなくなった。
あの高校に行っていないんだろう。
そしてそれから一月ほど経った後、兄ちゃんは死んだ。
俺は泣いた。気付いていたのに何も出来なかった自分が悔しかった。
その後、兄ちゃんのお母さんが俺に兄ちゃんのスマホに残ったメモをみせてくれた。
そこには俺に送ろうとしたけど送れなかったであろう言葉が綴られていた。
そこには俺に全てを打ち明ける言葉があった。
一切俺たちには弱いところを見せず、カッコいいままでいてくれた兄ちゃんの弱音があった。
それを見た俺は悔しかった。あの兄ちゃんにこんな言葉を言わせる迄に追い詰めた人がいること。そして俺は兄ちゃんの様子に気付きつつも何もしなかった自分自身に。
そして俺は決心をした。
絶対に復讐をしてやると。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
このお話はこれで一旦終わりとさせていただきます。
第2章の予定は現在ありませんがもしかしたら書くかもしれません。




