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『日記的な雰囲気で……』  作者: Jupi・mama
第一章 2021年の5月まで
2/119

クリスマスツリーの思いで

書き方の練習用です。


主人公『岡崎隆夫』の人生。

父の経営していた、不動産会社の倒産。

結婚・離婚・結婚。

美歌の子供時代のエピソード。

ボーカリストになりたい、美歌の家出。

二度目の妻(秋子)のあっけない死。



 「クリスマスツリーの思いで」 


  『登 場 人 物』 


 岡崎隆夫 (40〜60)

 岡崎真理子 (34) (旧姓・田中・離婚)

 岡崎秋子 (37〜54) 隆夫の妻・美歌の母

 岡崎美歌 (0〜17) 隆夫の娘

 山本冬美 (50) 美歌のピアノの先生

 木村麻子 (57) 隆夫の妹

 岡崎家親戚一同


 田中東吾 (80) 秋子の父

 田中真雄 (52) 秋子の弟

 田中家親戚一同

 岡崎不動産・取引先の人々

 葬儀に参加した人々



○岡崎家・外観

 JRの最寄り駅から十分ほど歩いた場所にあるが、幹線道路からぎりぎりで、車が二台すれ違えるほどの細い道へ曲がり、五軒目の家。玄関の電気が付いている。


○岡崎家・玄関

 玄関のカギを開け中に入る隆夫。


隆夫「あいつの靴とスーツケースか……」

 独り言を呟く隆夫。自分のスリッパを履く隆夫。



○同・リビング

 隆夫がリビングのドアを開ける。真理子が自分の椅子に座り、隆夫をちらりと見る。


真理子「今日は帰りが早かったのね」

 マグカップに入った最後の珈琲を飲みほしコトンとカップを置き、そう告げる真理子。


隆夫「あぁ……」

 黒い肩掛けの鞄を隣の椅子に置き、自分の椅子に座る隆夫。テーブルの真ん中に置いてある離婚届に、隆夫の視線が動く。


真理子「協議離婚でいいよね。隆夫はお金ないしね」

 隆夫から離婚届に視線を移す真理子。


隆夫「あぁ、言うことはない。自分の物は全部持ってけ」


真理子「あなたから貰った宝石の類も全部もらうからね」


隆夫「あぁ、構わない。現金はない。この家も借金の担保に入っている」

 真理子をぐっと見つめる隆夫。


真理子「とりあえず、実家に戻るからね」


隆夫「あぁ、玄関のカギも持ってけ、俺のいない間に荷物をまとめろ」


真理子「分かった。細かい話しはラインでね。それじゃね」

 自分の椅子から立ちあがる真理子。


隆夫「あぁ、分かった」

 リビングのドアから姿を消す真理子の後ろ姿を見る隆夫。しばらく離婚届を見つめる隆夫。立ち上がりキッチンへ向かう隆夫。



○同・二階の真理子の部屋

 自分の部屋へ入る真理子。スマホを取りだし電話をする真理子。


真理子の声「もしもし、私、隆夫に離婚届を渡したから迎えに来て」



○同・キッチン

 冷蔵庫から500の缶ビールを取り出し、その場でステイオンタブをピキッと開け、立ったまま半分ほど、ゴクゴクと一気に飲む隆夫。缶ビールを右手に持ち、リビングへ向かう隆夫。



○同・リビング

 テーブルの上に缶ビールを置いて、自分の椅子にドカッと座る隆夫。また、離婚届に視線を戻す隆夫。


隆夫の声「離婚届か……俺が役所に出すということか。あっけなかったな。ラインはスクリーンショットで全部保存しとくさ」

 残りの缶ビールを一気に飲み干す隆夫。


隆夫の声「俺も頑張っているのにな。今の物件がうまく運べば、この家を取り戻せるかもしれない。その前に役所だな。子供もできずに、好き勝手に生きる女とは、もうおさらばだ」


○(回想) クーリスツリー

 俺は夢を見たのかな? あるはずもないのに、公園で樅の木を探していた。その時に小さな女の子がすーっと俺に近づいて、小振りの木に飾り付けをしていて、手が届かないからと渡され、俺が先端の星をつけた途端に、イルミネーションが灯ったのだ。なぜ、そうなったのだろうか?


 ♪クリスマスにはツリーきらめきと輝きの力で暗い夜をも明るくしよう。少女は俺の手をとり、ツリーの周りををくるくると走り、その子の声が鈴の音のように俺の心を包み、ささくれた俺の気持ちを穏やかにしてくれた。


 その少女は俺のポケットに手を入れ、入っていた縄跳びで嬉しそうに縄跳びをしながら、雪の中に消えてしまった。縄跳びがなぜ、入っていたのだろうか。俺には分からなし、その少女の鈴の音のような声が、ずっと忘れられない。



○離婚・二年後の岡崎不動産(隆夫42歳)

 二年前に離婚届を出した後、八戸あるメゾネットタイプの物件の売却に成功してから、隆夫の仕事が順調に回復の兆しが見え、仕事が回り始める。



○離婚・三年後の岡崎家(隆夫43歳)

 岡崎不動産に、五年前から勤めていた田中秋子(38)と再婚をする。



○離婚・四年後の岡崎家 (隆夫44歳)

 秋子が第一子である女の子を六月一日に誕生させ、名前を美歌と名付ける。



○美歌の通っているピアノ教室 外観

 美歌が年中から通い始めたピアノ教室は、某マンションの五階にあり、岡崎家からも歩いて行ける距離で、音大を卒業してピアノ講師として長年勤めていたが、自宅の一室を防音素材ですっぽり囲い、毎週金曜日の四時から一時間半の個人レッスンを受けている。



○某小学校の門 (朝)

 隆夫は紺の背広を着て、秋子は春らしく明るいベージュ色のスーツを着込んで、美歌もデパートで入学式用の上下お揃いのピンク色の洋服を買ってもらい、小学校の入学式に出席するために、三人で並んで学校の門をくぐり抜ける。


   × × ×


 受付を済ませると、美歌は上級生の女の子の指導の下で、その場で別れることになり、隆夫と秋子は会場に入る。


   × × ×


 会場で、教師や参列者に拍手で迎えられるように、新一年生は、会場の外で三組まで一列に並んでいる。



○同・会場

秋子「美歌は二組だからもう少しね。デジカメの準備をするわね」

 バックから、二十センチほどの三脚が取り付けられた、デジカメを取り出す秋子。


隆夫「しっかり動画を撮ってくれよ。俺は美歌の姿を見ているからな」

 秋子の左隣に座っている隆夫は、上半身を会場の入り口に向け、頭を左右に動かし視界の確保をしながら、入場者を確認している。


秋子「分かってるって」

隆夫「二組の先頭が入ったぞ」

 その言葉を聞いて、右手でデジカメの三脚を持ち、腕を上げて後ろの画面を見つめる秋子。


秋子「美歌を見つけた。かわいい」

 左手でシャッターを押す秋子。



○二年後・ピアノ教室 (金・夕)

 秋子がマンションのエントランスでテンキーボタンを押している。


冬美の声「はい。どなたですか」


秋子「岡崎です。迎えに来ました。いつもありがとうございます」


冬美の声「あっ、岡崎さん、今からドアを開けますね」

 マンションのメインドアが開き、エレベーターヘ移動する秋子。上の矢印を押し、エレベーターに乗り込む秋子。



○同・田辺家の玄関の外

 エレベーターを出て歩き出した秋子は右に曲がり、二つ目の玄関のチャイムをそっと押す。



○同・田辺家の玄関の中

 冬美が靴を履き、ドアを開ける。美歌が自分の靴に足を入れる。


冬美「お迎えご苦労さまです。今日はね、残りの三十分を使い、ピアノに合わせて美歌ちゃんに、童謡を歌ってもらったのよ。いい声をしているのね」

 玄関を開けてすぐ話しかける冬美。


美歌「ママ、とっても楽しかったの」

 ニコニコと笑いながら話す美歌。


秋子「そうですか」

 喜んでいる美歌の顔を見る秋子。


冬美「今度から一時間のピアノの練習と、残りは歌わせてもいいかしら?」


秋子「あっ、はい。美歌が喜ぶなら、それでよろしくお願いします」

 冬美に軽くお辞儀をする秋子。


冬美「美歌ちゃん、よかったね。先生の言った通りでしょう」

 美歌の頭を軽くなでる冬美。


美歌「やったー。ママありがとう」


秋子「ピアノもしっかりと練習してね」


美歌「はい!」

 美歌の右手が秋子の左手を握る。


秋子・美歌「ありがとうございました」

 秋子の右手がドアノブを下に押して、二人は表に出る。



○岡崎家・美歌の誕生日 (前日)

 秋子は午前中早くに、曇り空の中でキャップを被り、病院で使用するようなビニールの手袋をして、三段の脚立を使い、庭にある桑の実を収穫して、形のいいのと悪いのを選別し、大きめのステンのザルでよく洗う秋子。


   × × ×


 形のいいのはケーキ用に冷蔵保存して、少し変なのはジャム用にするつもりで、ジッパーの付いたビニールに入れ冷凍する秋子。


   × × ×


 市販のカスピ海ヨーグルトをスプーンで山盛り二杯、熱湯消毒した珈琲のビンに入れ、上から牛乳を三百cc入れて二十回ほどかき混ぜて、常温保存する秋子。



○美歌の誕生日 (朝)

 六月一日、美歌の13歳の誕生日。秋子は美歌が学校に行ったので、朝から鼻歌を歌いながら、キッチンにいる。冷凍した桑の実を、ビニールの上からマッシャーで軽く押すと、中の軸の緑色が目立つので、お箸で取り除く秋子。


   × × ×


 ホーローの鍋の中に入れられたジャム用の桑の実は、上からキビで作られた粗糖を全体的に薄目にまぶす秋子。


   × × ×


 耐熱ガラスのボールの中で、たまごの白身を三個分、ハンドミキサーにかけメレンゲ状にして、黄味を一個、キビ砂糖を少し入れ、またハンドミキサーを回し、残りの黄味と砂糖を全部入れて攪拌する秋子。


   × × ×


 温めた牛乳の中にバターを入れ溶かし、横に置いてあるボールの中に少しずつ入れ混ぜ込んで、小麦粉を茶漉しでふるいにかけて軽く混ぜ、丸形のトレーに流し込み、トントンと空気抜きをする秋子。


   × × ×


 丸形トレーをオーブンに入れ、余熱なしで設定をして、百八十度で三十分のタイマーを設定しスイッチを押す秋子。


   × × ×


 桑の実の入ったホーローの鍋を火にかけて、焦がさないように菜箸で混ぜ、最初の白い灰汁は、灰汁取りシートをお玉で押しつけるようにして取り除き、お玉で灰汁を取りつつ混ぜもして、ジャムを完成に導いている秋子。


   × × ×


 ボールに入れた生クリームの中に、小分けした桑の実ジャムを冷蔵庫で冷ましたのを入れて、ホイップクリームを作る秋子。



○同・美歌の誕生日 (夕食)

 今夜の隆夫は仕事から早く帰り、美歌の大好きな照り焼きチキンと、エビマヨネーズのハーフサイズを組み合わせたLサイズのピザを取り寄せ、フライドポテトとフライドチキンが入ったサイドメニューを頼み、秋子の手作りサラダを三人で食べている。


隆夫「美歌もやっと十三歳になったんだな」

 一本目の500のビールを飲み干し、嬉しそうに話す隆夫。


美歌「お父さん、やっとじゃないよ。ついになったんだよ」

 二枚目のチキンのピザを一口食べてから、そう言い返す美歌。二人のやりとりを、にこやかに笑って聞いている秋子。


美歌「お母さんの作ったケーキ、毎年食べるの楽しみ。おいしいのよね。今日はどんな形になっているのかな?」

 笑顔でそういう美歌。


隆夫「俺はまだ見てないぞ」


美歌「私だってまだ見てないよ。冷蔵庫見たけどね、箱に入っていて、見られなかったもんね」

 少し残念そうに話す美歌。


隆夫「当事者が見られるのは、食べるときだものな。俺も楽しみだ」

 照り焼きチキンのピザに手を伸ばし、そう話す隆夫。


美歌「二人共、ピザもフライドチキンも食べ過ぎないようにね。残ってもいいのよ」

 優しい声で話す秋子。


美歌「だって、おいしいんだもん」

 今度はエビマヨを取ろうとする美歌。



○同・食後 (リビング)

 キッチンのあるテーブルから、隆夫と美歌がリビングへ移動する。隆夫から、スマホのプレゼントを渡され、美歌は喜び勇んでいる。


美歌「お父さん、ありがとう。これで友達に自慢できるよ。持ってないのは、私だけだったかもね」


隆夫「そうか。考え方は人それぞれだからな」


美歌「ほんとうにありがとう、お父さん。大事に使うからね」

 美歌の視線は、白い色をしたスマホに釘付けになる。秋子がカットしたケーキとヨーグルトを運んでくる。リビングで食べる三人。



○美歌の高一の夏休み

 鞄を横がけにして家の玄関から出て、自転車でコンビニへ向かう美歌。


 九時から三時まで、家の近くのコンビニでバイトをしている美歌。


 夕方五時から九時まで、CDショップでバイトをしている美歌。



○岡崎家の玄関 (8月半ば・夜)

 玄関のカギを開ける美歌。


美歌「だだいま」

 父の靴がないことを確認し、自分の靴を脱いで、二階の階段を上る美歌。



○同・美歌の部屋

 自分部屋へ入る美歌。


美歌の声「まったく、お父さんにはコンビニのバイトだと許可してもったけど、毎日靴の確認をするなんてね」

 上着を脱いで、ワンポイントの入った白いTシャツを着る美歌。


美歌の声「お父さんが帰ってくるまで、家にもどるのは大変なんだから」

 ジーンズ脱ぎ、ジーンズの裾がひらひらとダメージが入っている、ショートパンツに着替える美歌。



○岡崎家のリビング (八月三十一・夜)

 美歌の置き手紙がテーブルの上にある。隆夫と秋子が対面同士で座っている。500の缶ビールをゴクゴクと、苛つきながら飲む隆夫。


隆夫「おまえの育て方が悪いからだ。だから、美歌が家を出た」


秋子「……」

 黙ってしまう秋子。


隆夫「高校に入るまでは、クラブ活動の陸上部を頑張っていたように思うが、高校に行き始めてコンビニのバイトをし出して、急に変わってしまった……許可しなきゃよかった」

 自分の怒りをビールに込めたように、どんとテーブルに置く隆夫。ビールが少しテーブルの上に飛び出す。


秋子「そんなことを言われても……」

 隆夫の顔をじっと見つめる秋子。


隆夫「俺は仕事で忙しい。美歌と話す時間が少ない」

 秋子を見ていた隆夫の視線が、テーブルの上で、形がやや丸く点々と飛び出したビールに動く。


秋子「……」

 無言の秋子。



○秋子の死・脳卒中・外観

 井の頭にある実家へ帰るために、十六号線の六浦から右に曲がり環状四号線に入って、朝比奈インターで高速道路に入り、狩場インターを過ぎ、その先で左側の壁に激突する……即死。



○真理子の葬儀会場 (通夜)

 祭壇の真ん中に、元気だった真理子のほんのりと笑う写真が飾られ、祭壇の左右には、喪主である隆夫の豪華な生花が並べられ、その右側の横に、隆夫の妹の生花、その横からは、岡崎不動産の取引先の主立った人たちの生花が、会社名と個人名が記入され、五段重ねで並べられている。


 左側には、真理子の父親である田中東吾の生花と続き、弟の真雄の生花、彼女の親戚たちの生花が、個人名や親戚一同と書かれていて、彼女の友達とつながっている。


 参列者が訪れる前のわずかな時間で、ひっそりとした会場の正面で、真理の顔をじっと見ている隆夫。その隆夫の斜め後ろ姿を、正面にある祭壇の右側の入り口を影にして、チラチラと悟られないよう見つめている娘の美歌。



○某ライブハウス  (十二月五日・夜)

 葬儀の日に、寝室の枕の上にあったイブチケットを、財布から取り出して確認し、俺はふらりと会場に足を運ぶ。会場は、煩いほどに音量が大きくて、来るんじゃなかった、と後悔をする。


 結局、何を言葉として歌っているのか。ツリーの点滅が早くなる。最後の曲かな。少女の鈴の音のように弾む歌声、聞き覚えのある歌が静かに聴こえてくる。俺が口ずさんでいた歌を……美歌がライブのトリで歌っているようだ。俺は歌い終わった美歌に見つかり、無言で……彼女を力強く抱きしめた。 (完)


今回も読んでいただき、ありがとうございました。


ライブ後に、親子はまた一緒に住むのか??


読者の感想を聞きたいです。よろしくお願いいたします。

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