38話 北見鈴
「あ。」
僕は学校の門を出て少し歩いた後にノートを教室に忘れていたことを思い出した。
「あーやっちゃったな〜。」
今から戻るのはめんどくさいけど仕方ないか。
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教室は誰もいなかった。窓を見ると和也がサッカーボールを蹴っていた。相変わらずうまい。
「…あったあった。」
お目当のノートを見つけ、さて帰ろうと思った時に、廊下から声が聞こえた。
「痛!」
「…?」
女の子の声だ。何かあったのだろうか?そう思い廊下に出ると何やら重たそうなダンボールと転けている女の子がいた。
「だ、大丈夫?」
僕は声をかけた。女の子は足首に手を当てていた。怪我したのかな?
「別に、大丈夫。」
女の子はぶっきらぼうに言うと、ダンボールを持って立とうとしたが、よろけていた。
「足、痛めたんじゃないの?ダンボール持つよ。」
「大丈夫だから、いい。」
そう言っている女の子の姿は今にも転けそうだ。ここは無理しても言わないと。
「やっぱりダメだって、僕に貸して。」
「いいから。」
「そんな足でまた転けたらどうするの?いいから貸して。」
僕は少し強引にダンボールを持った。
「これどこに運べばいいの?」
「…はぁ、職員室。」
女の子は渋々と言った感じで諦めてくれた。それにしても意外と重い。
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職員室を目指す途中、僕は女の子に喋りかけてみた。
「そういえば、名前なんだっけ。僕は二年二組の平山赤城。」
「二年八組の北見鈴。」
「北見さんか。」
北見さんは腰まで伸びた長く綺麗な黒髪と可愛らしい顔をしており、水嶋さんにも劣らない美人だった。
ちなみに身長は150センチぐらいで、浦澤ちゃんよりも小さい。
「北見さんはなんでこんな重いものを運んでたの?」
「学級委員長だから。」
「そうなんだ、全くひどいよね先生も。」
「…なにが。」
「学級委員長だからって女の子にこんな大荷物持たせるなんてひどいよね!」
僕でもちょっと疲れるくらいだ。北見さんは運動もしてなさそうだし、かなりきつかっただろう。
「…………」
「ん、どうしたの?」
「…なんでもない。」
北見さんは少し顔を赤くしていた。今はもう七月だし、暑いからかな?
そう考えてると、北見さんが話しかけてきた。
「平山はなんでこんな時間までいたの?部活?」
「いや〜ノートを教室に忘れちゃってね〜。部活はやってないよ。」
「そう。」
北見さんは少しぶっきらぼうなところがあるけど、聞いたことにはちゃんと返してくれるし、良い人だ。
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「ふぅ〜。」
職員室までダンボールを運び、廊下に出て体を伸ばす。
「あ、足は大丈夫?」
「大丈夫、歩けないほどではない。」
今度はちゃんと大丈夫そうだ。
僕たちは学校の門まで来て別れる。
「…今日はありがと。」
「どういたしまして、それじゃ足、帰ったらしっかり冷やしてね、あ、あとまた困ったら力になるから、じぁあね!」
「……それじゃ。」
僕が手を振ると北見さんは小さく手を挙げてくれた。
ノートを忘れたのはあれだったけど、北見さんと知り合えて良かった。
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「平山、か。」
私は帰り道で今日手伝ってくれた人のことを思い出す。最初会った時は私のことを女の子扱いばかりしていてイラついたりしたが、足のことなど本当に心配してくれていた。
「いい人、かもね、多分。」
私は少しいい気分で帰った。別に平山とかじゃないけど。
話しかけても反応しない人って駄目ですよね。自分もそうですけど。
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