102話 メリー
「…私は、もっと先輩に味見係して欲しいですけどね。」
「………なんでだ?」
なんでこんなことを聞くのだろう。理由なんて聞きたくないのに。
「それは、先輩はちゃんと評価してくれるし、優しいし、頼りになるからです!」
「…評価以外、関係なくないか?」
「細かいことは気にしちゃ駄目ですよ。とりあえず、またお菓子の味見、してくださいね?」
「……相変わらず、強引だな。」
「へへ、それが私の得意分野です。」
自分が小言を言うと、浦澤は自信満々に胸を張って言った。
…今の自分に、自信なんてあるのだろうか…いや、無いな。こんな思っていることとやっていることが違うのに、自信もクソもない。
「あ、後もう一つ。あの時、マラソン大会ではありがとうございました。」
「…何かしたか?」
「何って、肩貸してくれたじゃないですか。それに、あの時言ってくれたじゃないですか、無理するなって。」
「…余計なお世話だったんじゃないか?」
正直あれを言ったのは失敗だと思ってる。人間無理するなって言う方が難しい。
「そんなことないですよ。今年で一番嬉しかったかもです。」
「…本当か?」
「本当ですよ。」
自分が聞くと浦澤は笑顔でそう答えた。
「…………………」
本当なら、嬉しい顔をこちらもしないといけないのだろう。いや、嬉しいんだ。
嬉しいけど、嬉しくなれない。
「あ、由那だ。おーいこっちこっち!」
どうやら話しているうちに松川が来たらしい。
自分はもたれていた背中を起こし、二人の元へ歩いた。
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「ふぅ〜楽しかったね!」
「私はくたくただ…」
浦澤、松川と一緒に色々な場所に回っていると既に暗くなっており、解散の時間となった。てか、浦澤の体力はどうなってんだ?マラソン大会とは立場が逆転しているような。
「……じゃあ、またな。」
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
自分が帰ろうとすると、浦澤が止めに来た。
なんだ?
「どうした。」
「ちょっと渡すものがあるんですよ。え〜と、あ、あった!」
鞄の中をごそごそと探し、何か見つけたようだった。
「はい!私たちで作ってみました!受け取って下さい!」
渡してきたのは、袋に入ったクリスマスカラーのいろんな菓子が入っていた。
「…これは?」
「神奈と昨日作ったんです。」
「いやぁ、大変でしたよ。色付けとか難しかったし。
まあ、クリスマスプレゼントってやつですよ。」
「……こっちは何も用意してないぞ。」
「いやいや、日頃のお礼なんでいいですよ。いつもお世話になってるし。」
「…そんなことないだろ。」
日頃のお礼なんて、何もした覚えはないのだが。
「え〜いっぱいお世話になってますよ〜、最初に会った…」
「最初?どういうこと?」
「あ、いや、なんでもないなんでもない。」
「…へぇ〜。」
「…はぁ。」
浦澤は誤魔化すように言い直すが、松川は怪しそうに睨む。
このままじゃ何聞かれるか分からないし、今のうちに帰ろう。
「…じゃあ、ありがとうな。」
「はい、今度は年明けですかね。良いお年を。」
「良いお年を〜!」
二人と別れ、さっき貰った菓子を食べてみる。
「…美味しい、な。」
そんなことを言いながら、道を歩く。
普段は独り言なんて言わないのに、何故だろうな。
『メリークリスマスだよ!奏くん!』
「…………………」
メリー。そんな気分とは程遠い。
今年もあと数時間で終わりますね。
今年も色々ありましたが、まあ来年も頑張っていきましょう。それでは。
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