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王子、誘拐されるPart6

21話の続き

新たな協力者を得たテナートは、

森の中で作戦会議をしていた。


「いいかルミナス」


地図を広げる。


「今俺たちがいるのはここだ」


指を差す。


「そして目指しているのがここ、アルヴェイン王国だ」


さらに指を動かす。


「ここまで行くには最低でも街を一つ突破する必要がある」


「うんうん」


ルミナスは真剣に頷く。


「問題は検問だ」


「今は全域指名手配みたいなもんだからな……簡単に通ることができない」


「どうするべきか…」


「それについてはお任せください」


ルミナスが自信満々に答えた。


「?」


「そうか?」






半日後。


二人は街の検問前に立っていた。


「次!」


兵士が声を上げる。


次に通りかかったのは

煌びやかな少女と地味な眼鏡の男。


「どうぞ」


テナートが身分証を差し出す。


「…んん?」


兵士が眉をひそめた。


「ミート・ボブジョネス?」


「はい」


「……で、こっちが」


視線をルミナスへ向ける。


「ミート・ボール?」


「はい」


「随分と直球な名前だな」


「そういう一族ですので…」


表情とは裏腹に、

テナートは冷や汗を流していた。


兵士は怪しそうな顔をする。


「お前……」


(…まずいか?)


その時。


「おじさん!」


純粋な子どものふりをしたルミナスが尋ねる。


「今日はずっとここにいたの?」


兵士が屈んで答える。


「そうだな嬢ちゃん、朝からずっとここにいるな」


「そうなんだ!」


「こんな遅くまでお勤めご苦労さまです!」


美少女の満面の笑顔。


あまりにも純粋であまりにも眩しかった。


「おぉ…!」


兵士達に限らず、

その場にいた男全員が見惚れていた。


怪しい親父などどうでもよくなるレベルに。


「へ、へへ……!」

「ありがとな嬢ちゃん!」


兵士が照れる。


「通っていいぞ!」


「やった!おじさんありがとう!」


「あ、ありがとうございます」


テナートも慌てて頭を下げる。


そのまま何事もなく突破することに成功した。





街の中。


「おい…」


テナートが小声で言う。


「何ですか?」


「目立ちすぎだ」


神々しいオーラを隠しきれていなかったのか、

街中の視線がルミナスに集まっている。


「仕方がないじゃないですか」


「変装する余裕もありませんでしたし」


「今更顔を隠したら余計怪しいです」


ルミナスは無表情を貫く。


さっきまでの笑顔はどこへいったのやら。


「くっ…仕方がないか…」


「変な噂が出る前にさっさと退散しよう」


「はい」


テナートはルミナスを抱えて

寄り道せず一直線に出口へ向かった。





街の外れ。


再び検問。


「よし通っていいぞ!」


「次!」


(頼むなルミナス)


(任せてください)


さっきと同様、ルミナスが注意を引く。


「おじさん――」


さっきとは違う巧みな話術。


「へへっ!」


「ありがとな嬢ちゃん!」


「うん!頑張ってね!」


ルミナスが営業スマイルを返す。


「通っていいぞ!」


(よし!)


テナートが拳を握る。


(この街さえ抜ければこっちのもんだ!)


(勝ったな!)


「いくぞ、ボール」


さっさと立ち去ろうとしたその時だった。


「待ちなさい」


「!!」


(誰だ!?)


振り返るとそこにいたのは、

豪華なドレスに金色の髪色。


「「リリアーナ皇女様!」」


それを聞いた民衆と兵士達が慌てて敬礼する。


(皇女だと!?)


テナートの顔が引きつる。


「皇女様が何故こちらに?」


「たまたま通りかかっただけですわ」


そういい放つとこちらへ視線を向ける。


「!!」


(まずい…)


警戒体制に入るテナート。


しかし、

リリアーナはテナートではなく


「あなた…」


「はい?」


ルミナスのほうを見ていた。


「どこかで見たことのある顔ね…」


「気のせいではないでしょうか」


「そうですわね…あの肌黒女に似ていると少しでも考えるなんて、貴方に失礼でしたわ」


「?」


(多分、その考えは間違ってないぞ)


テナートが心の中で突っ込む。


「貴方、名前は?」


「こういう者です」


ルミナスは身分証を見せる。


「…変な名前ね」


「まぁいいわ」


「重要なのはそこじゃない」


そして満面の笑みを浮かべ、こう告げる。


「貴方、私のところに来ない?」


「…え?」


ルミナスが珍しく固まる。


「貴方を気に入ったからスカウトしますわ」


(スカウトだと!?)


テナートも驚いてた。


「リリアーナ様!」


「そんなことをしている場合では――」


護衛が止める。


「いいじゃないの」


「こんな逸材、もう二度と見つからないもの」


「待遇面から全てにおいて不自由のないことを確約いたしますわ」


それを聞いたルミナスは少し考えた後、


「申し出は嬉しいのですが…」


「私は父と仕事をするのが好きなので、お断りさせていただきます」


ルミナスが丁寧に頭を下げる。


リリアーナは露骨に残念そうな顔をした。


「そう…残念だわ」


そして一枚のカードを差し出す。


「でも良かったらこれを」


「ここに連絡すれば私に繋がるから」


「……ありがとうございます」


ルミナスが受け取る。


「行きましょう、お父さん」


「あ、あぁ」


そのままリリアーナを背に二人は歩き出す。


テナートに関しては、

一切触れることなく検問を突破した。





少し離れた後。


テナートが深いため息を吐く。


「……あっぶねぇぇぇぇ」


「俺、存在すら認識されてなかったな」


「良かったですね」


ルミナスは平然としていた。


「お陰様で助かった……」


「いえ」


ルミナスはカードを見る。


「でもこの人」


「多分、また会う気がします」


「やめろ」


「縁起でもないことを言うな」


(だが、これでもう追手は来ない)


(へへっ!メイラさんよぉ 俺の勝ちだ!)


こうして逃走成功まであと一歩のところまで来たテナートであった。


次回に続く

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