王子、誘拐されるpart4
19話の続き
騒動から三日後。
テナートは今どこにいるのかというと。
「焼きたてサンメルパイはいかがですかー!!」
サディール皇国の王都に潜伏をしていた。
「おっ!」
「一つもらおうかね!」
「毎度ありー!」
賑やかな人混みに出店など、街は活気あふれていた。
そこでテナートは、地味な眼鏡にちょび髭、黒髪に安っぽい服で商売をしている。
前回の反省を生かし、違和感なく街のモブとして溶け込むことに成功していた。
「いやぁ~、売上は上々!」
「何のしがらみもなく」
「優雅に暮らせるって素晴らしいなぁ」
パイの甘い香りを漂わせ王都をのんびり歩く。
テナートにとって、サディール皇国はうってつけの逃亡場所であった。
「スローライフ最高だぜぇ……」
しばらく商売をしながら歩いていると、ある光景を目にする。
ざわざわ。
掲示板の前に民衆の影。
「なんだ?」
テナートは興味本位に近づく。
「民衆は何に関心を示しているんだ?」
遠目で眺めていると。
「……何!?」
そして固まる。
民衆が見ていたのは一つの張り紙。
そこに描かれていたのは
『この顔にピンと来たら〇〇まで』
自分の手配書だった。
しかも、ご丁寧に似顔絵まで描かれている。
下には超高額の懸賞金。
テナートが心の中で絶叫する。
(この俺を指名手配犯みたいにしよって…!)
内心焦ったテナートだったが、すぐに冷静になる。
「いや、待てよ…」
今回は前回ほど危険じゃない。
即バレするリスクは今のところはない。
「でも、早めに逃げることに越したことはないな」
今ところリスクはないとはいえ、何が起こるかわからない。
テナートは焦ることなく逃亡の準備を始めた。
その夜、王都出口。
「…………」
兵士が多数。
厳重な検問が実施されていた。
「なるほど……」
「ここ突破しないと脱出できないのか」
テナートは少し考える。
(出直す?)
(いや、ここでもたつく方が危険だ)
「ふぅー……」
深呼吸。
大丈夫だ、堂々としてればいい。
覚悟を決め、列に並ぶ。
「……よし、通れ!」
「次!」
検問は一人ひとり入念にされていた。
「よし、問題なし!」
「次!」
(中々厳しいな……)
そして、テナートの番が回ってくる。
「身分証はあるか?」
「ほらよ」
偽造した身分証を自然な動きで渡す。
「……ミート・ボブジョネス?」
兵士が顔をしかめた。
「変わった名前だな」
「親が変わり者だったので」
即答。
「…まぁいい」
「職業は…商人か」
「良かったら一つどうです?」
テナートがサンメルパイを差し出す。
「……いや、今は遠慮しておく」
「そうですか」
「…他は至って普通…特に問題はないな」
「だが、最後に顔確認だ!」
「眼鏡を外せ」
「…………」
少し沈黙のあとゆっくりと眼鏡を外す。
「…んん?」
兵士がまじまじと見る。
(……まずいか?)
数秒ではあったが、テナートには長く感じた。
そして
「……よし」
兵士が頷く。
「通っていいぞ!」
「あざまーす!」
内心ガッツポーズ。
(よーし)
(髪色といい ちょっと顔に小細工しといて正解だったな)
そのままウキウキで歩き出すが。
「ちょっと待て!!」
ビクッ。
(………)
「お前……」
テナートは即座に懐へ手を入れる。
(隠しきれてなかったか!)
「やっぱり」
「さっきのサンメルパイ一個くれ!」
「…………」
(なんだよ!!驚かせやがって!!)
心の中で大絶叫。
内心大焦り。
「毎度ありー!!」
パイを渡す。
「おう!お前さんも頑張れよ!」
(おう!お前みたいなマヌケにならないように頑張るわ!)
こうしてテナートは何事もなく検問を突破した。
次回に続く。




