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「私がパートナーで本当によかったの?」
「姉上がいいの」
「⋯⋯早く姉離れしなさいね」
今日で学院を卒業したと言うのに、まだまだウィルはお姉さんっ子なのよね。
その卒業を祝うパーティーにウィルのパートナーとして参加することになったのだ。
時が経つのは早い。1年前には私がここに卒業生として居たのにな。
ますますレックス兄様に似てきたウィル。
無愛想なお兄様と比べてウィルは愛想がいいから、令嬢たちからのお誘いもあったと思うのだけれど⋯⋯私にパートナーを頼んできたってことは、全員断ったのよね⋯⋯私、大丈夫かしら?
恨まれたりしないよね?
大丈夫そうにない⋯⋯すっごく睨まれている。
「姉上に紹介したい友達がいるんだ」
「ハント伯爵家のご子息ね」
私も彼には会えるのを楽しみにしていたのよね。
だってウィルから何度も『レックス兄様に憧れている奴がいるんだよね』って聞いていたし、『いい奴なんだ』ってウィルと仲良くしてくれている男の子なら是非とも挨拶したいと思っていたから。
文官を目指していると聞いていたから、知的な感じの男の子だと想像していたけれど、騎士を目指していると言われた方がしっくりくる。
うん、大きい。背も高くて服の上からも筋肉モリモリなのが分かる。
お祖父様や、伯父様並の大きさだわ。
「⋯⋯は、はじめまして、お、俺、いえ私はレイモンド・ハントと申します。ウィルダー君と親しくさせて頂いております。⋯⋯す、末長くよろしくお願い致します。お姉様」
末長く?
よく分からないけれど、真面目そうで感じのいい子ね。
「はじめまして、ウィルの姉のベルティアーナと申します。ウィルがお世話になっております。これからも仲良くしてあげて下さいね」
な、何?ハント様にじっと見られている。
ちょ、ちょっと怖いんですけど⋯⋯いつもの貼り付けた笑みが崩れそうよ。
「おい、レイモンド。分かるけどさあんまり見るなよ」
うん?
「え?あ!し、失礼しました」
「お前、姉上に惚れるなよ?」
気の所為じゃないわ!
ウィルが乱暴な口調になっている!
それだけハント様とは気軽に話せる友達なのね!
お姉様は嬉しい!
「い、いや!わ、分かっている」
「ウィル?そんな訳ないでしょう?ハント様に失礼よ」
「でも姉上はとっても綺麗で優しいから誰だって好きになっちゃうよ」
「馬鹿なこと言わない。ハント様、ウィルがごめんなさいね」
「い、いえ!大丈夫です」
そんな会話をしている間も視線が痛い。
ファーストダンスを踊ったらウィルから離れた方がいいわね。
今年の卒業パーティーにも王太子殿下が祝いの言葉を述べていた。
もちろんその後ろにはレックス兄様がいて、恒例のように令嬢たちの黄色い悲鳴と、熱い視線を浴びていた。
ファーストダンスを踊り、ウィルから離れようとしたけれど、離れてくれない。
せっかくダンスに誘ってくれた令嬢もいたのに、断ってしまって2人で壁の花になっている。
私は悪くない。私はウィルの姉だよ?だからそんな目で睨まないで!
はぁ⋯⋯帰りたい。
!!
あの令嬢は⋯⋯去年の卒業式で令嬢たちに囲まれていた私を心配げに見ていた令嬢だ。
薄い茶色の髪に緑色の瞳の小柄な可愛らしい令嬢だけれど、去年も卒業パーティーに居たのに何故今年もいるのだろう?
「ねえウィル。あの令嬢は?」
「うん?」
「あの小柄で可愛らしい令嬢よ」
「ああ、姉上が気にする子じゃないよ」
「同級生なの?」
「そうだよ」
「彼女は去年の卒業式にも居たわよ」
「卒業生のパートナーだったんじゃないの?」
なるほど。
「面倒くさい子だから話し掛けられても無視してね」
でも他の人と違って睨むでもなく、ずっと見てくるから気になっていたけれど、ウィルがそう言うなら関わらない方がいいわね。
そう思っていたのに⋯⋯
何故こんなことに??




