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痛い、痛い、痛い、視線が痛い。
私はいま、初めてこの学院の制服を着て卒業式に参加している。
私を知らない人たちは『あんな子いたか?』とか、『見かけたことのない令嬢ですわね』と、首を捻っているけれど、試験を受けに来た時に見掛けられた人だとか、王宮の夜会で見かけたのだろう人たちは『ディスター侯爵家の令嬢が何故ここに?』『編入試験は不合格だったのでは?』と、いろんな声が聞こえてくる。
ええ、編入試験には合格していましたよ?
それだけではなく卒業試験も合格し、学院に通わなくとも卒業資格を戴いていましたのよ?
この制度は、レックス兄様がこの学院に通っている時期に『優秀な生徒や、既に当主としての仕事があり学院に通う時間がない者、病弱で通えない者らに、卒業するだけの実力があれば卒業を認めるのはどうだろうか』と王太子殿下やモルダー兄様を言葉巧みに説いて貴族会議に立案し可決されたそうだ。
これもこの国に他国から移住してくるであろう私とウィルのことを考えた結果らしい。
私欲で提案したことを、私たち家族しか知らない。
そしてこの制度は認可されてから僅か2年だとか⋯⋯
それを利用して、私は卒業資格を得たのだ。
ウィルも同じ試験を受けたけれど残念ながら合格には至らなかった。
だから堂々としていればいいはずなんだけれど⋯⋯嫌な会話も聞こえてくる。
それは私が侯爵令嬢の身でありながら貴族としての義務と責任を果たしていないと⋯⋯
確かに社交の場には出ていないし、他家との交流もしていない。
交流がしたければ学院に通っていたわ。
言い訳ではないけれど、結婚をする気がない私にはそれが必要だとは思えない。
もちろんレックス兄様の稼いだお金や、領民から納められた税金で遊んでばかりいる訳ではない。
今よりももっと領民が住みやすく、働きやすい環境をお父様に学びながら少しづつ実行している最中。
今は領民の子供たちが学べる場所も建設中だ。
私のことを何も知らないのに⋯⋯
気にしないと思いながらも気分は重くなる。
だからと言って表情に出すつもりはない。
この仮面は自分を守るための武装なのだ。
そっと2階席の方をチラリと見ると卒業生の父兄たちに紛れて⋯⋯いえ、先頭にお父様とレックス兄様が⋯⋯2人とも目立っている。
この学院は貴族が通うだけあって、広さには余裕があるはずなんだけど、不自然なくらいお父様とお兄様の周りだけが女性たちで密集している。
旦那様や婚約者と来ているだろうに、それでいいのだろうか?
私の視線の先に気付いたのか、あちらこちらから女生徒たちの黄色い悲鳴があがる。
結局、式が始まるまで女生徒や婦人方が落ち着くことはなかった。
この後、夕方からは卒業パーティーが開かれる。
エスコートはレックス兄様だ。
ウィルは前回私を1人にしたことで任せられない!とレックス兄様が⋯⋯
結局ウィルは優し過ぎて纏わりつく令嬢たちを無碍にはできないのだ。
別に私は1人でも大丈夫なのに⋯⋯お父様とお兄様は過保護が過ぎる。
でも美貌のレックス兄様が現れたら凄い騒ぎになりそうで今から怖い。
王族からも卒業のお祝いに誰かが参加されると聞いているし、何事もなければいいのだけれど⋯⋯




