No.3 勇者覚醒？
とある土曜日、アタシはお弁当を塾のバックに入れて手に持つ。
『ま、真紀子さま!！また魔物が作った食べ物なんか持って!！』
汚らわしい!！とでも言いたげな天使。
「弁当ないと昼メシ自腹なるじゃん」
ただでさえ、お小遣い少なめなんだからさ〜。
て、そうか!！
「ねね、魔物なんて倒さなくても今まで貯めてたお金で何とかならないの？」
正直、貯金を切り崩すのは痛いが人に危害を加えるよりイイ。
『そうですね、大丈夫だと思います。では、カタログを見ますか？』
「うんうん!！」
戦いには興味はないけど、お買い物は大好きなんだよね〜。
天使の頭がパァァと光り出し、そこから古びた分厚い本が出てきた。
ね、年代物だな〜(泣)
一抹の不安を覚えつつ、ページを開く。
「わ〜!！」
武器は、剣、弓を筆頭に種類も豊富だ。
防具もガッチガチの戦士使用から ちょっとお色気ありのエッチなビスチェまである(防御できんのか!？てくらい布面積狭し)
そして怪しい容器に入った回復ドリンクやら毒消しやら、頼もしい旅のお供もあるようだ。
しかも、何より素晴らしかったのは その値段!！
うん、これなら小学生が勇者でも魔王討伐に行けるね!！
「今から銀行いくから、それまでに必要最低限のもの選んどいて。フルセットで揃えるから!！」
『ま、真紀子さまは、お金持ちなんですね!！』
まあ、そういう事にしといて。
ウィィンと自動ドアが開き、ＡＴＭを見る。
「あちゃ〜」
二台ある機械には会社の制服を着たお姉さまたちが列を作っていた。
アタシたち子供は休みだけど大人は仕事だかんな。
デパートのＡＴＭにしようかな…と踵を返すと、
『魔物が現れた!！』
「え、ええ!？」
思わず声を出した瞬間、
「手を上げろ!！」
そう叫びながら入ってきた黒ずくめの男たちに突き飛ばされた。
『魔物レベル１５ 武器はライフル銃とタガーナイフ ＨＰは…』
て、待て待て〜い!！
「普通に死ぬわっ!！」
『え？でも、真紀子さまがおっしゃった悪そうな知らない人ですよ？』
ええ、ええ。言いましたね。でも、
「悪すぎるやろ!！」
この平和な日本で銃相手に丸腰の女子高生が勝てる訳ねぇ!！
空気読め!！
『大丈夫ですよ？ナイフは本物ですけど銃はオモチャです』
ま、まじ？
『銃相手でレベル１５は低すぎます。それに彼ら自身は初めての悪行みたいですね。ほら、背中に若葉マークが…』
ええ!？
目を見開いて背中を見ると、た、確かに若葉マークが…。
…なんだろ、目頭が熱い(泣)
『同じ初心者同士なら戦いやすいですよね』
そ、そうか〜？
向こうは大人の男だぞ？しかも二人だ。
「ねね、こうさ、近づかなくて倒せるようなアイテムはないの？」
ダメ元で聞いてみた。
『ありますよ』
あるんかいっ!！
『魔法を使える粉なんですけどね。それを舐めると舐めた量によって効果が違います』
そ、それって白い粉じゃないよね？
リトマス試験紙の色が変わったりしないよね？
『これなんて どうですか？効果は金縛りです』
おお!！それは相手に怪我をさせずに捕獲できそうですね!！
悪人と言えど人の子!！
罪を憎んで人を憎まずだね!！
『動けなくなったとこを この雷の剣で首から…』
て、お前 悪魔だろっ!！
怖すぎるわ!！
天使から粉を奪い取るとペロリと舐める。
少し動けなくなるだけで警備員が取り押さえてくれるだろうからね。
て、案の定 異変を察した彼らが掴みかかってくれました。
良かった良かった。
『あ〜あ。あれは勇者さまの役目なのに…』
いやいや、もう誰が捕まえてもイイんじゃね？
不満そうな天使を宥めていると、
『あれ？』
「どうしたの？」
『いえ、魔物を倒すと青い炎が燃え出すんですけど…出ませんね』
うん、出てないね。
『これは、まだ他にも魔物がいるようですよ』
「ええ!？」
いるようですよって、分かんないのか!？
『まれに気配を感じさせない魔物もいます。ほら、いきなり襲ってきたとかって攻撃してくるのがいるでしょ？アレです、アレ』
アレ アレってアタシはゲームやった事ないっつうの!！
ビクビクしながら辺りを見渡す。
か弱そうなお姉さまたちや大阪のオバチャンみたいなご婦人まで魔物に見えてきちゃうよ〜(泣)
「な、なんか魔物って分かるアイテムないの？」
『ありますよ』
あるなら出さんかいっ!！
得体の知れない緑の液体を取り出す。
『さあ、お飲みください』
飲むんかい!！(泣)
でも、背に腹は変えれない!！と一気に飲む。
ぐへ〜!！
青汁もビックリだな!！こっちが先に死ぬわ!！
でも、そのお陰でもう一人の魔物らしい人物が青く光った。
「そいつも仲間だよ!！」
アタシは大きな声を出すと、カウンターの中を指さした。
犯人に金を渡そうとしていた窓口の銀行マン!！
そいつは慌てて金をかき集めると飛び出すように走り出した。
が、机だらけで退路を阻まれ、あっけなく同僚たちに取り押さえられた。
瞬間、青い炎が燃え上がり、天に昇っていった。
わ〜!！こうやって倒すのか!！
これなら、犯罪者にならずに済むね!！
