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第十話 社内会議

「えー、それではPH警察会社の会議を始めたいと思います」


 一日一善。一人一殺。

 そんなよく分からないことが書かれている紙を背に、PH警察会社の社長・ツクモが会議の開始を宣言した。

 なおこの会社の社員は出席率が悪く、この場にいるのはメリー。ウォルフ。ヴァンプ。金魚鉢五人衆。そして水槽にいる魚類だ。


「テンチョーの情報提供によると、王都の混乱が収束するのはかなり怪しいです。こうなると不思議な葉っぱが好きな人たちはどうするでしょう」

「はい」

「どうぞメリー警視総監」

「ラブレターを送って来るでしょうね」

「おおっとそりゃいけない。メリーには毎日俺が送ってるから勘弁してほしいところだ」


 ツクモの問いにメリーが、今後予想される事態を口にする。

 考え無しの犯罪者集団もいきなり実力行使するだけではなく、賄賂などで懐柔を企む場合もある。そして犯罪撲滅を謳う自警団が裏で協力していたり、酷い時にはノウハウや販路を丸ごと乗っ取って、いつの間にか犯罪組織になっていた。というのは俗に言う稀によくある話だ。

 それを考えると犯罪組織がPH警察会社に接触しようとするのは、不思議なことではないだろう。

 しかし社員たちが気になったのはツクモの最後の言葉だった。


「……うん?」

「我輩は直に見ている」

「あ、そう……」


 ひょっとして惚気を聞かされた? それとも聞き間違い? と思ったウォルフは近くに座っていたヴァンプに視線を向けた。しかし返って来たのはまさかの肯定で、すっぱいものを食べたような表情を浮かべた二人は、ここで会話をやめてしまった。


「バカップルや」

「絶滅危惧種どころか、骨になってると思ってたわ」

「知らんのか? バカップルはプラナリアよりしぶといんや」

「ほえー。明日には忘れ取るわ」

「ワイらの彼女はどこにおるんやろうなあ」


 一方、金魚鉢五人衆は好き勝手ぺちゃくちゃ喋っていた。


「まあでも、接触して来たら吐かせて一網打尽に出来るから好都合やね」

「その通り! という訳で一番接触が多いであろうツクモ社長が頑張ります!」

「社長やから……と言うより扱いやすそうやから……ですね」

「せやね」

「ゲーム買ったるって言ったら車に乗りそうなタイプや」

「飴玉あげるで」

「シャラップ金魚鉢五人衆!」

「言うたの四人や! ワイはなんも言うてへんがな⁉」

「シャラップ金魚鉢四天王!」

「それでええねん……五人揃って四天王とか言わへんよな?」

「シャラップ金魚鉢五人揃って四天王!」

「こ、このガキャァ……」


 金魚鉢五人衆とツクモは精神年齢が同じなのか、それともツクモを揶揄って遊んでいるだけなのか。

 非常にワイワイガヤガヤと煩く、会議は学級崩壊を起こした教室のようになってしまう。

 一方、ヴァンプ、メリー、ウォルフも好き勝手言っていた。


「薬物が流行ると血がマズくなる。我輩、そんなことは断じて許せん」

「グルメね。好き嫌いしたら大きくならないわよ?」

「なんと言われようが、美女の綺麗な血しか飲まんのである」

「相変わらず偏食の美食家だな。ああ、そういや、ドラゴンが見た目はいい女になれるって聞いたぞ」

「化け物はどこまで行っても化け物だ。その誇りなく生存戦略で人に化けた者の血など興味ない」

「まあ、そんなこと言って。私みたいに可憐なドラゴンの女の子がいるかもしれないじゃない」

「ふっ。可憐」

「はっ。女の子」

「あらあら。女の子について無知なのね」


 自称美食家のヴァンプに、メリーとウォルフが茶々を入れたが、PH警察会社でもトップクラスに危険な存在が可憐な女の子を自称したことで、男二人は失笑してしまう。


「おいおいおいおいおい。メリーはどこからどう見ても、可憐で優しい女の子じゃん」

「愛してるわダーリン」

「俺もだよハニー」

「おえっ」


 ここでツクモが乱入。

 バカップルは独特な空気を作り上げた。

 部外者に大ダメージ。吐きそうになった。


「あ、あーあ。ワイらの会社はどういう感じで動くんやろうなあ」


 この空気に耐えかねた金魚鉢の一人がなんとか話題を変えようとしたが、他の仲間達はここでそんなことを言えるのか。まさに勇気ある者、勇者だと尊敬の念を覚えた。のかもしれない。


「本当ならそれぞれの区で一番デカい自警団なり、警察会社なりと連携して、西地区のドンを目指したんだけど、どこも手間取ってるっぽいからなあ……」

「なら浮遊王都の利権を独占するか?」

「ウォルフの意見に賛成! って言いたいけど、それやったらお上に危険視されそう。とりあえず西地区内で頑張ろうかな」


 遊んでいる割に色々と考えているツクモは、ウォルフの意見を採用した場合、下手をすれば王宮での揉め事にも巻き込まれると予想していた。

 そのため地域密着型の警察会社をとりあえずの方針として定め、他のことについてはしばらく様子を見ることにする。


「そんじゃまあ、立ち上がったばかりの組織ですので、交番のお巡りさんスタイルでやりましょう。おー!」


 ツクモの言う通り、PH警察会社は立ち上がったばかりの会社だ。

 当然、地域に根差すのが方針であり、人を生贄にするカルト。闇に潜む怪物。ドラゴンや魔狼。果ては悪神なんてものと対決する予定はない。

 ないったらないのである。

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