ep52.初めて見せた涙
何より、私に愛をくれた人はレオで、レオはまた、私を暗闇の中から引き出してくれる。そんなレオが私もまた、心の底から好きなのだと実感が湧いた。
「…ソフィア…?泣いてる…のか?」
その時、私はレオに言われて初めて自分が泣いていることに気がついた。
頬を触ってみるとやはり湿っていた。
「…え……?あれ?…っ本当ですね。すみません。すぐ止まりますから」
涙を止めようと慌てて目を擦ろうとする。だけど自分の手は涙が出てる目には届かなくて、代わりにレオの手が優しく私の涙を拭ってくれた。
「違う、そういうつもりで言ったわけじゃない。泣いていいんだ、ソフィア。言っただろ?俺がソフィアの悲しみを取り除いてあげたい。ソフィアが泣いているなら側にいるのは俺がいい。だからそんなに擦るな。俺が拭うから」
「………っ……」
私の仮面が、完全に外れた。
いつでも私の顔を覆って離れようとしなかった仮面はレオの言葉でヒビが入って、今壊れたのだ。
だからこそ涙を流す事が出来た。
普段なら仮面の下に隠れてしまう涙が、今回は
いつもと違って日の目を浴びた。
11年ぶりに流したその涙は止まるところを知らず次々と溢れてくる。
そのたびにレオが頬の涙を拭ってくれ、温かい気持ちで満たされていく。
「公爵様」
「…レオ」
「え?」
「…名前で呼んでくれ。ソフィア。」
いつにも増して幸せそうな声に、胸が締め付けられてしまう。
カラミティ病を治す方法がなければ、私は死んでしまう。その時、レオはきっと悲しんでしまうから。
私の死で悲しまないでほしい。レオにはずっと笑っていてほしい。
今まではそう思いながら生きて来た。
だけど、私の死で悲しんでくれる人がいるのはこんなにも勇気が出て、胸が締め付けられて、それでいて嬉しいと感じてしまう。
「レオ様」
名前を呼ぶと他の人には絶対見せないような穏やかな笑みで「どうした?」と聞いてくれる。
レオの優しいけどどこか熱い眼差しや声から、お世辞でも気遣いでもなく本当に私のことが好きなのだと分かる。
私が貴方に愛されても良いのだろうか。私が貴方を愛しても良いのだろうか。そんな迷いは今でもあって、でもその迷いの沼にハマれば私は一生抜け出せなくなる。
だから言う。
「私も愛しています。好きにならないという約束を破ってしまってすみません」
どうして今まで気づかなかったのだろうか。
私もレオが嬉しいと嬉しいし、落ち込んだり悲しい思いをしているのならその隣にいるのは私でありたい。これが愛なら、私は到底死ぬことなんて出来ない。
愛してる人をおいて先に逝くことも、先に逝ってレオを悲しませることもしたくなかった。
「…本当か?、俺は、初めて会った時からつい最近まであなたに酷いことをした男だぞ?」
それを自分で言ってしまう辺り、レオの根本的な性格はずっとそのままだ。
優しくて、気を遣えて、人を見捨てることが出来なくて、自分に非があればちゃんと謝ってくれる、そんな人。
今も、自分のしたことは到底許されないことだと自分自身を睨みつけそうな勢いで目を細めている。
そんな俯いているレオの頭を私は撫でた。
「酷いことをしたのはメイド長であって公爵…レオ様ではありません。それに、突然押しかけた訪問にも対応してくれてここに住まわせてくれたことの何が酷いことなのですか?」
「っ本当にソフィアは…優しすぎる……。だが、俺もその優しさに何度も救われた。愛してる。ソフィア。必ず一緒に生きような。約束だ。」
「っはい…!レオ様、私も愛しています」
前世からの恩人だと思っていた人は、私の好きな人だったようで、レオもまた、私を好いてくれていた。
こんな奇跡があっても良いのかと疑ってしまいたくなる。でもそれはレオの気持ちを疑うのと同義だから、そんなことはしたくなかった。
人からの好意を素直に受け止めてみたかった。
誰かに必要とされることが
誰かの役に立てることが
愛してる人に愛されることが
こんなにも幸せな気持ちになって生きる糧になるのだと、この日初めて知ることが出来た。
最後まで読んで頂きありがとうございました!
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