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ep51.生きたい

身体がすごく重たい。

まるで重りのついた体で水底に沈められてるみたいな気分。


息苦しくて、だからって息をしようとも思えなくて、変な感じ。もうこのまま沈んでしまえば楽になれるのかななんて思ってしまう。


『ソフィア…』


『…?』


どこからともなく聞こえる声は私を酷く落ち着かせた。


『戻ってきてくれ…お願いだ…。』


声の主の表情を見ずとも、その人の泣いている姿が容易に想像出来た。


どうしてそんなに優しく私の名前を呼んでくれるんだろう。

どうして私なんかのために泣いてるんだろう。


『俺は…ソフィアがいないと生きた心地がしない…。』


どうして、私を必要としてくれるんだろう。


『今だって、ソフィアがここにいなくて苦しくて堪らない。…俺は騎士だから、人が死ぬ姿には慣れているのに…ましてや、ソフィアはまだ生きているのに…ソフィアが目を開けないと、何故こんなに苦しくなるんだろうな…?』


"…っ!私はここにいます…!"


そう伝えたかったのに、私の口から声は出なかった。


それは何故?

この声の正体は誰?



何を、忘れてるの?


_______思い出したい…____













「…っ」


ここは、ベッドだろうか。

先まで夢を見ていたような気がする。


変に焦燥感のある夢は、もう私の記憶の中にはなかった。


「…!!ソフィア!」


だけどこの声は、夢でもたくさん聞いた気がした。


だから私は、喉が枯れて声が出せない代わりにニコッと笑って見せた。すると、レオは泣きそうな顔をして笑い、私に水を飲ませてくれた。


「目が覚めて…良かった……。ソフィアが眠って、今日で20日目だった。」


「…そんなに眠っていたんですね。」


「…っ、ソフィア…。もっと、自分の身を大切にしてくれ…。毒が身体に回った状態で動くのは危険な行為だ。それに、この20日の間で命が危うい時もあった……。」


それは重々承知していた。


けど、義母を捕らえる最善の方法はあれしかなかったのだ。

もし私が人質のまま大人しくしていれば義母に逃げられた可能性だってあった。


それだけは許せなかった。


しかしレオにとっては私の身を案じてくれていたのだから怒るのも当然で謝るしかなかった。


「…申し訳ありません……」


「っ謝らせたかったわけじゃない。…なあ、ソフィア。」


レオは改めて私の名前を呼んだ。


「どうしましたか?」


そして質問する。「…生きたいか?」と。


レオのその一言で、私は意識が途切れる直前何を言ってしまったのか思い出した。


死にたくないなんて、結局私の独りよがりな考えでしかない。


「…約束通り、半年経ったら殺してください」


「答えになっていない。ソフィア。俺は今、生きたいかを聞いている。」


自分の表情が歪むのが分かる。

何も言えなかった。


生きたくないと答えてしまえばレオは約束通り私を殺してくれるだろう。


でも今、頭の片隅にほんの少し、砂みたいに小さいが、僅かに生きたいと思っている私がいた。


「…質問を変えよう。ソフィアはこれからも、俺と…俺たちと一緒に人生を歩みたいと思わないか…?」


「っ…それ、は…。」


「俺は一緒に生きたい。」


「…!」


「ソフィアと一緒に食べて、寝て、遊んで、笑って、たまに仕事も手伝ったり手伝ってもらったり、そうやって一緒に歳をとっていきたい。ソフィアが笑ってくれたら俺も嬉しい。ソフィアが泣いていたら側にいるのは俺でありたい。少しでもソフィアの悲しみを取り除いてあげたい。ソフィアはどう思ってる?」


いつものぶっきらぼうな声とは違う。


とても優しい声で聞いてくる。

とても穏やかな声で、静かに告げてくる。


それでいてとても寂しそうで今にも泣きそうな顔で…そんな顔をされたら、私だって自分の気持ちを吐露するしかなかった。


「……私も、生きたいですよ。…死にたくありません…。公爵様と一緒の時間を、出来るだけ多く過ごしたいです」


「っ!ソフィア…!」


「っ?…?っえ?!」


刹那、レオは私を抱きしめた。

もう離さないと言われてるような気分になるくらいに、強い抱擁だった。


「っすまん…。だが本当に嬉しいんだ。ソフィアが生きることを望んだからには、俺はいくらでも手を尽くせるからな。」


「公爵様……。」


「大丈夫だ。なんとしてでもソフィアが生きる手段を見つける。」


レオは抱きしめながら強く誓ってくれた。

けど、私はその言葉に少しだけ不満を持った。


「嬉しいです。…ですが、私は公爵様と生きたいのです。私だけ生きるのでは何の意味もありません。」


私が言うと、レオは少し笑って一度抱きしめるのを中断し、私と目を合わせられる距離まで離れた。


「もちろんだソフィア。一緒に生きる方法を見つけよう。少し不安だったが、もう心置きなく言える。」


「はい?」


「愛してる。ソフィア。あなたのおかげで生きたいと思えたし、ソフィアは俺の見る世界に色をつけてくれた。…俺を公爵ではなく、レオとして見てくれてありがとう…。1人の人間として見てくれてありがとう…俺を見つけてくれてありがとう。」


瞬間、私の心の防波堤のようなものが決壊する音がした。


悲しかったわけじゃない

緊張が解けたとかそういった類のものでもない


ただ私を必要としてくれることが嬉しかった。こんな私でも役に立てるのだと教えてくれたことが嬉しかったのだ。

最後まで読んで頂きありがとうございました!

次話も見てくださると嬉しいです!

評価&グット、コメントで応援、ご指摘よろしくお願いしますm(_ _)m

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