ep50.淡い期待、各々の後悔『公爵視点』
みなさまが読んでくださっているおかげでep50まで行くことが出来ました!本当にありがとうございます!
この物語ももう少しで終わってしまいますが最後まで見て頂けると幸いです!
「これが…嘘を言っているように見えるか…?」
「………」
伯爵だって分かっているだろう。
これが嘘でないことくらい。
それでも確認したくなる気持ちはよく理解できた。俺も何度も何度もソフィアに確認したくなったから。
本当にカラミティ病なのか、実は何かの間違いで、ソフィアは健康なんじゃないのか。
そんな淡い期待を裂いていくかのようにソフィアの体調は着々と悪化する。
今だってそうだ。
本当は毒なんて飲んでいなくて、実はぐっすり眠っているだけで必ずすぐ目を開けてくれる。
薄い希望に縋って、医者が言っていたことに反してなんの問題もなく目を覚ましてくれる。
根拠のない願望に近い形で願うしかなかった。
「知っているか?伯爵」
「…?」
「ソフィアがなんのために伯爵家を出たのか。」
「っ!」
この様子だと知らないようだ。
本当にソフィアの義父には何も言っていないことが分かる。
まあ言いたくはないだろうな。義父は自分を守ることの出来る場所にいたにも関わらず、伯爵が取った行動は夫人がソフィアに危害を加えないよう伯爵もソフィアを相手にしないという方法。
当然ソフィアは傷つく。
「俺のところに来て、半年後に殺して欲しいって言ったんだ……」
「っ…!」
俺は更に追い討ちをかけるように言う。これ以上伯爵の行いがソフィアを傷つけないように。
「やっと、…ソフィアが生きたいと思えたんだ。ソフィアを大事にしたいなら伯爵がしなければいけないことくらい分かるよな?」
「…はい。もう間違えたくはありませんので。……公爵様。」
「なんだ?」
「ソフィアが目を覚ました時、一度だけ会話する機会をくれませんか…。謝罪を…したいのです。」
謝罪という言葉を聞いて、俺だけでなくリアムとルイスも反応した。
2人はあまり良い気分ではなさそうだ。
それでも伯爵に何も言わないのは、2人もソフィアを傷つけてしまったことがあるから。無論俺もその1人だ。
故に、これは俺たちが決めるべきではないことくらい皆分かっていた。
「伯爵に会うのも、話をするのも、全て俺が決めるわけじゃない。ソフィアに直接言え。会ってもいいのか、話をしていいか。許可を貰った時、お前は初めてソフィアと向き合える。ソフィアが許可しないなら、お前は向き合うことすら許されない。」
「…そうですね。ソフィアに直接聞きます。公爵様、ソフィアを助けてくださりありがとうございました。」
伯爵は深々と頭を下げた。
伯爵は自分がしたことを理解している。だからソフィアのことを娘とは言わなかったし、自分のことも父親とは言わなかった。
だが、心の中では本当に大切に思っているのだろう。亡くなった兄の娘だからではなく、本当に娘として大切にしたかったのだ。
その思いは夫人のせいで叶わなかったが、もしソフィアが伯爵を許すのなら、きっと良い関係を築いていける。
「頭を上げろ。伯爵の協力がなければソフィアは既に手遅れだったかもしれない。俺の方こそ助かった。礼を言う。」
俺が感謝の言葉を伝えると、リアムとルイスもどこか思うところがあったのか、口を開いた。
「義父上…」
「…っ!」
義父と呼ばれたことに相当驚いたのだろう。瞳が何かを伝えるように動いている。
「ソフィを助けてくださり、本当にありがとうございました。」
リアムが礼を言う。
それに続いて、ルイスも口を開けた。
「手紙の件もです。あの手紙を見せてくださらなければ、俺たちは今頃ソフィのことを誤解していました。だからありがとうございます。」
リアムとルイスの言葉を聞いた伯爵は自分のことを責めるように言葉を捲し立てた。
「…私は、お前たち双子に礼を言われるようなことは何もしていない。…義父上?私は父と呼ばれるようなことなど何も出来なかった。ソフィのことも蔑ろにした。私は、……お前たちに父と呼ばれる資格なんて持ち合わせていない。」
俯いて、悔しそうに、後悔しながら、一つ一つ言葉を紡いでいる伯爵の姿は各々の後悔している時の姿と重なった。
俺は初対面の時の態度やソフィアを拷問にかけてしまったときのこと。
リアムとルイスは十一年も顔を合わせず、手紙のことを勘違いしたまま一方的にソフィアを責めてしまったこと。
「…それなら俺たちだって……!」
ルイスも思い出したのだろう。伯爵を睨みつけて今にも飛びかかりそうな勢いだ。
だが意外にもルイスにしては冷静に話をしていた。
「俺もリアムも、ソフィに兄だなんて言われる資格は持ち合わせていません。…けど!ソフィが望んでくれたんです!俺たちがソフィの兄でいることを許してくれたんです!だからもうソフィを悲しませる行動をしないよう、兄という言葉を自分の戒めとしています。あんたも俺たちの義父なら、ソフィの義父なら!それくらいの覚悟を持ったらどうですか…。」
「…っ」
「ルイスの言う通りです。ソフィにお義父様と呼ばれる覚悟がないなら、会わない方が良いでしょう。義父上自身が思っている以上に辛くなりますよ。俺はソフィにリアム兄様と呼ばれるたびに間違いを犯したあの日のことが鮮明に蘇ってきます。」
ルイスの言ったことは事実だった。
俺もどれだけ後悔したことか。
今だって、誘拐を未然に防げなかった悔しさと後悔で頭がおかしくなりそうだ。
「…それでも、ソフィアが私に許可をくれたら、私に話をさせて欲しい。それがどれだけ辛かろうと、それはこれまでのソフィアの人生を思えば優しいものだ。」
「……もう決まったな。ソフィアが目覚めて伯爵が話すのを許可した時に伯爵はソフィアと話せ。その間に俺たちは出来ることするぞ」
「「はい…!」」
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