ep48.死にたくない
…今は朝なのか、昼なのか、夜なのか
ここには窓もない、故に外の光も一切入って来ない。
ただ義母が同室にいて、1時間に一回毒薬を飲ませてくることだけは分かった。
これで9回目。つまり、ここに来て9時間が経とうとしている。
私の身体はただでさえ弱い。そのうえに毒薬を飲まされるのだから、身体の痛みは増していくばかりだ。
限界を迎えているのは分かっているのに、毒を身体の中に入れないようにする手段がない。
義母はスポイトで私の喉に直接毒を垂らしてくる。だから飲み込まずとも自然に毒が身体の中に浸透する。
意識を保っていられるのは多分緊張のせいなのだろう。
「お義母様、…どうして、私にここまで恨みを抱くのですか……?」
理由は大体分かっているから再確認のようなものでもあり、最後の情のようなものだった。
「はっ、何当たり前のことを聞いているの?あなたがあの忌々しい女の娘だからに決まっているでしょう?あの女がいなければ、私はあの人と結婚出来ているはずだったのに…!だから、お前を殺してあの女を後悔させてやるのよ!」
意図せず笑ってしまいそうになる。
この人の考えていることがあまりにも予想通りで。
私とお母様は当たり前だが別人だ。それでも割り切れない気持ちがあるのだろう。それは分かる。
けど、だからと言って害を加えて良いのかと問われればこれも当たり前だが"いいえ"だ。
仮に義母のような人が多く現れれば、世界は復讐で溢れかえってしまう。
今が国同士の問題を除き、殆ど殺人が起きないのは皆どこかで感じている負の感情をしっかり制御出来ているから。
しかし、義母はそれが出来ていない。
自分の心の赴くままに行動している。
だから、義母の人生は上手くいかなかったのだろう。義父だって義母を幸せにしようと頑張っていたはずなのに、その頑張りを義母は自分自身の手で最後の最後まで台無しにした。
「残念です。お義母様。」
「あんた、何言って」
義母が訳が分からないと言った様子で問いかけようとしてきた瞬間、下の方から複数の足音が聞こえてきた。
顔も声も聞こえないが、レオとリアム兄様、ルイス兄様が来てくれたのがすぐに分かった。
「もうこんなことはやめにしましょう。お義母様。殺人はまだ犯していないのですから今ならまだ取り返しが付きます。自分から反省した様子を見せれば、すぐに牢から出られるはずです。ですから…「黙れ!」」
お義母様に何をされようと、言われようと、私が自分から出ていくまでは一応家に置いてくれた。
だから捕まったとしても少しでも罪が軽くなるようにと思って言ったのだけど無駄だったようだ。
「もう誘拐してしまったんだから後戻りなんて出来ないわ。それにどうせ牢に入れられてしまう。そうすれば社交界の笑い者よ。なら、あなたを殺してしまった方が良いと思わない?」
義母が不適な笑みを浮かべた瞬間、嫌な予感がした。
「っ…!?、」
私はありったけの大きな声でレオとお兄様たちを呼んだ。
「公爵様!リアム兄様ルイス兄様!聞こえますか!!私は屋根裏部屋に…ン…!」
叫んですぐ、義母に口を塞がれた。
そして、義母が口を塞いでる反対の手で薬の蓋を開ける。
「ゆっくり殺してやろうと思っていたけど、事情が変わったみたい。このままだとあなたを殺せないわ。さぁ、口を開けなさい。」
私は全力で拒否をした。
しかし、そんな必死な抵抗も虚しく、結局義母の口を押さえていた手が私の口の中に入ってきた。
「私の手を煩わせないでちょうだい!さあ…!これであなたも終わりよ!」
義母が私の口に突っ込んでいる方の手と反対の手で毒を喉に全て垂らした瞬間、私と義母がいる部屋の扉が開いた。
「ここか…!ソフィア!」
「ゲホッ…!っ…」
「ソフィア…!!…お前、今すぐその手を退けろ」
「ッ嫌に決まってるじゃない。娘を返して欲しいんだったら私を見逃しなさい…!」
義母の言葉に、レオもリアム兄様もルイス兄様も固まってしまった。
レオとお兄様たちが来てくれたからもう安心だと思ったけど、どうやらそういう訳にもいかないみたい。
まさかここに来て私を人質にするなんて思わなかった。
とことん私を利用するつもりのようだ。ただ、そんなことをされ続けて私が黙っているかは別だけど。
だって、ただでさえ迷惑をかけているのに、これ以上迷惑はかけられない。
今、義母はレオの威圧に耐えるので精一杯のようで、私のことをあまり気にしていない。これなら多少動いても気づかれないだろう。
ということで、両手足を結ばれて寝転がされている自分の身体を勢いよく転がして思いきり義母の足元にぶつける。
どこからその体力が出てくるのかと自分でも思うが、もう深くは考えないことにした。後が大変なのは分かりきっていたから。
義母が私の体当たりを予想していなかった…というか、義母の行動は出来ないことを見越してのことだろうけど義母の予想は外れ、義母は一瞬体勢を崩した。
その瞬間をレオもお兄様たちも見逃さなかったようだ。
「…!今だ!」
レオの合図とともに、リアム兄様とルイス兄様は義母を押さえつけて確保した。
その光景を見て緊張が解けたのか、毒による身体の不調が私を一気に襲った。
「っあ"ぁ"…ガッ…、っ…ゲホッゲホッ!ッ"ハァ…」
私の呻き声とやら喘ぎ声やらを聞きつけてか、駆け寄ってくれた。
レオは縛られていた手足を解いてくれ、床に寝たままの私の身体をそっと起こして頭を持ち上げ優しく支えてくれた。
「ソフィア…!血が…!」
レオに私は大丈夫だと伝えたいけど、呼吸がしづらいせいで言葉を発するのもしんどい。
おそらく毒のせいだろう。しかし、幸いなことに全て飲み切る前に少しだけ吐き出せたのは良かったというべきか。
現時点で死に至ることはないと思う。それでも痛いのには変わりない。
意識が朦朧とする中、最後の力を振り絞って私は伝えた。
「…こうしゃく、さま……私……死に。たく…ない、です…」
「…!!」
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