ep46.ソフィアの失踪?『公爵視点』
ソフィアがいなくなった。
一枚の手紙を残して。
その内容はとても簡潔で、綺麗なはっきりとした字で描かれていた。
【公爵様へ
私は残りの時間を過ごすことが辛くなってしまいました。部屋を使わせてもらったこと心より感謝致します。今までありがとうございました。
ソフィア】
手紙の内容を見た俺は思わず机を思い切り叩いた。
せっかく俺はソフィアを助け出す機会を貰ったのに見逃してしまった。
また一人で溜め込ませてしまった。
追い詰めさせてしまった。
ソフィアの大丈夫は大丈夫じゃないと分かっていたのに、こんなことになるなら無理にでも本音を聞くべきだった。
ありとあらゆる後悔が俺の頭の中を支配していると、先思い切り机を叩いた音が聞こえたのか、リアムとルイスが来た。
「公爵様、何かあったのですか?」
「…お前たちか…入れ。」
俺の言葉を聞いた2人は何か察したのか扉を勢いよく開けた。そしてすぐに気がついたようだった。
「…ソフィアは……」
「…読め」
リアムとルイスは言われた通りにソフィアが書いた手紙を読み始めた。
数十秒が経過した頃、リアムがもう少しだけ時間がほしいと言ってきた。
ソフィアがいなくなった今、俺の時間なんてどうでもいいと承諾した。
それから10分が経過した時だろうか。
俺が肘を膝につけて座り俯いていると、リアムにしては焦った声で俺の名前を呼んだ。
「どうした?」
俺が聞くと、リアムは俺が1番恐怖していることを言った。
「ソフィが…誘拐されたかもしれません……。」
「…っ!!?!どういうことだ…!」
「根拠は2つあります。1つは筆跡が違います。ソフィの字体を見たのは数年前に送られてきた手紙が最後ですので、これでは正直確証には至りませんでした。」
リアムが顔を顰めて淡々と説明する。
その間に、自分の顔色がどんどん蒼白になっていくのが分かる。
ルイスも辛そうだ。だが、説明を止めるわけにもいかなかった。
リアムにとってもルイスにとっても、もちろん俺にとっても、聞きたくないのは同じだった。
「二つ…。こっちもソフィの性格を考えればの話になりますが、俺たちにとっても公爵様にとっても、一つ目より二つ目の方が信用に至るかと思います。」
俺は重い口を開けた。
「話してみろ…」
「…二つ目は、ソフィは手紙を書く際、絶対1人だけの名前を書くようなことはしません。必ずソフィが手紙を書くなら、公爵様とルイスと俺の名前、そして公爵家のメイドや執事、料理人にも感謝の気持ちも書くと思うんです。」
「…!」
確かにそうだ。
ソフィアは誰か1人だけに感謝を伝えるような人ではない。
それに、ソフィアの今の体力的に、もし本当に自らここを離れたのだとしたらそう遠くへは行けないだろう。
つまり、誘拐ならば範囲は広く、自ら出て行ったのだとすればすぐ近くにいるはずだ。
今も俺たちのいない間にソフィアの心臓が痛くなっていたらと思うと怖くて堪らない。
「っ分かった。捜索を開始する…。誘拐の可能性が高いと思うが、万が一自ら出て行った場合も考慮して邸宅近辺の街は公爵家の騎士団で捜索する。俺とリアムとルイスは伯爵領に行くぞ。」
「「承知しました」」
「グレイ」
俺の1番の側近である執事グレイソンを呼ぶと、足音もなく「ここにおります」と平常運転で来た。
グレイは気配を消すことを得意としているため、リアムとルイスも固まってしまった。
だが俺は変わらずグレイに指示を出した。
「今言ったことを聞いていたな。すぐに副団長に伝えろ。指揮は副団長に取らせる。それから俺とリアムとルイスはキャンベル伯爵領に行ってくる。その間の公爵家の指揮はグレイが取れ。分かったな」
「かしこまりました。お任せください。奥様と共に無事のお帰りをお待ちしております。」
「ああ、必ず連れ帰る。リアム、ルイス、行くぞ」
「はい」
キャンベル伯爵の家に行くまでは馬車で半日、馬に乗ってその半分と言ったところか。行くだけで大分時間はかかってしまう。
だが仕方がない。手掛かりがあまりにも少なすぎるのだ。
唯一の手掛かりと言えば、ソフィアの元婚約者が言っていた義母には気をつけろという言葉。
とにかく伯爵領に行かなければソフィアがどこに行ったかなど検討もつかないだろう。
元婚約者が残した言葉はそれくらい曖昧な言葉だった。
それでも、縋るしかない。
元婚約者が残した言葉が意味のあるものだと信じて、俺たちは馬を走らせ伯爵領に向かった。
その間、キャンベル伯爵のことをリアムとルイスから聞いた。
「…キャンベル伯爵はどんなやつだ」
「俺が以前会った時、悪い人ではないと思いました。」
「俺もです」
リアムもルイスも迷いなく答えたことから、それは本当のことなのだろう。だとすれば、ソフィアと会わせるとまずいのは義母の方か。
しかし、まだ確証が足りない。
ソフィアの義父が本当に信用に足る男なのか、しっかり見極めなければならない。
「何故そう思った?」
聞くと、リアムが落ち着いた声で応える。
「この前…俺たちがソフィアを誤解したまま伯爵領に向かった時、ソフィアが今まで書いていた手紙を全て箱の中に入れて保管してくれていたのを見せてくれたのです。本当ならば義母の手によって捨てられるはずだったのですが、義父が残してくれたようで。」
「そうか……」
何となく理解した。
ソフィアの義父は蔑ろにするためにソフィアと距離を取り会話しなかった訳ではない。そしておそらく、それはソフィアも分かっているのだろうな。
昔の話をしている時、義父への嫌悪感が感じられなかった。
ということは、ソフィアの心を滅茶苦茶に引き裂いたのは徹底的に義母の仕業という訳だ。
「よく分かった。義父は話が通じそうな相手で良かったよ。」
久しぶりに俺の性格の悪さが顔を覗かせた。ソフィアとたくさん話すようになってからは減っていたのに。
反対に、ソフィアのこととなると口の悪さも増すようだ。そんな俺を見てリアムもルイスも少しため息をついて言った。
「ごもっともです…。」
後ろ越しに聞こえてくる声は呆れ混じりの声だったが、どうやらそこは共感してもらえたらしい。
「よしっ、伯爵のことも分かったし急ぐぞ。」
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