ep13.誰の裏切り?
「ありがとう、令嬢。」
「…?ありがとうとはどういうことでしょうか。私は何もしていませんよ?」
「いや、俺が女性と触れられるよう協力してくれただろう。そのことへの礼だ。」
「それなら、やはり私は何もしていません。全て公爵様の努力があってこそですから。」
「それでも、令嬢がいなかったら俺はこれからも女性と触れることなんてしなかっただろう。だから助かった。」
お礼を言われるのなんていつぶりだろう。
素直な気持ちで言われるのはなんだかむず痒いような、だけど心が温まるようなそんな気持ちになった。
「…お役に立てたのなら良かったです。」
「…令嬢、これからも時間がある時はデザートを食べる時間、共にしても良いだろうか。」
「…!もちろんです。」
少し、ほんの少しだけ、今のレオと小さい時のレオが重なって見えた。
少しでもレオの休める場所となれたなら良しとしよう。そう思えるくらいに、レオは可愛かった。
◇◇◇
婚約発表から三週間が経った。そろそろレオに言われた書類整理にも慣れてきて力になれていると感じたこの頃。
今日もいつも通り、午前中は身体を休め、午後からレオの仕事を手伝い、三時にデザートを挟む。
最近は夕食を共にすることも多くなった。
そのためか、レオとの距離もだんだん近づいているような気がしていた。
暗かった瞳もだんだん光を取り戻しつつある。
このままいけば、私が死ぬまでには幸せになれるだろう。つい数分前まではそう思っていた。
しかし、それは浅はかな考えだったと言うことに、私は今、改めて気付かされている。
「地下牢へ連れて行け。」
「「はっ!」」
なんと、私は冤罪で地下牢へ連れて行かれることになった。
あまりにも突然で、私も正直思考が追いついていない。
レオの話を曰く、私の部屋に掃除に来たメイドがタンスの上の茶封筒を見つけたそうで、大事な書類だったら私に渡さないといけないと思い中を見たところ、レオの重要な書類だった。ということらしい。
抵抗すれば何をされるか分かったものではないため、大人しく騎士に挟まれて地下牢に閉じ込められた。
そして
「本当のことを言え。そうすればお前の罪は軽くなるだろう。」
「私はやっていません。」
「令嬢…!俺は、あなたを出来るだけ傷つけたくはない。だから本当のことを言うんだ。」
レオは、私がやっていないとは考えないのだろうか。…いや、これも経験からなのだ。
レオに取り入ろうとした女性は、情報が欲しかったりレオからの愛が欲しかったりと、欲求に塗れていたから。
でもここで、嘘といえど私がやったと言ってしまえば、私まで結局は他の人と変わらないと、ショックを受けてしまうだろう。
せっかく幸せになるための一歩を踏み出した所なのに、私が足を引っ張ってしまっては意味がない。
だからどれだけ言われても、何をされても私が答えることは決まっている。
何が起ころうと、レオを裏切ることなどしてはいけない。実際してはいないが、私の気持ちが折れてやったと嘘を言ってしまえば、またレオは傷ついてしまうから。
「本当に、私はやっていません。」
「………分かった。…申し訳ないが、お前が証言するまで拷問をさせてもらう。衛兵、令嬢の手と足を縛って立ったまま固定させろ。」
レオが命令すると、私はレオが言った通りに壁に貼り付けられ、手足は拘束された。
「お前も、他の奴らみたいに綺麗事を並べていただけだったんだな。」
「…っ_!違います!私は…!」
「黙れ!…もう二度と、俺に近寄るな。」
レオに対する幸せになってほしいという思いを本人に否定され、十数年振りに大きな声を上げたがそれも無駄に終わってしまった。
あの一ヶ月は何だったのか。レオにかけた言葉も、私の態度も、私がしてきたことを全否定されてしまってはなす術がない。
そして、レオは足早に此処を去ってしまった。それと同時に誰かが入れ替わりで入ってくる音がした。
その足音は、私が入っている地下牢の前で止まった。やがて、私に話しかけてきた。
「…君がソフィアちゃんかなぁ?」
「…そうです。」
「そっかぁ。せっかく可愛いんだし傷つけたくはないんだけどごめんねぇ。レオの頼みだし拷問って傷つけるのが仕事だからさぁ。早く吐いたほうが身のためだよぉ。」
全てを他人事のように言う拷問を仕事にする彼は少し不気味だった。
こうして始まった地下牢生活。地下牢に閉じ込められた初日は、鞭で10回打たれた。
「今日のうちに告白しなぁ。いつまでレオが生かしておくって言うのかは分からないからねぇ。」
「私は何もやっていません。」
「うんうんそっかぁ」
私がやったと言う言葉以外信じる気なんて微塵もない癖して、「何が告白しな。」だ。
ふざけるのも大概にしてほしい。
「今日は一先ず終わりだよぉ。また明日ねぇ」
そう言って名前も知らない男は去って行った。
暇つぶしも何もない。しかも眠れない体勢で体力だけが奪われていく。
食事も簡素なもので、一日にパン一つだった。
ちなみに、パンを届けて食べさせてくれたのはアイヴィーだった。
手は縛られているため食べさせてもらわないといけないのだが、アイヴィーはとても丁寧に食べさせてくれた。
去り際にボソッと「お嬢様…」と悲しそうな声色で言っていたので、呼び止めようか迷ったけど、人のことを気にしている場合ではなかったのでやめた。
夜は壁に貼り付けられた状態では寝れず、初日は睡眠なんて出来るわけもなく一日中起きていた。
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