本当の想い
完結編です。
ここまで読んで下さって、本当に、ありがとうございます。
シャルロット王女と大国の王子の縁談の話を聞いた翌日、
ライムは、近衛騎士長のアルフレッドの元に向かっていた。
少し、確認したいことがあったのである。
アルフレッドは、近衛騎士の控室にいると聞いていた。
控室の近くまで来て、ライムは、扉が開いていることに気が付く。
そして、そっと中を確認すると……そこには、アルフレッドとシャルロットの姿があった。
どうやら、二人だけのようである。
二人は、何やら、話をしているようであった。
シャルロットは、アルフレッドを真っ直ぐに見つめていた。
その姿を見て、ライムは直感で悟ったのだった。
シャルロットは、アルフレッドに恋をしているのだと。
二人の会話は、はっきりとは聞こえなかったが、シャルロットは悲しそうであった。
アルフレッドは、シャルロットを慰めているようにも見えた。
もしかしたら、縁談の件について、何か話をしているのかもしれない。
ライムは、どうするか迷ったが、少し離れたところで、待機することにした。
しばらくすると、シャルロットが控室から出て来た。
シャルロットの様子は、少し悲しそうでもあるが、少し嬉しそうでもあった。
その様子を確認して、ライムは、控室へ向かう。
「アル、少しよろしいでしょうか」
「ああ、ライム君か……どうぞ入ってくれ」
「さきほど、王女が……」
「ああ、見ていたのか。そうなんだ。実はな……」
アルフレッドは、一瞬、迷うような様子を見せるが、続けて言う。
「王女に縁談があったそうでな」
「噂には……」
「お相手は、あの大国ゼルメスのアンドレア王子だそうだ」
「確か、第一王子でしたね」
「そうなんだ。だが、王女は迷っておられるようでな」
「迷っておられる……のですか?」
「ああ、何でも」
アルフレッドは、少し困ったような顔をした。
「王女には、他に想い人がいるそうなんだ」
「想い人……ですか……」
「ああ、だが、私も困ってしまってね。
こんな時、王女にどう声をかけるべきか、皆目、見当もつかない」
そう言って、アルフレッドは苦笑した。
ライムは……確かめなければならないと思った。
「アルも……王女がお好きなのですか?」
「ん?も?それは、一体、どういう……」
「私は……王女を」
ライムは、そこで一旦、言葉を区切り、一気に続ける。
「お慕い致しております」
「ああ、私もだ。王女を心よりお慕いしている」
ライムは、少し迷ったが、本心を伝えることにした。
「……王女を愛しているのです」
アルフレッドは、少し驚いた顔をする。
「ああ、ライム君、すまない、そういう意味だったのか……。
いや、私は……そうだな」
アルフレッドは、少し困り顔で苦笑しながら、続ける。
「私のそれは、そういう意味ではないんだ。
つまり、君は、一人の男として彼女を愛しているのか?」
「はい……私は、幼少の頃に、王女を一目見てから、ずっと……」
「幼少の頃に?」
「はい、王女は、私が幼少の折に、我が国の王宮を訪問して下さったのです」
「王宮……すると、君は、その時、王宮にいたのか。
もしかして、君は、王子……なのか?」
「お察しの通りです……黙っていて、申し訳ありません」
「そうだったのか……それは、驚いたな。
それなら、敬語をお使いするべきだったか」
「アル、いいんです。この国では、一介の兵士に過ぎないんですから」
「そうか……」
「私は、王女にお気持ちを伝えたいと思っておりました。
しかし、王女の立場を考えると、これ以上は……」
その時、シャルロットは、まだ控室の側にいた。
控室から去ろうとした時に、偶然、二人の会話が耳に入って、
ついつい好奇心から、盗み聞きしてしまったのである。
そして、シャルロットは……二人に気が付かれないよう、そっとその場を去った。
次の日、ライムは、人間の姿のままだった。
「シャルロット様、おはようございます」
にこやかに笑いかけながら、挨拶をするライム。
しかし、シャルロットからは、いつもとは違い、すぐに挨拶が返ってこない。
シャルロットは、少しショックを受けているようだった。
「ライム様、おはようございます。今日は、人間のお姿なのですね」
少し遅れて、残念そうに言うシャルロット。
その頬は、少し赤くなっていたのだが、ライムは気付かない。
「もし、シャルロット様がお望みでしたら」
「いえ、いいのです。その……ライム様が……
ライム様は」
「はい」
「いえ、何でもないです。私、行かなければ」
「いってらっしゃいませ、シャルロット様」
シャルロットは、行こうとして、しかし、足を止め、再び、ライムに話しかける。
「私は、ライム様のライオンのお姿も好きです」
シャルロットは、俯き加減で言う。
その顔には、いつもの微笑みはなく、真剣な様子であった。
「光栄でございます」
ライムは、いつものように、シャルロットににこやかに笑いかける。
シャルロットは、その頬をますます赤く染めた。
「それでは、私、失礼致します」
シャルロットは、そう言うと、足早に去って行く。
ライムは、そんなシャルロットの様子を、少し不思議に思った。
いつもであれば、微笑んで下さるのに……。
なぜ、今日は、いつもとは、ご様子が違うのだろう。
ライムは、もうシャルロットのことは諦めようと思っていた。
そんなライムに対して、シャルロットは――ライムを少しずつ意識し始めたのだった。
そして、ここから、二人の物語は始まる――。
最後まで読んで下さって、本当に、ありがとうございます。




