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世界調整  作者: 虹某氏
3章【妹】
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77話 アリスとの接触

 あれから俺は真央と別れてアリスの元へ向かう事にした。

 最悪、敵対したとしても俺なら何とかなるだろう。


「夜桜。どこに行くつもりですか?」

「……白愛さんか」


 空は恐らく桃花に任せたのだろう。

 思考回路が破壌してるホムンクルスより桃花の方がよっぽど適任だ。

 まぁ彼女もそれを分かる程度には成長してるわけか。


「空の助けになるかもしれない人物に会いにいく」


 この世界の空とアリスは関わりがない。

 でも空はアリスを覚えてる。

 だったら多少は助けになるはずだ。


「私も行きます」

「勝手にしろ」


 俺は暗殺姫とアリスの元へと行く事になった。

 アリスの元までは電車で二時間。

 最初は真央が連れてくと言ったが流石に悪いので断った。


「まだ貴方には聞きたいことが多いですから」

「必要な事は全部言った」


 言ったところで戦闘しかできねぇコイツじゃ意味がない。

 でもこれくらいは言っといてもいいか。


「空はお前がホムンクルスだって知ってるぞ」


 その瞬間、暗殺姫の顔が青ざめる。

 これで電車の中は静かに過ごせそうだ。

 俺はそのまま駅の売店に行く。

 折角電車に乗るんだからこれを食べねば。


「この駅弁頼むわ」

「毎度ありー」


 やはり電車での旅に駅弁は必須。

 それは真央との共通認識だ。


 ……一回でいいから姫と一緒に食べたかったな。


「おい。早くしないと電車出ちまうよ」

「……そう……ですね」


 俺は暗殺姫の腕を引っ張り電車に乗る。

 まったく乗り遅れたらどうするつもりだ。

 いや、暗殺姫なんだから走った方が早いかもな。


「白愛さんの分の駅弁も一応買ったけどどうする?」

「……いりません」

「そうか」


 だったら真央へのお土産にするか。

 夜の宴のツマミに丁度良いだろう。

 それに運の良い事にボックス席も取れた。

 おかげで弁当が食いやすい。


「いただきます」


 俺は駅弁の箱を開ける。

 中にはご飯に卵焼き。

 それにハンバーグとかアスパラガスとか色々入ってる。


「王道だな! いいねぇ!」

「電車の中では静かにしてください」

「ったく。この時間なら人は殆どいないんだから多少はいいだろ」


 俺は駅弁に手をつける。

 相変わらず美味だ。

 これこそ駅弁だ。

 真央との旅のお供も駅弁だった。

 そういえば真央と英国を旅した時に食べた駅弁はめちゃくちゃ美味かったな。

 また食いに行くか。

 真央の転移なら一瞬だ。


「……貴方の目的は何ですか?」

「内緒」


 姫の事を知ってるのは真央と空だけでいい。

 それにあまり知られたい事ではない。


「でも、空を助けたい。お前との利害は一致してるはずだ」

「……そうですね」


 暗殺姫はどうせ物事をしっかり考えられねぇ。

 今はそれだけで良い。

 空が目覚めたら全て説明するだろ。


 それに目覚めた時には全てが解決だ。


「おぉ! 海なんて久しぶりだ!」


 電車がトンネルを抜けて一面に青い海が広がる。

 とても透き通っていて綺麗だ。

 夏の海も良いが冬の海も良いものがある。


「……そんな珍しいものですか?」

「たしかに珍しくはねぇが見るとこう心に来るものがあるじゃねぇか」


 やっぱり所詮はホムンクルスか。

 幸いにも心はあるみたいだから時を重ねれば分かるようになるだろう。

 今はまだ成長途中だ。

 一言で言うなら大人だと思ってる子供だな。


「波の音が聞こえねぇのが残念だな」


 暗殺姫から返事は返ってこない。

 別に求めていたわけではないが。

 それにしても海を見ながら食べる駅弁も先程と一風違って美味いな。

 やはり駅弁が旅のお供に適してるとよく分かる。


「景色を見てるだけって言うのも暇だな。なんか持ってないか?」

「トランプならありますが……」

「ならそれやるか」


 暗殺姫はトランプを何も無い所から出す。

 暗殺姫の能力は亜空間への干渉だったのか。

 まぁ異世界モノで言うと収納ボックス。


「最初は無難にババ抜きでもするか」

「そうですね」


 暗殺姫はカードを素早く切り俺に配ろうとした。

 しかし、そんなのを俺は許さない。


「待て。配る前に俺も切る」

「……どうしてですか?」

「不正でもされたらたまったもんじゃないからな」


 真央の話だと暗殺姫にチェスを仕掛けた時にボロ負けしたそうだ。

 真央はチェスではかなり強者。

 それこそ相手がスーパーコンピューターでも完膚なきまでに勝てるレベルだ。

 間違いなく化け物。

 でも俺は真央の敵討ちを込めて勝つッ!!


「随分とゲームに熱くなるんですね」

「まぁな。真面目にやらねぇと何事もつまらねぇよ」


 俺は暗殺姫からカードを受け取り再び切る。

 とは言っても真面目に切る気はない。

 ババが暗殺姫の方へいくように切る。

 悪いが化け物と正面からやる気はない。

 不正してやるよ。


「……ほらよ」


 そして暗殺姫に配る。

 俺の手元には調整した通りババは来ない。

 あとは暗殺姫からババを引かなければいいだけ。


「先にどうぞ」

「悪いね」


 俺はカードを引く。

 取るのは左から二番目。

 当たる時は当たるし勘だ。


「……どうしました?」


 しかし、どういう運命か俺の元へババが来た。

 いや、まだ暗殺姫に引かせれば……


「右から四番目にババ」

「な!?」

「目線で丸わかりですよ」


 そして暗殺姫は一番端のカードを取る。

 なんだこれ……


「ちなみに先程、ババを引いたのは偶然ではありません。悪いですが目線で誘導させていただきました」

「……チートが」


 それから暗殺姫の手元へババが行く事はなかった。

 恐らく真央がチェスで負けたのは手を誘導されたから。

 こっちの手が彼女の理想通りに動く。

 そんなの勝てるわけがない。


「弱かったですね」

「ったく。お前が強すぎるんだよ」


 間違いなく規格外。

 真央が負けたのも納得だ。


「さて、次は何します?」

「ジジ抜きだ」


 しかし今回は目線で誘導された。

 でも、ババが何か分からないジジ抜きならそれは出来ない。


 ◆


『間もなく青色の街〜 間もなく青色の街〜』


 そんな軽やかな声が聞こえる。

 しかも問題は残る、


「どうして勝てねぇんだよ!」

「貴方が弱いからですよ」


 俺は暗殺姫に一回も勝てなかったのだ。

 ダウトにポーカーにブラックジャック。

 どれ一つとしても勝てなかった。


「さて、行きましょうか」

「そうだな」


 俺は探知を使う。

 この能力は半径1km以内にいる使徒を索敵する。

 この街に使徒が何人もいるとは考えにくい。

 反応は間違いなくアリス。


「向かう先は岬にある家だ」

「分かりました。行きますよ」


 そして歩き出しす。

 岬に向かうに連れて当然だが塩の臭いが強くなる。

 それに海の近くだけありベタベタする。


「あそこですか?」

「……探知によるとそうだな」


 暗殺姫が指さした方向にあるのはキノコみたいな家。

 俺は段々とアリスという人物が掴めなくなってきた……


「前に空様と来た時にあれはなんだと話題になりましたがまさか人が住んでるとは……」

「ちなみにエニグマ関係者な」

「……そういう事は早く言ってください」


 そんな会話をしてるとアリスが出てきた。

 当然と言えば当然か。


「使徒が私になんの用?」

「紹介が遅れたな。夜桜百鬼だ」


 その瞬間、アリスの顔が強ばった。

 やっぱり名乗る時は楽しいな。


「ちなみに隣にいるのが暗殺姫だ」

「……暗殺姫? まさか、夜桜と暗殺姫が手を組んだの!?」

「違います。訳あって一緒にいるだけです」


 もう少しからかっても面白かったが終了か。

 そろそろ本題に入るか。


「暗殺姫はここで待ってろ」

「どうしてですか!?」

「お前がいると色々とややこしいんだよ」


 アリスなら理解する頭があるがお前はないからダメだ。


「向こうに港あるからそこで釣りでもしとけ」


 どうせ亜空間に釣りセットがあるだろ。

 俺は暗殺姫を追い払いアリスの家へと入っていた。


「うぅ。男の人を部屋にいれるのなんて初めてなのに〜」

「……そこかよ」


 ていうかもっと警戒しろよ。

 お前が前の世界だと一番弱かったんだから。


「おや、私があまりにも無防備だから驚いてるね。それはそうだ。だって私がどんなに警戒しても無駄だもん! もう夜桜が来た時点で私の人生詰んでるもん! いっそひと思いに殺せーーー!」

「いや、殺さねぇよ」


 そういう事かよ。

 もっと生に執着しろよ。


「あ、でも死ぬ前にお刺身食べたかった……」

「だから殺さねぇって」


 すげぇ調子が狂う。

 ていうか空はよくこんなやつの相手を出来たな。


「は! 私は気づいてしまった。今ここで夜桜側に寝返れば生き延びられるではないか」

「魅力的な提案だが却下」


 誰を味方にするか決めるのは真央。

 俺じゃねぇ。


「いや、ダメだ。夜桜側に付いた瞬間にルークの野郎に殺される。大体時間止めなんてチートなんだよ」

「だから俺の話を聞けって」


 凄く疲れる。

 なんなんだこの女。

 前の世界ではもっとしっかりして見えたぞ。


「さて、覚悟決めますか。それで夜桜が私に何の用かな?」

「いや、切り替え早すぎだろ……」


 もう俺が再起不能(リタイア)

 降参したい。

 でも空のためだ。

 さっさと本題に入るか。


「一度しか言わねぇからその頭の悪い頭にしっかり詰め込めよ」

「口悪すぎでしょ! 私はこれでも女の子だよ!」


 そして俺はアリスに所々隠して語った。

 前の世界の事を……

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