ーー私のヒロインーー
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騒動の後、国王はローザンヌの言葉に感動し、王子を除いた者達の罪を減刑した。騒ぎの元凶であったフィオーレは死刑こそ無くなったが、実家のホーリー家は爵位剥奪の上財産没収となり、フィオーレは庶民になった。
学園を卒業したローザンヌは、幼馴染のブライアン・プランダー侯爵と結婚し、侯爵夫人となった。
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ローザンヌは、自室で読書を楽しんでいた。
「お、奥様。お茶をお持ちいたし……きゃあ!! 」
がっしゃんと、メイドがティーセットの載ったお盆を引っくり返した。
「何をやっているのっ!? 」
別のメイドが来て粗相をしたメイドを叱責した。涙ぐむメイドは……なんとフィオーレだった。
「おやめなさい。」
ローザンヌは本をぱたりと閉じて言う。
「奥様申し訳ございません。ご不快な思いを……。」
「かまわないわ……。あなたはおさがりなさい。」
「はい。かしこまりました。さあ、あなたはここを掃除なさい。」
「……はい。」
別のメイドは部屋を出て、フィオーレは割れたティーセットを片付け始めた。
「いたっ!! 」
割れた茶器でフィオーレはその白い指先を切った。
「大丈夫?見せて……。」
ローザンヌは屈んでフィオーレの手を取った。
「いけませんっ! 奥様! 」
フィオーレは手を引こうとしたが、その前にローザンヌはパクリとフィオーレの指を口に含んだ。
「はうっ! 」
ちゅっと艶かしく指先を吸われ、フィオーレは甘い声を上げた。ふっとローザンヌは微笑むと赤い舌で傷口をひと舐めして放した。
「さあ、後はこのハンカチで止血なさい。……ふふふ、こんな事で感じてしまったの?はしたない子ね……。」
ローザンヌに妖艶に微笑まれ、フィオーレは恥ずかしそうに胸を抑えた。
「も、申し訳ありません。ローザンヌ様……。」
「冗談よ、可愛いわねフィー。」
ローザンヌに頬を撫でられ、フィオーレは潤んだ瞳でローザンヌを見つめた。
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「ああ、本当可愛いわ、私のフィー。」
一人になったローザンヌは、先程のフィオーレの可愛らしい反応を思い出しくすくすと笑う。
フィオーレは庶民になった後、家族に捨てられ路頭に迷っていた所をローザンヌに拾われ部屋付きのメイドになった。メイドだが高待遇な扱いと優しいローザンヌに、傷付いたフィオーレは感謝し、癒され、心酔した。そしてフィオーレの思慕の念は募り、いつしかローザンヌを愛する様になっていた。
しかし、身分違い、主とメイド、女同士という壁があり、一時期はフィオーレは悩み心を病んだ。そして遂に自殺未遂を起こした。ローザンヌはフィオーレの涙ながらの告白を聞きそれを受け入れた。そして今の愛人関係に至るのだが……。
「まさか、こんなに上手くいくなんて。」
ローザンヌは全てが計画通でに笑が止まらない。
あのパーティーの一件以来、許しの天使の異名を持つローザンヌは、心優しき完璧な令嬢で通っていたが……実際は違う。
なんと彼女は、前世の記憶を持つ転生者だったのだ。
子供の頃に、この世界は乙女ゲーム「恋してっ! 愛してっ! 時々病んで〜。」だという事を思い出し、自分がヤンデレ系悪役令嬢ローザンヌ・ブロークンハート公爵令嬢に生まれ変わった事を知る。自らのバッドエンドを阻止しようと根回し、好んで見ていたヒロインと悪役令嬢友情エンディング(ちょっと百合っぽい)にしようとしたが、ヒロインも転生者だった為、ローザンヌの思惑通りには事が運ばなかった。
……なので、ローザンヌは方向性を変える事にした。まず主人公に逆ハーさせ舞い上がらせ、そこから落とし、手を差し伸べ、自分のものにしようと考えた。
……結果は大成功だった。
ナル王子には可哀想な事をしたが、ローザンヌはその事にも手を打っていた。
ナル王子の忠実なる美貌の従者に耳打ちした。
「ナル殿下をお慰めして頂戴……今がチャンスよ。」
幽閉に近い扱いを受けていたナル王子は、従者が慰める様になってから幸せそうにしているらしいと風の噂で聞いた。ローザンヌは前世の記憶で王子×従者の裏設定(公式)がある事を知っていたのだ。
そう、すべては彼女の脚本だったのだ。
「うふふ、みんな幸せ私の幸せ。」
彼女は幸福に包まれながら腹部をさすった。このお腹には夫の子供がいるきっとどちらに似ても可愛いだろう。フィオーレと子供と夫に囲まれた未来に夢はせるローザンヌ。
「誰にも渡さない……フィオーレたん、いえ、ヒロインは私のもの!! 」
許しの天使……中身は美少女スキーの乙女ゲーオタクは、今日も愛を叫ぶのだ。
これで完結になります。すごく楽しく書かせて頂きました。自分の欲望の為に頑張る主人公を書くのが楽しかったです笑。沢山のブックマーク本当にありがとうございます。
続編のヒロインは私のもの?? 〜それぞれの物語〜も始めました。よろしくお願いします!!