表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
再構築少女-元男でしたが今は女の子です-  作者: もやし豆腐
chapter 6 : They achieve a reunion
54/58

Episode 51 : 遺跡

お久しぶりです。

大変お待たせいたしました。

 遺跡の通路の大きさは、ゴーランにあった遺跡に比べると幾分か大きかったが、二人同時に通るのがやっとな感じだった。

 奥もかなりありそうで、照明機材を置いていない通路は手持ちのライトで照らしても先が見えない。


「なるほどなァ。こりゃかなりでかいブツを隠してたもんだ」


 隣でMCSのヘルメットの顎を擦るランドは感心したように呟いた。

 暫く通路を眺めたランドは、その巨体をゆっくりと後方にいる俺達の方へ向ける。


「班分けをする。マルメラ率いるブラボーは引き続き上部施設並び周辺の警戒を続ける。チャーリーはこの遺跡に危険が無いかの確認。デルタは一部を除いて上部施設で通信環境を復活させ<ヌアザ>と連絡繋ぐ。行動はじめ」


 全員が頷くとともにすぐさま行動を開始した。

 全員といってもこの場にいるのは班長クラスの部隊員だけではあったが。

 俺も頷くとデルタ部隊の隊員を追いかけようとした時だった。


「おっとっとぅ……お前さんはこっちだ」


 後ろからの声が聞こえたかと思うと、少し前進しかけた車椅子が突然動かなくなったかと思えば後ろに引き寄せられた。

 振り向けば、厳ついランドが俺の車椅子を掴んでいる。

 ついでに力加減をせずに掴んだらしい車椅子の持ち手が、MCSの腕力であらぬ方向へと曲がっているのも見えた。

 力加減という言葉をランドは知っているだろうか、いやきっと知らないだろう。

 それはともかく、


「通信設備を復活させるんだろ? 」

「ああ、そうだとも」

「なら俺も」

「お前さんは別行動だよ」


 ランドの言葉に俺は眉をよせ、視線をランドの顔に向けた。

 ランドが黙ったままなので、暫く見つめたままでいると、個人用周波数によって耳元のイヤホンから声が聞こえてきた。


「睨むなよ。なんでお前さんが残るのか。そんなこと、お前が一番わかってるだろう? 」

「あまり気が乗らない」

「そう言うなって。俺達は遺跡を見るのが初めてなんだ。案内役は必要だろう? 」


 そう言いながら、正面を歩くスィリー達にランドは目を向ける。

 俺もスィリー達のほうに視線を向ける。


「別に正面を歩けと言ってるわけじゃない。俺にこっそりアドバイスをくれるだけでいい、それならお前が気にしてる――本当のお前について――ことも問題はないはずだ。どうだ。それでもだめか? 」

「何回も入ったことはある。でも何があるかは正直分からない、前回がそうだった。それでもいいいのか? 」


 堅くゴツゴツとした機械仕掛けの腕が俺の肩を軽くたたいた。


「少なくとも俺たちよりは知ってるなら十分だレディ」


 振りかえれば、そう言いながらランドは背中のハンガーから銃器を取り出していた。


「安心しな。ビビりなお姫様のお守ならやってやるさ」

「――なッ。俺はおと――――「意地っ張りなクソガキだろ?」

「睨むな睨むな。どっちのお前だろうが俺さんにとってはお前はどこまでいってもガキなのさ。わかったら進めェ」


 眉をよせ、目を細め。歯ぎしりを小さくして俺は前を向いた。

 ランドにとっては男の俺だろうが、女の俺だろうが対して差はない、そういうことらしい。

 車椅子の荷物入れに入っていたMブラスターを取り出して、肘掛横についたマウントアームにブラスターを接続すると戦闘服の端末を操作しセーフティを解除する。


「自分の事くらい自分で守れる」


 俺はランドにそう吐き捨てると車椅子の車輪を回して先行するスィリー達の方へと向かった。


「しっかしよお。これなんでできてるんだ? こいつでも刃がたたねえな」


 スィリーたちに追いついたかと思うと、遺跡の壁に向かって粒子ソードの刃を滑らせる珍妙な行為をするスィリーを見つけた。

 どうやら壁に傷がつけれないことに驚いているらしい。


「壁の表面に微弱ながら磁場のシールドがあるので、粒子ソードでは切れないと思いますよ」


 そう話しかけると、スィリーが驚きの声を上げて俺のほうを向いた。


「マジかよレディ! もしかして遺跡に入ったことあんのか? 」

「前に、少しだけ」


 前に、と曖昧に答えたが前回はほんの数ヶ月前。更に言うならこれで遺跡に入ったのは17回目とかそんな感じだったはずだ。

 遺跡の壁にシールドがあるのを知ったのは、第三次海峡戦争の時だったから情報自体はだいぶ古いと思うのだが、スィリーはこのことを知らなかったらしい。

 MCSを装着しているが故の無感情さを補うように、スィリーは大きく体でリアクションをしてみせると、俺の頭に手を置き、撫ぜた。


「そりゃあ頼もしいぜえ」

「でも全部の遺跡が同じ構造って訳ではないと思うのでそこまで期待しないで欲しいです。それにこの情報自体は前から公表されてますし」

「あ? そうだったか、覚えてねえわ。そういう難しいこと! 」


 スィリーは大きく笑い声を上げていたが、これから誰が潜んでいるのかも分からない遺跡を進むのにこれでは不安しかない。

 しかも通信機から他にも「知らなかった」といった内容の発言が聞こえたのだから余計に頭が痛くなりそうだった。


「まあまあ、仕方がねえさレディ。こいつらはいつだって戦うことしか頭にねえんだ。それにその情報は公表されてるって言ったって、お偉いさんしかいない場所で発表されたんだ。俺たちみたいな庶民には伝わりきってねええのさ」


 いつの間にか追いついたランドが俺の隣に立ってぼやく様に呟いた。


「リュドミールは遺跡について何も言ってなかったのか? 」


 そう言うとランドは困ったように手を頭部にあてる。


「そうだな。聞いたことねえな。ただ俺たちとは他に、遺跡調査専門の部隊もいたと思うからな。そっちなら知ってたりするかもなァ」

「そういうものなのか」

「そういうもんなのさ」


 ランドはそう言ってから暫く黙り込んだかと思うと俺の前でしゃがみ込み、ヘルメットのバイザーを上げ、


「いいことを思いついたぜレディ。ちょっと遺跡について俺たちに説明してくれねェ? 」



 遺跡。

 遥か昔にこの銀河にやってきた人々、つまるところ俺たちの祖先が残した痕跡のことを示し、その代表的なものは彼らの乗ってきた超巨大移民船だったりするわけである。

 その他に代表される遺跡の種類は4つ、超巨大移民船から切り離された中型移民船、小型移民船、惑星探索用の着陸船、移民したものの滅亡してしまった移住者達の文明跡だ。

 そして前半の三つは纏めて、船舶遺跡と呼ばれ、そうではない文明跡を文明跡と呼ぶ。


 更にいうなれば一般的な認識では、船舶遺跡のことを遺跡と呼ぶ場合が多い。

 ちなみに前回俺が入ったのは、文明跡の遺跡で真空空間上に存在したものは全銀河初だった。


 そして分かっている範囲で超巨大移民船は、旧アダマスティア帝国の首都惑星アクロン、ヒューゴスティア連邦首都惑星ウィーズボスト、その他にもう1箇所とされていて、少なくともこのコロンダストリアにはないと俺は記憶している。

 すなわちこの遺跡はその他の4つの遺跡のどれかということになるわけだが、ここでひとつ注意しなければいけないことが何個かある。

 特に船舶遺跡と文明跡のどっちの遺跡なのかを把握することは一番初めにしなくてはならない。


 その理由として船舶遺跡と文明跡では、調査する際の危険度が大きく変わる為だ。

 ちなみに一般的な見分け方として遺跡の壁面に磁場フィールドがあれば船舶遺跡であるとされている。

 つまり今回の遺跡には磁場フィールドがあることから船舶遺跡であることを知ることができたというわけだ。


 さて、これが分かったからには俺たちはその探索を慎重に行わなければならなくなった。

 船舶遺跡では、環境再現区画の有無の把握とセキュリティシステム起動の有無の把握が重要となるわけだが、セキュリティシステムは遺跡に入れていることから考えると起動していないと断定していいだろう。

 起動していたのなら遺跡に入った瞬間に俺たちはシステムに侵入者としてナノマシンが襲い掛かってきて殺されてしまうからだ。

 今、俺も周りも何事もなく立っているということからも問題はないだろう。


 となるとここから重要になってくるのは環境再現区画の有無の把握となる。

 環境再現区画は、文字通りこの宇宙のどこかに存在する惑星の生態系を再現した施設で、広いものだと全長30Km²を超えるものも確認されている訳だが、この中に存在する生物が危険であることが多いため注意しなければならない。

 そしてこの環境区画が厄介といわれている理由はこの区画にだけ独自の動力と内部の環境維持機構がついているのでこの区画が破壊されていない限り、どれだけ歳月が過ぎようとも中にいる生命は維持機構により自己充足され――――


「――あうっ」


 突然、俺の後頭部に小さな衝撃と鈍痛――

 俺の思考と言葉が中断させられる。

 衝撃が放たれた方向に顔を向ければ、若干渋い顔をしたランドと目が合った。


「こんな電子ボードもノート端末もない場所で歴史の授業を初めてんじゃねェ」

「でも説明しろって言ったのはランドじゃないですか」

「誰もそんな長い説明をしろとは一言も言ってねェよ。見てみろこいつらを」


 ランドが呆れるように様に「前を見ろ」とジェスチャーをしてくるので、前を向いてみると、


「ああ、つまり俺達がいるのはどっちだったんだ?」「文明跡ってやつだろ?」「違う。ここはコロンダストリアだ」

「俺達こんなところで死ぬのか……」「諦めるな、俺達のプロテインはその程度では――」


 ……なるほど。

 彼らには俺の話した内容は難しかったらしい。

 各々が今俺の話したことを自分なりに整理しようとしているが、聞く限りだとそのどれもが間違った方向に理解されていた。

 そもそも理解できていない奴もいるしな。

 戦闘のエキスパート集団が必ずしもエリートであるとは限らない、改めて実感した瞬間だった。


 現代の兵士ってそれなりに頭よくないと武器も碌に扱えないとか言われてるはずなんだけどなあ……

 世の中には常識が通用しないことがまだまだあるのだと理解せざるおえない。


「そういう訳だレディ。できれば次はもっと省略してくれよ。全隊、前進する。この遺跡に森とか砂漠みてえな場所があるかどうかの確認作業を行う以上! 」


 ざわついていた周りはランドの一言ですぐに静かになると前進を始めた。

 最後の一行以外全てを省略されてしまったことが大分不満だったが、文句を言っても仕方がないので俺もその後に続いた。



 遺跡は現在の隊を二チームに別けて、調べることになった。

 組み合わせだが、俺とスィリーをリーダーにしたチームとランドをリーダーとしたもう一チームという形になった。

 まあ妥当な判断だと思う。

 理由のひとつとしては、ランドは俺の話の大部分を理解したうえで指示を出せる一方で、スィリーはあんまり理解していないということ。

 もうひとつは俺がランドについていくと探索ペースを遅くする原因になるということである。

 だからこそ、正体不明の遺跡をゆっくりと進むしかないスィリー達についていくことで、こちらの探索スピードをあげつつ、俺がお荷物にならないという組み合わせとしてこの組み合わせが選ばれたのだと思う。


「なあレディ、環境再現区画にいるヤバイ奴って具体的にどういう奴なんだ? 」


 数十分歩いたところで、等々暇に堪えきれなくなったのか、スィリーが呟いた。

 どうやら他の皆も「やばい奴」について気になっていたらしくスィリーの疑問に同調する声がちらほら聞こえてくる。

 確かに、「やばい」と言われたら気になるのも当然だ。ただ、今回はあんまり具体的なことを言わないほうが良いのではないかとも俺は少しだけ思っていた。理由は単純に、本当にそれが「やばい奴」だし、実際会わないことが一番良いことであるためだ。

 ただ、「知らないほうがたぶん心の健康にいいですよ」なんていったとしても彼らは納得はしてくれないだろう……少しだけ過去に遭遇した例を紹介しよう。


「……具体的にと言われても、本当に場所によってまちまちなんですよね。私が知っているのだと、超巨大クロアリとか、肉食性の液状生物とかですかね。クロアリはやはり組織立った行動をしてきますから、出くわすと逃げることすら困難ですね。液状生物に至っては実弾兵器などではダメージを与えれない上に

移動速度が速いのでやはり逃げるのは難しいです。ヤバイ奴っていうのは、まあそういう奴ですかね」


 そんな返事を適当に返したところ、反響する足音が突然小さくなった。

 不思議に思って振り返ると、スィリーや他の皆がまるで石像のように停止していた。


「あの。どうかしたんですか? 」


 そんな風に声をかけるとスィリーが動き出した。


「確かにそれは……ヤバイ奴だな」

「ええ」


それから暫く俺たちは無言だった。


作者のマシントラブルも現在は回復しおり、消えてしまったプロットの書き直しも大分進みました。 (むしろ以前より厚みが増えた気もしないでもない)

そんな訳でこれからもよろしくお願いいたしますっ!

ただ、もう暫く更新は不定期になるかと思いますのでご了承ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ