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再構築少女-元男でしたが今は女の子です-  作者: もやし豆腐
chapter 6 : They achieve a reunion
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Episode 49 : 惑星コロンダストリア降下作戦<2>

お久しぶりです。遅れて申し訳ないです。



惑星コロンダストリア

アサバカ砂漠東海岸

<クラウソラス>デルタ・コマンド分隊


結局のところ車いすは目的地の施設内で使うために用意されていたもので、決して岩石砂漠を俺が移動するために用意されていた物ではなかった。


「あの、せめて背負ってください! 」

「あ? 甘えたこと言ってんじゃねえよ。背負ってたら両手が塞がるだろうがよ」


俺はランドの肩に担がれている状態だった。

さっきからせめて他の運び方はないかともう抗議しているのだがまったく聞く耳を持ってくれない。

これじゃ、お荷物じゃないか……と歩けない自分と聞く耳を持たないランドのせいでさきほどからイライラが止まらない。

スィリーにもさっき逆切れしていたから間違いない。


「……まあちょっと可愛ぃ……可哀想だけどもうちょっとで目的地だから頑張ってなクレアちゃん」


ランドのすぐ後ろ、俺の目の前を歩く兵士が、目を若干横に逸らしながら言った。


「今、なにか不快な言葉が」

「気のせいさ……お、そろそろスィリー達が見えてきたぞ」


そんな会話をしていると、耳元の通信機からスィリー率いるチャーリー分隊か連絡が入った。


「こちらチャーリー。コマンドを目視で確認した」

「こちらコマンド、同じく目視で確認している。1号~7号<ビークル>に乗り込んでくれて問題ない」

「了解コマンド」


通信が終わる。

通信機をオフラインに戻すと、俺はランドの背中を叩いた。


「ランド、今の時間は? 」

「作戦時間でいうと3時間と20分経過、なんの心配もいらねえよ。予定通りだぜ」

「わかりました」


頷き、俺は再び周囲を警戒することにした。

前方と左右は他の奴らが見ている、無論後方を見ている奴もいるが時々だけだ。

だから代わりに、担がれているだけの俺は常に後ろを警戒している。

といっても後方に怪しい影などはまったくもって見えないのだが……まあ一応だ。

この作戦を聞いてからずっと頭にこびり付くようなモヤッとした感覚を誤魔化すためでもあった。


どうも今回の施設を制圧している犯罪者どもは、起動エレベーターを破壊するだけして満足してしまったらしい。

それが証明するかのごとく地上降下のときもここまで来る間ですら、攻撃を受けるどころか罠の一つすら見つからなかった。

全く持って不用心だといえる。

相手はバカなのか……それとも。

頭の中の疑念を掻き消すように俺は頭を振り、空を見上げた。


つい先ほど前まで見えていた星空は今は分厚い雲によって塞がれていた。

今にも雨が振りそうな感じにも見える。

小さくため息を吐き出す。


「どうしたよレディ? お腹でもすいたか? 」

「空いてない……しいて言うならなんでこんなところに来たのかって思っただけだ」


俺が呟く程度の大きさでそう告げるとランドが「あぁ……そういうことかァ」と何とも適当な返事を返してきた。


「不自然だって思わないのか? だって――」

「そりゃァ思わないわけないぜ。戦略的価値もそれほど重要な施設があると聞かされているわけでもない惑星に態々俺達をよこした。そもそもそこから可笑しいってもんだ」


惑星コロンダストリア、連邦の領有する空間の最果ての宙域内に存在するたった一つの太陽系に浮かぶ小さな惑星。

今では人口が1000人と満たない小規模な惑星だが、第三次海峡戦争時には2つのワープゲートがあり、その一つがアダマスティア帝国領域につながっていることから重要な軍事拠点となっていた惑星だ。

しかし、開戦初期に戦場となったこの宙域は大きな戦闘に伴う重力場の歪によりアダマスティア帝国側のワープゲートがなくなったことでその戦略的価値がなくなったと聞いている。

さらに言えば、惑星コロンダストリア自体にもその戦いの傷跡が残っていてその影響から大地は荒廃していったらしい。

その為戦略的、および経済的価値の落ちたこの惑星は、各惑星で問題となっている環境汚染対策のための大きな実験場としてその役割を変えた。


そんな惑星を占拠されたからと言って、道徳的あるいは人道的な理由以外で、急いで惑星の奪還を差し迫るような何かがある様には思えない。

そしてそんな理由だけでこの<クラウソラス>が出ていくわけがない。

ランドの言う通り、可笑しいと言えばそもそも俺達が此処に来たことからおかしいということである……。


「だが安心しろレディ。この惑星には何かがある。間違いねぇよ」

「……ランドはこの惑星に何があるか知ってるのか? 」

「さあなァ……具体的には知らんさ。そもそもここの施設を管理しているのは<グロリア機関>だったんだからよォ」

「グロリア機関……貴族院のシンクタンクがなんで環境汚染対策の施設なんかを――」


グロリア機関。その歴史はこの連邦が設立する遥か前、遡ればヒューゴスティア王国の時代まで続く組織である。

元々はヒューゴスティア国王直下の独立機関だったものだが、現在では連邦内に存在する王政国家によって支えられ運営される貴族院のシンクタンクに現在は変わっている。

コマンダーズとは犬猿の仲で、それはコマンダーズの設立当初から変わっていない。

それはもちろん後ろ盾に大きな違いがあるからだ。

グロリア機関は貴族から、コマンダーズは巨大資本企業連からの後ろ盾をそれぞれ受けている。

そして中央議会で争うのは大きく、社会主義的な貴族達と資本主義的な政治家達である。

つまりまあ……この二つの機関が手を取り合うことなどないわけで、それはつまり情報の共有などできているわけがないという事だ。



「さあなぁ。議長閣下が考えるに、公に糾弾するにも何を隠してるかわからねえから俺達を遣わせたんだろうよ」

「……でもなァ」

「まあ悩んだって仕方ないぜレディ。どうせ奴らを倒さなければいけないのに変わりはねェからな」


そうだ、不当に惑星を占拠しているやつらを見逃すわけにはいかない……そこは変わらないのだ。


「さてと、話してるうちに到着だレディ。とっとと出発しねぇと、スィリー達に置いてかれちまう」


ランドがそう言うのと同時に俺の体が<ビークル>のシートに固定されていく。

俺の体が固定されるのを見てランドは何度か頷くとそのまま奥の運転席へと座った。

後ろからは後をついてきた兵士が次々に乗り込んでいく。


「クレアちゃん。さっき隊長と何話してたんだい?」


兵士たちが続々と乗り込む中、俺とランドのすぐ後ろを歩いていた兵士が俺の前に座ってニヤニヤと、不快な表情を浮かべ俺を見てきた。


「別にノーマッドさんが期待してるような内容じゃありません! 」

「おう、知ってる」

「……」


なぜだか腹が立つ。

小さく睨み付けると兵士も無表情で俺を睨み付けてきた。

俺も負けじと睨み返した。

そして暫く睨みあった後、兵士が顔に盛大に張り付いた無精ひげをなぞりながら笑い出した。


「ははッ。やっぱりクレアちゃんは面白い子だ、隊長! イイ拾い物しましたね! 」

「だろッ。へっへっへ」


横から聞こえる声に、なんだか毒気を抜かれ怒るのもアホらくなった俺はため息交じりで床を見た。

なんで、俺で遊ぶかなぁ……別に俺はあんたらのおもちゃじゃないのだが……。

とそんな愚痴を小さくこぼした。



    ×    ×    ×


<ビークル>。第二次海峡戦争末期に開発されたこの組み立て式の車両は、非常に持ち運びが便利であると同時に、その耐久力もそこらへんの一般車両と比べれば十分高い。

採用から既に1世紀以上たっているのにもかかわらず未だに些細なモデルチェンジを繰り返しながら現役を貫いている。

この車両を作った人間はさぞ誇らしい事だろう。

でも、俺は少しだけ不満だった。

<ビークル>は床も壁も天井も外壁の金属板が塗装もされるむき出しのままで、壁に作りつけられたベンチは固く、波に揺られ体が少し浮くたびに、俺の尾てい骨に小さくないダメージを与えてきた。

正直乗り心地は最悪だ。

当時作った設計者もきっと、こんなに長く採用され続けるとは思っていなかったのだろう……1世紀以上先を見越した設計は出来ていなかったようだ。


「レディ、そろそろだ。連絡を入れろ」


恨めしく天井に光る赤い非常灯を見つめていると、耳元からランドの声が入ってきた。


「わかりました」


俺は直ぐに返事を返すと座席脇に取り付けられた広域通信機の受話器を取った。


「こちらコマンド。ターゲットまで5kmの地点。各分隊は現状の報告を」


少しのタイムラグを挟んでから返事が返ってきた。


「ブラボーから連絡するよレディ。ターゲットから2km下にいるよ。ドロイドによればこっちに気付いてる様子はないかな」

「こちらチャーリー目標まで4km地点。光学機器を使ったターゲットの視認ができた」

「了解しました。作戦行動をフェイズ2に移行してください」

「わかったよレディ。ブラボー通信終了」

「こちらチャーリー承諾した。通信終了」


向こうの通信がオフラインになったのを確認すると俺は受話器を元の位置に戻した。


「ランド、作戦は予定通りフェイズ2に移行しました」

「よくやったレディ。ブラボーのドロイドをこの<ビークル>の管制システムに繋げ」

「わかりました」


返事をし終わるのと同時に俺の頭上から一つのモニターが降りてくる。

俺はモニターが完全に降りたことを確かめると、広域通信機から幾つか伸びているコードの一つをモニターに接続した。

モニターにはドロイドが上空から映し出した映像に、チャーリーとブラボーが送ってくるデータをもとにした立体的な矢印複数、映し出された。


「ドロイドに接続。モニターに反映……きました。ブラボー、チャーリーともにフェイズ2への移行準備を終えて待機しています」

「了解だレディ。作戦開始させろ」


俺の報告に二つ返事でランドは作戦実行を言い渡した。

俺は通信機をオンラインにして周波数を部隊周波数に合わせて発言する。


「ブラボー、チャーリー、作戦開始」

『ブラボー作戦開始』『チャーリー作戦開始』


耳元から双方の通信員の声が聞こえてくると、モニター上の矢印が移動を開始した。


ブラボー分隊の矢印が海面200mした、施設を支える巨大な支柱付近から海面近くまで浮上していくのがモニター上に映し出される。

数秒と立たないうちにブラボー分隊は海面20mしたまで浮上して止まった。

俺は素早くチャーリーに連絡を送る。


「ブラボータッチダウン」

『チャーリー了解』


すると今度はチャーリー分隊が動き出す。

全部で7個、<ビークル>を表していた矢印の一つから、複数の点が朝焼けに照らされた海に飛び出していく。

これらは全てはスィリー率いるMCS分隊で、今回敵の搖動をする役目を負っている。


「チャーリーからスターターが出ました」

『ブラボー了解』


その直後だった。

ドロイドが海上に噴きあがる巨大な水しぶきを捉える。

それは一辺が5㎞、6角形の形をした全15階層からなる巨大な海上施設の支柱の一本を取り囲んでいた。

巨大な水しぶきが収まると、先程まで上に乗る主を支えていた忠実なる柱の一つであったそれは“ただの鉄屑”へと変わり果てる。


「ブラボーがQBサック成功させました。チャーリーはそのまま進んでください」

『チャーリー了解』


ドロイドの映像――海上施設のデッキ上に目をやる。

施設のデッキ上にいる兵士たちは突然の事に同様していた。

その動きにには何処かまとまりがあり、今回の敵がただの宇宙を自分たちの庭だと勘違いするチンピラでないことを俺は理解した。

だが相手がなんだろうと関係はない。邪魔をするならば排除する。それは絶対に変わらない。

チャーリーは位置を爆発した柱と反対側の柱から施設への侵入を始めていた。


「チャーリー、ディフェンスがまとまった行動をとってます。十分注意して走ってください」

『チャーリー了解』


MCSが背中に増設させたブラスターを使い、海上施設の底部足場へとたどり着く。

そこからは外周に備え付けられた階段を使いデッキ上まで走っていく。


「ブラボー。前進を開始してください」

『ブラボー了解』


海面から複数の光点がモニターに表示される。

施設の真下に陣取っていたブラボー。彼らが今回の作戦の本命だ。

チャーリーが上で気を引いている間にブラボーが内部の要所を制圧する。

よくある手だが、よく使われるということはそれが比較的成功率が高い物であることを示しているという事でもある。


『チャーリー、ディフェンスと遭遇』

「了解チャーリー。オフェンス」

『チャーリーオフェンス了解』


その瞬間モニター上に映った海上施設デッキ上の一部から大きな爆発が発生する。

戦闘が開始された。

俺は拳をぎゅっと握る。

今度は俺達の番だ。


「コマンドアルファ前進開始」

「了解だレディ」


<ビークル>のエンジンが起動したことにより車体が小刻みに振動を始める。

俺達の役目は戦闘終了まで敵が逃げ出さないように見張ること。

全8台の<ビークル>を一定間隔で施設を囲むように展開させていく。



『こちらブラボー。ディフェンスにヒットした』

「了解ブラボー。チャーリーもっと派手にお願いします」

『チャーリー了解。もう少しだけ熱を上げます』


再び海上施設から大きな爆発が起こる。

しかし、それは先ほどの比ではない程に大きくかった。

海上施設のデッキ上にそびえたっていた煙突の一つが、爆発の衝撃で根元を失い大きく傾き始める。

そしてそのまま煙突は同じデッキ上にあったビルの一つに突っ込み砂塵を舞い散らした。

やれと言ったが……流石にやり過ぎだろう。


「チャーリーやり過ぎです。こちらから其方が見えません」

『すまない……スィリーがな』


聞こえてきた通信員の声が物凄く申し訳なさそうだった。


「いえ、別段支障はありません。ただ、もう少しだけ繊細にお願いします」

『あ、ああ了解』


ふぅ。っと息を吐く。

まあ大雑把な命令を出した此方が悪いのだ。

にしても煙突を壊すとか、どんなことしたんだスィリー……。

いや、まあ別にそれは後でいい。

俺は首を横にブンブンと振り、意識をモニターへと再び集中させようとしたときだった。


「―――――――――――――――‼ 」


耳をつんざくような爆音が外から聞こえ、車体が大きく傾く。

丁度その時耳元から少しだけ慌てたマルメラの声が聞こえた。


『こちらブラボー! すまない敵を数名逃した! 』

「了解。ランド敵が! 」


「敵が逃げました」と言いかけてランドを見た時だった。


「ん。ああ、今潰したから安心しろって言っとけ」

「――ふぇ……? 」


間を開けることなく放たれたランドの言葉に、思わず俺は素っ頓狂な声を上げてしまった。

じゃあ……今の爆発は。


「今の爆音がそれだって言ってんだ。奴さんならもう海の下だぜ? 」

「……」


恐るべき対応の早さだった。

正直、こいつらが敵じゃなくて心底安心したと今ほど思ったこともないかもしれない。


「マルメラに言っとけ、後で説教ってな」

「……は、はい。ブラボー、こちらコマンド。逃がした敵は潰しました」

『すまないレディ。ランドに後でたっぷり説教を聞きに行くと伝えてくれ。それともう一つ、施設を制圧した。ゲームセットだ』


通信がオフラインへと自動的に戻った。

マルメラが最後に発した一言に俺はまた、思った。

やはりこいつらが敵じゃなくてよかった……と。


「ランド。ゲームセットだそうです」

「おお、わかった。んじゃ俺達も合流するか」


全ての理解が追いつく暇もなく終わってしまった目の前の光景を俺はただ見つめることしかできなかった。



続く!

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