Episode 48 : 惑星コロンダストリア降下作戦<1>
お久しぶりです。もう書き溜めとかも全然できないし……何週間もあけると書き方が変わって行ってしまうのはシカタナイヨネ。
今回前半は一人称ですが、後半は試験的に三人称にしてあります。
今後、クレア以外のキャラクターをメインとする際には三人称で書いて行こうかと考えての試みです。
「変な感じがする」などのコメントをいただいた場合は中止する予定ですが、そうでなければ今回のままで今後とも書かせていただこうと考えております。
惑星コロンダストリア
アサバカ砂漠中央
<クラウソラス>コマンド分隊
「目標地点到着」
機械音声がそう告げると、体を固定していたハーネスが外れた。
周りには多くの兵士がいて、同じようにハーネスが外れる。兵士たちはすぐさま外に飛び出し、強襲ポッドを囲みこむように警戒隊形を整えていく。
今回の作戦は犯罪者に占拠された惑星施設の奪還が目的だ。
連邦の研究施設が一か所あるだけのこの惑星がなぜ襲われたのかは分からないが、敵は起動エレベーターを破壊してまで施設を占領していることからよほど重要な何かがあるらしい。
俺達は使用できない軌道エレベーターの代わりに、ヌアザからの強襲ポッドによる大気圏降下を行ったのだ。
暫くすると、一人のMCS――ランド――がやってきて、俺の後ろにある貨物入れから折りたたまれた車いすを引き出し、そして組み立てた。
俺はいまだ五体満足ではないが今回の作戦では後方支援役として参加している。
「よお、気分はどうかなレディ? 」
「問題ない。大丈夫だ」
「おいおい、つれねぇなぁ。前みたいに喋ってくれてもいいんだぜ? 」
「断る」
いまいちからかっているのか心配しているのかわからないランドに、適当に返事を返した。
どこまでも蒸し暑いこの惑星の気候は軽い防弾チョッキしか着ていない俺の気分は最悪で、真面目に返事を返す気力などなかった。
ついでに顔の正面まで分厚い金属板で覆われたヘルメットのせいで、ランドの表情を図る事が出来ないのはいつも通りだ。
「んじゃ掴まってろよ。移動させるから」
平坦に発せられたランドの言葉に俺は頷いた。
両手を上げて、ランドの首元につかまる。
体をピッタリとくっつけた上で、思いっきり抱きしめている少女。
非常に残念な構図だ……。
「どうせなら、MCSを着けないでオジサン抱えたかったなぁ? 」
「……絞め殺すぞ」
「やってみるか? 」
なんだかこの間のパーティー後からこんな会話がずっと続いている気がする……。
ランドの対応が少し変わったから……というよりは俺のランドに対する対応が変わってしまったからランドの対応が変わってしまったということによるところが大きいと思う。
「そらよっ」
ランドが突然体を大きく揺らし始める。
突然の事に、掴まっている手を離しそうになり。必死でしがみついた。
MCSの力で増幅された揺れは、さながら地滑りのような感覚に等しかった。
「ラ、ランドやめっ! 」
「ほらほら絞め殺すんだろ~。やってみろよォ」
「ほ……本当にまず、い」
手の力が抜け、とうとう落ちそうになる。
必死に腕に力こめることもむなしく、俺の腕はランドの首筋から落ちていった……が俺は無事だった。
何時の間にか俺はすでに車いすの上に座っていたのだ。
束の間なにも理解できずに呆けた顔をしていると。
「ちゃんと座ってんだろ。落ちるわけないぜレディ」
上を見上げれば、ランドは俺をからかうように顔に笑みを張りつかせこちらを見ていた。
「……チッ」
「ヘヘッ、いつもレディの反応は新鮮で面白いねェ。んじゃ次も期待してるぜ。ああ、それと突然の出来事にもしっかり対応できるようにしとけよォ。ここじゃ何がいつ起きるかなんて誰も知らねェからな」
そう言って豪快に笑いあげたランドは、そそくさとポッドの外へと出て行った。
アドバイスをくれた。そう言う事でいいのだろうか……。
車いすの車輪を回し、タラップを下った。
タラップを下りきり、一体を見渡せば開けた岩砂漠だった。
そのなかでも俺達は比較的平坦な場所に降り立ったようだ。
さらにじっくりと目を凝らせば強襲ポッドの周囲は着陸時に出る制動ブースターの熱により紅く焼け焦げていた。
空からは、まだまだ多くの強襲ポッドがこの一帯に降ってくるのが見えた。
敵の攻撃は無いらしい。
強襲ポッド群が、表面の装甲版を溶かしながら流星のように降ってくるのと、綺麗な星々以外は空には何も見えなかった。
『デルタ分隊よりコマンドへ。目標地点に5分前に到着。目標一帯の安全確認、及び〈ビークル〉の確保を完了した』
耳元の受信機から他の場所に展開している分隊より報告が入った。
今回の俺の任務は、コマンドであるこの分隊から他の分隊へと連絡を取り、指示を与えることだ。
手元の通信機の入力をいれる。
「こちらコマンド。報告は受け取りました。そのままその地点で〈ビークル〉の組み立てを行ってください」
『はい、コマンド。通信終了』
通信機の音声が途切れるのと同時に、俺は通信機の入力を切った。
今俺達がいるのは、海上にある目標施設からおおよそ2000km離れた場所だった。
これはこの星に居座る犯罪者に存在を気づかれないようにするための措置である。
デルタ分隊がいるのはおおよそここから2km先の浜辺で、デルタ分隊の役目は付近に事前に落下させておいた貨物ポッドから、施設までの移動に必要となる乗り物を組み立てることだった。
「ランド。デルタ分隊は問題なく任務を遂行しているようです」
「了解だレディ。ブラボーには連絡入れたか?」
「今からです」
「じゃあ、ささっと連絡してくれ。そろそろこっちも準備ができる」
「わかった」
左手首に着けられたモニターを入力し、デルタ分隊の位置を記録する。
それからモニターに着けられた通信機のチャンネルを切り替えると、再び通信機の入力をいれる。
「コマンドよりブラボー。応答してください」
こちらから連絡を入れるのはこれが初めてだったので、距離から来る通信のラグの合間に少しだけ俺は緊張していた。
俺は、正しくできてるだろうか……。
ただ、そんな不安は通信機越しから聞こえた声でどうでもよくなった。
『おお、レディかい? どうやら君の可愛さは声だけでも十分するぎるほど……「切りますよ? 」
『いや、悪気はないんだレディ。すまなかった』
「あと連絡の仕方をしっかりしてくださいマルメラさん」
『……ああ、わかった。こちらブラボー分隊。飛行型高速ドロイドによれば施設はやはり完全に制圧されているようだ。敵の数は少なくとも、外に見えるだけでMCSが10。通常の歩兵が100。戦闘型ドロイドが複数機見えているね。それと今のところは不審な動きは見られない』
「了解しました。ではそのまま監視を続けてください」
『……もう終わりなのかい? 』
「終わりです」
『君の声はもう聞けないの―――』
マルメラの声を途中まで聞いて、作戦に支障はないと判断したところで俺は受信機と通信機の出力を切った。
どうせ無駄口しか叩くまい……なら切っておくのが俺の心身にはぜったいにいい。
振り返り、大型のコンテナを持ち上げているランドを見つける。
「ランド。ブラボーからの報告では、目標地点の彼らに不信な動きはないようです」
「了解だ。それとレディ、こっちの準備も整った。俺達もいくぞ」
ランドの言葉に頷き、俺は分隊列の真ん中へと入り、行軍を開始した。
× × ×
惑星コロンダストリア
アサバカ砂漠東海岸
<クラウソラス>デルタ分隊
「整備班長。コマンド分隊より、<ビークル>の組み立て作業はどうなっているかと連絡が入りました」
レンチを腰のポーチに差し込み、額の汗を拭ったハイドは、暗黒色の戦闘服に身を包んだ通信員の方向へと振り向いた。
彼は確か去年入隊した隊員で非常に優秀な奴だったと、ハイドは記憶していた。
「あと十分も立たないうちに終わると伝えてくれ」
ハイドの言葉に通信員は頷くと、コマンド部隊への報告を始めた。
その様子をしばらく眺めたランドは再びその視線を、<ビークル>へと戻した。
<ビークル>の正式名称は<特殊作戦用全地形対応車(Special Operations All Terrain Vehicle)>といい、全長12m、全高3.5m、幅3.3m、水陸両用車としての能力を持った組み立て式装甲車である。
一番大きな特徴として、組み立て方式により少ないスペースで輸送できることがあげられる。その為今回の様な惑星降下作戦などでも頻繁に使用されるのがこの<ビークル>だ。
今回用意された<ビークル>の数は15台。その全てにおいて残る組立部分は制御機構のみだった。
<ビークル>の連邦軍内での平均組み立て時間は6時間だが、3時間もかからずにハイドたちは最終組み立てポイントである制御機構へと取り掛かろうとしている。
組み立てるのにはものの数十分のもかからないだろう。ハイドはそう思った。
ハイドはゆっくりと下ろしていた腰を上げると、通信機のチャンネルを分隊全体へと変えた。
「組み立てが終われば俺達の仕事は終わりだ。手の空いた者から帰還の準備を始めろ。 隊長たちが付いたときに俺達が居たら邪魔になるからな」
耳元の受信機から返事が返ってくるのを確認すると。
作業現場の浜辺にポツンと見える岩陰で辺りを警戒する通信員を呼び寄せた。
「整備班長。如何されましたでしょうか? 」
「ああ、レッカー。そろそろチャーリーの奴らに迎えをよこせと連絡してくれ」
ハイドがそう言うと、通信員は軽くはにかむように笑って見せた。
「わかりました整備班長。連絡はしておきました」
「……よくやった。流石だレッカー」
「お褒め頂き光栄です整備班長」
レッカーの満足げな表情に、ハイドは「さすがは優秀な奴だ」と軽い嘲笑の念を抱いた。
優秀な部下を持つことはとても誇りある事だったが、いささか優秀過ぎると自分の責任と言う物を忘れそうになるからでもある。
レッカーの肩を数度叩き「お前が班長をやりたいか? 」と軽いジョークを投げると、ハイドはそのまま作業のため別の<ビークル>へと歩みを進めた。
暫くした後、ハイドの戦闘服に着いた集音機構が微かなエンジン音を聞き取った。
左腕に着くモニターは、その音の発信源が南西方向、アバカサ砂漠西方向より向かってくるのを示す。
それを見たハイドは、分隊全員へと叫ぶ。
「迎えが来たぞ! 全員準備は出来てるか! 」
<ビークル>が命令通りに並べてあるのを確認するとハイドたちは、その場から駆け出し浜辺の裏手にある小高い丘へと走り出した。
戦闘服にもMCSには劣るが筋力増幅機構はついている為走るときは、いささか注意をしなければならなかった。
でなければ歩幅が大きくなりすぎて地震のバランスを崩しかねないからである。
一歩一歩を確実にと走りを進めて1分ほどでデルタ分隊全員が丘の上へと到着した。
丘の上では大きなエンジン音が空気を振動させ、ハイドたちの前には立ちはだかる様にMCSの群れが、そのヘルメット中央のスリットを赤く光らせていた。
「今日は俺のが早かったなハイド! 」
黒いMCSの群れの中央に立つMCSが声を上げた。
そのMCSは紅い装甲版を身に着け、周囲のMCSよりも一回り程大柄だった。
ヘルメットも丸みをえがいた周囲のMCSとは違った角が多いデザイン、特に頭部から飛び出した牛を連想させる2本の角が目立つMCS。
背中には大剣を持ったその姿はまさに“鬼”の様だった。
「スィリー、別にこれは競争なんかじゃないんだぞ……」
「そんなことはどうでもいい、俺のが先に着いたそれが重要だ」
スィリーの言葉にハイドとその周囲は、呆れを通り越していつも通りなスィリーの反応に感心した。
「わかった俺の負けだ。それじゃあもうすぐコマンド分隊が来るからしっかりな」
「おう! まかせとけ! 」
ハイドとスィリーは握った拳を軽く合わせる。
そしてデルタ分隊は迎えのシャトルに乗り、チャーリー分隊は、崖下へと下って行った。
崖下の浜辺までスィリー率いるチャーリー分隊が下ると、スィリー達とは反対方向からやってくる一団を見つけた。
スィリーは通信員を呼び寄せ、通信機のチャンネルを勝手に変えると、通信員から通信セットを取り上げマイクのボタンを押した。
「隊長おおおおおお」
マイクに向かって吠えるスィリー。その声に反応したのは実にか細いながらも確りとした重みをもった声だった。
『あの……スィリーさん黙ってください』
「……あ、なんだレディか」
『なんでスィリーさんが長距離無線持ってるのかは、考えるまでもないのでツッコみませんけど。今回の分隊間の通信は私が担当していてランドさんには聞こえてないですよ……って作戦前にも言いましたよね? 』
「んな昔のこと覚えてない」
『昨日ですけど』
「……そんな昔の事は忘れた! 」
スィリーの受信機に軽い舌打ちが再生される。
スィリーはクレアが不機嫌な事に気付く事は出来なかったが。クレアは相当荒れているようだと、通信回線が分隊内に駄々漏れでオープン回線とかしていた今の会話を聞いていた他の兵士は思った。
暫くの沈黙の後、クレアが口を開いた。
『とりあえず分隊長に変わっていただけますか? 』
「俺だが」
『……話通じる人に変わってもらっていいですか? 』
「わかった。で話は何だレディ? 」
『……通信員の人に通信機渡せっていってるんですよスィリー! 』
スィリーは暫く沈黙した後、渋々と言った様子で通信員に通信機のセットを返した。




