Episode 46 : 宴の夜
設定資料用に新規小説と言う形でページを作りました。この物語について理解するのにお役にたてれば幸いです。
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一か所方言が混じっていたため修正しました。(どこかは内緒だぞ)
連邦時刻で午後5時。惑星ネブラスカの中心都市オマハの中央にそびえ立つ『デックビューホテル』で、クラウソラス主催の戦勝パーティーが行われた。
参加人数は大よそ1000人ほど、今日ここにはクラウソラスの人間すべてがいるようだ。
俺はパーティーが始まってから1時間遅れで会場についた。
「お、来たなレディ」
ホテルのロビーに入ると丁度、ロビーに備え付けられたソファでくつろぐランドと遭遇した。
「ご無沙汰してますランドさん」
「いいの。いいのって、今日の主役はお前さんなんだからよ。そんな堅くなるなよぉ」
ボサボサとした頭部を擦りながら、ランドは座っていたソファを立ち上がると、俺の方へと歩みを進めてくる。
「あんた等も連れてきてくれてありがとうな。俺達じゃあそこのお医者さんたちがあんまし良い目してくれないんだよ」
「いえ、いつも妹がお世話になってますから」
後ろに立つアンジュが朗らかな笑みを浮かべ会釈をする。
ただ俺の車いすを引くエレナの方は顔色があまりよくなかった。
ランドはもちろんその事を知っているようで、エレナを一瞥すると困ったような表情をした。
「嬢ちゃんも助かった。……ああ、そうだった。俺は邪魔だなぁ。んじゃ上で待ってるぜ……それとレディ、今日は気合入ってるなぁ。がっはっはっは」
大笑いしながらエレベーターホールへとランドが消えてくのを見送りつつ、若干のため息を吐いた。
最後の一言は余計だ。俺が柄にもない可愛らしいドレスを着ているのは、断じて自分の意志ではない。
俺はエレナの方に顔を向ける。
「エレナ、無理しなくてもいいよ。私もこういうのはあまり得意じゃないから」
「大丈夫、だよ。だってこの為にクレアにドレス買おうってアンジェリカさんと決めてたんだもん」
「そうよクレア、こっちの事は構わなくていいわ。エレナの治療のためにもこういうことには参加したいと思っていたし。それにドレス買ったんだから参加させないわけがないでしょう? 」
アンジュはともかくとして、俺が心配したよりもエレナは元気そうだった。
いや、ランドと会った瞬間以外では俺を見ては先程からひどくニヤついている。
だめだ。エレナを誘導してパーティーを回避するという作戦はできそうにない。
せめてこの、このドレス――至る所に刺繍の入ったフリルで可愛らしく飾られた紅いドレス――じゃなければ喜んで行ったというのに……なぜ、なぜ俺はこんなものをッ。
「あきらめなさいクレア。似合ってるわよ」
「そうだよ行かないとだめだよ。私もクレア見てたら頑張れる気がしてきたから! 」
「お願いだから、私が嫌がってるの見て二人とも元気にならないで」
二人は互いにどこまでも真っ直ぐな笑みを浮かべて俺を見て言った。
病院から出たと思えば連れて行かれたのはショッピングで、しかもそれが今日の夜俺が来ていくものの為だったと知った時は血の気が一気に引いたのは言うまでもない。
こういう時だけは、後ろの二人が悪魔の様にしか思えない。
嫌がっている俺に対してまったく容赦がないのだ。
いや、本当に悪魔だと思う。
そう思いながら最上階のパーティー会場へと運ばれていった。
× × ×
会場はホテル最上階に位置する大ホールを使って執り行われた。
幾つもの大小様々な丸いテーブルが置かれていて、その上には多くの料理が乗っかり、その周りでは多くの人間が雑談を交わしている。
軽く見渡せば見知った顔も幾つか見かける。いや、たぶんきっと全員にあったことがあるだろうが何せ人数が多いから、確りと話したことある人間以外の顔を俺はあまり覚えてないないだけではあるのだが。
「じゃ、行ってきなさい」
タン、と肩を叩かれて振り向けば小さくウィンクをしたアンジュがいた。
「アンジュ達もいくんじゃないの? 」
「さすがにあんなに大人数の男の人たちの中に入っていく勇気はないわ」
「わ、わたしもあれはちょっと……」
「でもさっき参加するって」
「まあ、参加はするけど人の少ないところで私たちは楽しむわ」
「じゃあ、私も」
「駄目よ。あなたは今日の主役なんだから」
待ってくれ。そう言いたかったのだが、アンジュ達は言いたいことだけを言うと人垣の奥に早くも消えて行ってしまった。
周囲をキョロキョロと見ても、二人の姿はなかった。
探そうかとも思ったが、今の俺は車いすだ。こんなもので会場をあまり大きく動くのは周りに迷惑を掛けるだろう……仕方ない、今回ばかりは諦めるか。
「久しぶりだねレディ」
「元気にしてたかレディ」
突然後ろから声を掛けられる。
振り向けば、最近見ていなかったムカつく程に爽やかな顔が、愛想のいい笑みを浮かべていた。
その隣では小さく手を上げて挨拶をする、スキンヘッドの浅黒い男もいる。
「マルメラさんにハイドさん。お久しぶりです」
「レディ、今日の君は何時になく美しいよ」
「体は大丈夫かい? 」
「……はい。体は順調に回復に向かっていると言われました」
さり気無く何時ものように薄ら寒いセリフを言うマルメラは無視しよう。
まあマルメラとハイドだと、話してて楽しいのはハイドだしな。
むしろその逆はまともに会話にならないからどうしようもないのだが……。
「そっかそっか、体はよくなってるんだ安心したよ。それにしても今日の君は――」
「そうだ。ハイドさんお聞きしたいことがあったんです」
「……んっ。俺にか? 」
「はい」
マルメラを完全無視する方向で、俺はハイドに話を振った。
「プロメテウス作戦の時。クラウソラスの皆さんは一体どこにいたのですか? 連絡が途中でつかなくなっていたので」
「プロメテウス作戦の時か……そうだな、あの時は暗黒礁宙域の境界ギリギリを進んで裏から、要塞に侵入しようとしてたはずだ」
「なるほどそれで連絡が取れなくなっていたのですね」
「まあ、そういうことになるな」
暗黒礁宙域は極端にあらゆる機器の性能が極端に落ちてしまう空間だから交信できなくなってしまったのは仕方がないと言えば仕方がない。
彼らは彼らの元、要塞を攻略しようとしてたわけなのだから。
一方で、それを事前に知っていたのなら……俺はもっと他にいい手が打てたのではないかと思ってしまいそうになる。
「なぜ私には教えてくださらなかったのでしょうか? 」
「……」
尋ねた途端に厳しい表情になるハイド。
隣にいるマルメラに困った表情を向けていた。
「あの、私には言えないのですか? 」
「いや、言えなくはない……はずだ」
「なら……」
さらに押して尋ねようとした時。俺とハイドとの間にマルメラが入り込む。
「レディ。言いたくはないが君は下っ端。そしてハイドもまた、一メカニックでありただのメンバーだ。作戦が終わった後とはいえど、言える情報、伝えていい情報には慎重にならなければならない」
「……そう、ですか」
「まあ、確かに君に伝えておかなかったのは今では悪手だと理解しているつもりだ。だから君に伝えなかった理由を簡単に言わせてもらう」
何かを決心したマルメラの表情から、俺は何を言われるか理解した。
「私が、何らかの理由で裏切りを行った時、クラウソラスの情報をあまり与えたくないからでしょう。違いますか? 」
「簡単に言えばそう言う事だ。まさかあんなにも大胆な事をするとは思ってなかったけどね」
概ね正解だったようだ。
クラウソラスは公の組織ではないのだから当然、尻尾切りなんてものもざらに存在してしまうのだろう。
特に俺の様な新入り――しかもしがない少女――など信用がないのは当たり前だ。
だいの大人だって、拷問をされれば耐えるのは難しい。それが俺の様な少女ならどうだろうか……考えたくはないが耐えうることはまず難しいだろう。
だから、あまり情報を与えてはならない、そう判断されたということだ。
俺にだけやたら情報が回ってくるのが遅かったのもそういうことだったということだ。
仕方がないと頭で理解する一方で、なんだか仲間外れにされているようで寂しさを感じた。
「まあ、今回のレディの働きは素晴らしいと隊長もいってたから下っ端は卒業のはずだよ。これからは君にもちゃんと同じタイミングで情報を伝えるから安心してくれ」
「まあ、あんまり落ち込むなレディ。此処にいるやつらは全員そういう経験したことあるからな。まあ、レディほど大胆かつ肝が据わってる人間がどれだけいるかは分からないが」
「なんだか、言われてもあんまり嬉しくないですねそれ」
「……まあ、なんだ。おめでとうレディ。これで君も一人前ってことだ」
「はぁ、あまり釈然としませんがありがとうございます」
その後、しばらく二人と会話を続けていると、忽ち俺の周辺に人垣ができてしまい、ハイドとマルメラは何処かに引っ張られていってしまったことで会話が終わった。
まわりに集まってくれたのはよく<ヌアザ>の食堂で一緒に食べてくれていた奴らだった。
「クレアちゃん元気か?」
「この肉うまいぞ」
「ケーキあったから持ってきたぜ」
色んな風に声をかけてくれる。一番多かったのは「心配した」、「大丈夫か? 」という温かい言葉だった。
組織的な信用云々かんぬんはあっても一人の仲間として俺を扱ってくれる人がクラウソラスには多くいる。
それを俺は改めて実感し、なんだかさっきのモヤモヤが小さくなっていくのを感じた。
「お、ここかレディ! 」
人垣からニョキッとでかいゴリラが現れた。
少しだけその光景にギョッとしたのは俺だけの内緒だ。
「す、スィリーさん⁉ 」
「よお、元気みてーだな」
トゲトゲとした頭、じゃっかん馬鹿っぽい顔は何時も通りだった。
しかし、彼が軽く上げた左手を見て俺は少しだけ息を詰まらせた。
「そ、その手は! 」
「ん? ああ、これか義手だよ義手! カッケェだろ‼ 」
「だ、大丈夫なんですか⁉ 」
「心配すんなって、確かに左手一回砕けちまったけどよ。再生しないでこうしたのは俺が望んだことだッ」
艶消しされた黒い義手はどこか痛々しさを感じてしまう。
だというのにスィリーはそれを自慢げに掲げていた。
衝撃的な光景に呆然としていると、隣の男が俺に言った。
「あいつ、このあいだのサイボーグ野郎に触発されたらしいぜ」
「……え」
頭に過ぎるバルツァーの姿。そして目の前で豪快に笑うスィリー。
言い知れぬ恐怖に顔が引きつりそうになるのを俺は必死にこらえた。
「……おいおい。どうしたレディ? あいつを思い出してちびりそうか? 」
「い、いえ……そういうわけじゃ」
「スィリーいい加減にそれがダメだってわかれよ! 」
「? 俺何か――あがッ、い、イテェ! てめなにしやが――――」
少し引きつっている間に、スィリーもまた何処かへと引き摺られていった。
そういえばバルツァーとの戦いの後、俺は。一緒に戦ってくれたモーゼフ達とまだ一度もあってない……
彼はどうなってしまったのだろう……。
「なにかお困りかねぇ御嬢さん」
「――ひッ」
行き成り目の前に怪しい奴が現れた。
黒いローブを深くかぶっている。
周囲の人間もいきなりそんな奴が現れたことにドン引きしていた。
俺ももちろん引いてる。
「ルー、さんですか? 」
「今は、漆黒魔女アンネリーゼ・ロイヤルハニー! 困っている皆を助けるために日夜、悪と戦う正義の味方だぴょん! 」
「……気持ち悪いって思わないんですか? 」
「え、いや……別にそういうわけじゃ、ない……んだぴょん」
中途半端な裏声で謎語尾を発する目の前の男に。俺は思わず吐き気を覚える。
よく見たらローブの下の方が透明になっていて、そこにルーの足は見えず唯の床が透けていた。
「それ。ステルスローブですよね」
「……これは魔道具インビジルローブ! 日々悪党と戦う魔女、闇にまぎれるため、このインビジブルロープ使用することを義務付けられているんだぴょん! 」
「そういうの本当に要らないです。あとその喋り方やめてください気色が悪いです」
「……え、えっと、ごめんなさい」
「なんで派手に登場するんですか? ちゃんとタイミングとその場所を考えてるんですか?」
「い、いやぁ……かっこいいかなぁって」
どこをどう見てカッコいいのだろうか。派手だが正直気味が悪い。
そもそもお前は女じゃないから魔女にはならないだろうに……。
それにステルスローブって言うのは一枚で一般的な乗用車を買えてしまうほど高額な装備なのだが、それをドッキリに使うために持ってきたと考えると正気の沙汰じゃない。
「で、まあ丁度いいので一つお聞きしていいですか?」
「え、あ、どうぞ」
「モーゼフってネブラスカ駐屯軍の兵士についてです。今彼はどうしているのか教えていただけますか? 」
「わ、わかりました」
そういうとルーは暫く何処かへと消えていくと、数十分後戻ってきた。
「ええっと、モーゼス・ゴドウェン元大尉についてだったな……」
「なぜ元が付いてるんですか?彼は……」
「彼なら責任を取る形で軍から追放されたらしい……まあ上官を殴って気絶させたのは、十分罪に値する。牢獄に行かなかっただけかなりマシだったはずだ」
「じゃあ、今彼は何処に」
「不明だ。2週間前にネブラスカから飛び立つのを、艦ドックの監視カメラの情報から見つけたそれ以降はわからない」
「そうですか……ありがとうございました」
モーゼフにはお礼を言いたかったのだが、これでは言えそうにないな。
それにしても軍を止めるとは、優秀な兵士だっただけに残念な気持ちがしてならない。
「もしかしてレディ。そのモーゼフってやつのことが……」
「……ああ、何を考えてるのかわからないですけど。そう言うのじゃないですよ断じて。あと胸見るの止めないと叫びますよ? 」
「み、見てないよ? 僕悪い人じゃ――ああ、ヤメ! わかった! ごめんなさい!! 」
叫ぶのをやめて、ちかくの人間にルーを差し出すと、俺はもうしばらくパーティーを楽しむことにした。
次回投稿未定です。(毎度毎度申し訳ないです(汗))
また書き溜めての投稿になりますが、新年度が始まってしまったため暫くは更新できなさそうです。ゆっくりと長い目で待っていただけると幸いです。




