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再構築少女-元男でしたが今は女の子です-  作者: もやし豆腐
chapter 5 :  A ruined Phantom
42/58

Episode 40 : 要塞攻略(前編)

 今回は要塞突入までです。

 

 

「よぉ、遅い到着だな」


 一度自室に戻り戦闘準備と作戦計画を練った俺は、ハンガーデッキ前まで来ていた。

 そしてデッキの入り口には一人の男が立っていた。

 スキンヘッドの頭、そして戦闘服の上からでもわかるほど盛り上がった筋肉。

 何よりもゆうに2メートルを超える身長は、今まで見たどんな人間よりも高かった。

 今日、俺は既に2回ほど、彼に助けられている。


「さっきは……助かった」


 俺がそう言うと男は俺の頭に手を置いた。


「気にするな。それに、言っただろう? 俺はあんたに賭けるってな」


 男は陽気な声でそう答えるとドアの開閉ボタンに手を触れる。


「さあ行くぞ。あんたを待ってるのは俺だけじゃないんでね」

「お前以外にも、いるのか? 」

「おいおいッ! あんたが呼んだんだろ……それともなにか、来ないと思ってたか」


 正直に言えばたいして来ないだろうと思っていた。

 いや、彼の言葉を聞いて少しだけ期待は持てたが、それでもあまり人が集まっているとは思えない。

 それでも、彼にこれ以上心配を掛けさせてはいけない、俺はわざとらしく言葉をこぼした。


「少し」

「なら驚くだろうよ。胸張って出ていけよ」

「――うあッ」


 男がドアの開閉ボタンを開け、俺を開いた扉の前に、勢いよく突き出した。

 突然の事に俺の対応は遅れ、ただ立っているのが精一杯となる。


 その理由は、突然前に突き出された事からではない。

 目の前に広がる光景が、俺はにわかに信じられなかったからである。


「おい、しっかり見てるか? これがあんたの言葉で集まった奴らだ。しっかり見てやれ」


 勿論見ている……見ているさ。

 ハンガーデッキを埋め尽くさんばかりの人だかりを、俺は見ている。

 そしてその誰もがハンガーデッキの入り口である、この3階分ほど高くなった通路を見つめていた。


「ほら、さっさと自己紹介しろよ大将。俺達全員あんたの言葉を待ってるんだ」


 彼の言葉にハッと、思考を取り戻す。

 言いだしっぺがシッカリしなくてどうするんだ。

 落ち着くために小さく息を吐き出す。


 一度、全体を見渡してから、一歩前に歩み出た。

 それにしても多いな、窮屈なハンガーデッキはまるで、ごった煮のスープのようだ。

 今一度呼吸を整え、再び大きく息を吸い込んだ。


「ここに集まってくれたこと。感謝するッ」


 多少のざわめきが場に広がる。

 広がりがこれ以上大きくなる前に、もう一度声を張り上げた。


「今回、この作戦を提案させてもらった、クレア・ハーミットだ。ここに集まってくれたこと、今一度、心より感謝する。そして貴方方と供に戦えることを心強く思う。この危機をすくために手を貸して欲しいッ」


 それを隣で聞いていた男は満足げに頷くと、俺より前に歩み出た。


「お前らあぁ――ッ! 大将の言葉は聞いたな! クソ虫どもの寝床を燃やしに行く! いいかお前ら、ガキが命張るっつったんだ、かっこ悪いとこ見せるんじゃねーぞ! 」


 俺の倍以上の声で男が叫ぶ。

 その刹那、さらにそれを上回る爆声がハンガーデッキ全体を振動させる。

 男はそれを満足げに見守ったあと、俺の方に振り返った。


「んじゃまあ大将。作戦とやらを教えてもらおうか――」


 俺は頷くと、作戦の説明へと移ることにした。



 改めて確認を取ったところ、ここに集まったのは500人余りであった。

 今回の艦隊の参加人数は50000人。内現在艦隊に残っているであろう人数は7650人ほど。

 そう考えると少なく感じるが、それでもこの無謀な作戦に参加すると決めてくれた奴だと考えるのなら十分すぎる人数だ。


 半時間ほどの説明を終えた後、俺は彼らを50人1部隊、それを10個の部隊に分けることにした。

 部隊長は集まった奴の中から、階級及び軍歴が長い者を優先して振り分ける。

 嬉しいことにMCS兵も50人ほど参加していたので彼らを一部隊5人づつになる様にできる限り振り分けた。

 そして彼らを一部隊づつ10個の強襲艇に詰め込み、作戦準備は整った。


「こちらセイヴァーⅠ。1分後、作戦を開始する。その前にもう一度点呼をとる、各部隊長は順番に応答しろ」


 強襲艇の操縦室、通信機を手にした俺は最後の点呼をとる。


『セイヴァーⅡ、準備完了』

『セイヴァーⅢ、問題ない』

『セイヴァーⅣ、異常なし』

『セイヴァーⅤ、早くいきましょうや大将』

『セイヴァーⅥ、緊張する』

 ―――――

 ―――

 ―


 各部隊長からの確認を受け取っていく。

 時々感想が混じるのは、まあ仕方がない事だろう。

 全ての隊から問題ないと応答を受け取った後、もう一度通信機を手に取った。


「よし、作戦開始時刻だ。全部隊、敵要塞へ向け発進せよッ! 」


 通信機をオフラインに戻し、目の前に座る操縦士の肩を叩いて合図を送る。

 刹那、激しい振動が始まり、続く爆音が鼓膜を突き抜け、強襲艇は<ソルヴァン>を飛び出した。



 ×   ×   ×



「そういえば、あなたの名前を聞いてなかった」


 要塞へ着くまでの移動時間。暇を持て余していた俺は、先ほどから幾度となく俺を助けてくれた男に話しかけていた。

 先程までは余りの忙しさに名前を聞いている時間がなかったからである。

 名前を知らなかったのは、仕方がなかったことなのだ。

 そう、きっと、多分……。


「モーゼスだ。モーゼス・ゴドウェン、生まれは貧しい星だった」


 男はそう言うと俺に握手を求めてきた。

 俺は、笑みを浮かべ彼の手を握る。


「クレアでいい。よろしくなモーゼフ」

「ああ、よろしく頼んだぜ。クレア」


 もう一度固く、手に力を込める。

 相手もそれに呼応するよう力を込めた――って痛いッ、凄く痛いッ!


「――い、痛い」

「おっと、すまねえな」


 離された手を、もう片方の手で擦る。

 相手も空間戦闘服を着ている。空間戦闘服には装着車の筋力を倍増する機構が付いているためにその力が俺にもダイレクトに伝わってくるのだ。

 ってことで凄い痛い。


「いや、大丈夫だ……」


 と口では言ってみたものの、痛みは中々引かなかった。

 手から気をそらすために話を振ることにした。


「そう言えば、生まれは貧しい星ってどういうことだ? 」

「ああ、そのまんまだよ。12年前、ミルキー紛争ってでかい紛争で俺の星が焼かれたんだ。元々、鉱石資源以外なんのとりえもない星だったせいで。あの紛争の後、俺達の星の人口は紛争前の半分以下になった」


 ミルキー紛争、俺が兵士――当時は年小兵――として初めて戦った戦いの名だ。

 俺の生まれた町もあの紛争に焼かれひもじく、俺は食事欲しさから軍人についていった覚えがある。

 しかしまあ偶然とはあるものだな。

 そんな風に一人感慨にふけっている中、モーゼフは話を続ける。


「もちろん俺も例にもれず餓死一歩手間にまで衰弱してた。でもまだ体は動かせた、だから偶々近くを通りかかった軍人の食料を奪おうとした」


 そんな過去があったのか、しかしなんでそんな詳しく――。


「どうなったんだ? 」

「殴られたよ。銃底でな。あの時は本気で死ぬと思った。でも死ななかったんだ。なんでか解るか」


 俺は無言で首を振った。


「そこの軍を指揮していた指揮官が俺を殴ってた軍人を止めてくれたんだ。彼らも生きるのに必死なんだ、だから少し分けてやれとね」


 俺は彼の話をただ、静かに聞く。


「ついでに彼は、俺をなぜか気に入ってくれた。で俺は彼に買われた。彼は俺の人生を買ったんだ、彼の護衛として仕える代わりとしてな」


 ここまで聞いてやっと話の流れが解ってきた。

 俺は彼の話に溜まらず口を挟んでみる。


「それがストラフェルという事ですか?」


 俺の答えは少し違ったらしい。彼は小さく首を振った。


「いいや、ストラフェルの親父だ。紛争が終わった後ストラフェルには会った。残念なことに親とは似ても似つかない糞ガキだった」


 その言葉に、心の中で俺の不謹慎さを反省した。

 彼にも、彼なりの理由があったのだ。


「まあ、死ぬときに、ストラフェルの面倒も見るって約束しちまったからな。今の今まではずっと、ああしてついてきたって訳だ」

「でも、それじゃあなんで俺を…‥」


 俺を助けて、ストラフェルを落したという事は、つまるところ――


「いいや、約束は守ったさ。これでストラフェルは死なずに済む」


 その言葉に、俺は驚きさえ覚えていた。

 彼が、本当の意味で忠義に厚い人間だという事に。


「悪かった……俺はあんたを勘違いしてたよ」

「気にするな。そう言うのも慣れたからよ」


 それから暫くの間、湿っぽい雰囲気がその場を満たした。



 ×   ×   ×



「要塞接近!」


 操縦士が告げる。

 眼前には、青白い霧に照らされた禍々しい建造物が迫っていた。

 本当に雰囲気がある場所だ。

 俺は素早く通信機を取り上げる。


「よし乗り込むぞ! 説明したとおりだ! セイヴァーⅠからセイヴァーⅤまではこのまま上部着艦ベイへの強行突入を決行。そのまま敵司令室の制圧を目指す。残るセイヴァーⅥからセイヴァーⅩまでは要塞壁面から穴を作り内部へ突入、敵要塞兵器の制圧だ。今だ! 別れろッ」

「――別働隊の離脱を確認、嬢ちゃん。このまま突入して本当に大丈夫なんだよな?」


 操縦士が心配そうに俺に尋ねてくる。

 流していた髪を、後頭部で一本に纏め上げながら俺は答える。


「安心しろ。大丈夫だ」


 正直どうなるかなんてことが起こるまで分からないんだ。

 大丈夫と言った方が絶対いいに決まっている。

 座席にかけてあったMブラスターを手に取ると、俺は兵員室の方へと向かう。

 操縦室と兵員室を隔てる扉まえでモーゼフが不敵な笑みを浮かべ待っていた。


「準備はできたか大将? 」

「問題ない、開けてくれ」

「さて、派手に行こうじゃねェか」


 モーゼフがドアの開閉ボタンを押し、扉が開く。

 後ろで操縦士が叫ぶ。


「着艦ベイに侵入、敵さんは今さっき気づいたようだ。奥から大量に来てるぞ! 」


 俺は大声を張り上げた。


「エアロック微解放! SCグレネードを隙間から投げ入れて着陸地点の確保! 全員、射撃用意」


 手前にいたMCS兵がエアロックの開閉機構を少しだけいじり、エアロックを開放する。

 そして腰に着いたグレネードのピンを抜いた後、外へと放り投げエアロックを閉じた。

 数秒後に振動、強襲艇が揺れる。

 続け様に、ハッチ付近にいた兵が声を上げる。


「ハッチ開放! 行け! 行け! 行け! 」


 強襲艇の外へと一斉に飛び出した男達の怒号、激しい銃撃音と供に、要塞への強襲作戦が開始される。


 次回の更新未定。

 諸事情により次回投稿が2月下旬以降となる可能性がありますがご了承ください。

 次回以降もよろしくお願いします。

 よいお年を!

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