変身2
急に爆撃がやんだ。
アインたちはそれを確認して退却の準備をしていた。
イングリッドの不在。
その責任をとらなければならない。
たとえアインが死んだとしてもイングリッドだけは助けなければならなかったのだ。
そう自分を責めるアイン。
突然、伝令が大声で叫んだ。
「将軍!ヤツラが来ました!!!」
ああ、これが自身の最後になるのだな。
そうアインは思った。
長く平和な時代が続いた軍人。
しかも戦略も何もかもが未熟な時代。
そんな彼らに初見の爆撃や悪意だけの攻撃を止める手段などなかった。
散りじりになった部下。
行方不明の姫。
逃げ隠れするしかできない絶望的な状況。
その全てが彼らを追い込んでいた。
「ここでワシが食い止める!皆は逃げよ!」
アインはそう宣言した。
槍を持ち怪物の群れに突っ込んでいこうとする。
もうどうでも良かった。
せめて部下を家に帰すことさえできれば良かった。
それほどまでにアインの心はポッキリと折れていたのだ。
だが、部下たちはそんなアインを置いて行こうとは思わなかった。
迫る化け物の群れを槍を持ち待ち構える兵士たち。
「将軍!我らもお供します!」
威勢は良かった。だが彼らもただ単に絶望していたのだ。
目の前のわけのわからない状況に。
もう終わらせたかった。
爆撃によりそれほどの恐怖を味わってしまっていたのだ。
まさにその時だった。
パーンッ!
小さい雷のような音が響いた。
そして突っ込んできた怪物が吹き飛んだ。
パーンッ!パーンッ!と何度もその雷のような音が響く。
次々と倒れる怪物。
その頭部はスイカのように弾けていた。
どんどん倒れていく怪物たち。
それは一方的な殺戮であった。
何者だ?そうアインは思った。
魔法使いですらこれほどまでに一方的な戦いができるはずがない。
「斥候!斥候!何があった?」
「アイン様!遠くに騎馬兵が見えます!」
騎馬兵?どこの勢力だ?そうアインは思った。
伏兵などはしてない。
イングリッド王女が学園から味方を連れてきたのだろうか?
それにしては早すぎるし兵が強すぎる。
このときアインはいくつか間違いをしていた。
アインの魔法使いの認識は数年前で止まっていた。
たしかに数年前の魔法使いなら無傷で倒すことができないだろう。
だが今の魔法使いなら真ですら一方的に殺戮することができるのだ。
「伝令!伝令!伝令!」
アインが思考をめぐらせていると斥候が慌てた様子で伝令をしてきた。
「騎馬兵の首領が話したいとのことです!向こうはソビエトの青山総書記だと名乗っております!」
アインは驚愕しながらイングリッドの不在をどう伝えればいいのかを考えていた。




