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黄生2

赤口の死から二年後。

東京地裁。


「主文、被告人を死刑に処す。」


どよめきが起こる。

被告人である、黄生はそれを現実と受け止められなかった。



地獄の始まり、それは、赤口が死んだ次の日の事だった。

病院に入院した黄生を編集長が見舞いに訪れた。


「いよッ! 酷い目にあったみたいじゃないか!」


編集長の軽口に答えるだけの気力は黄生にはなかった。

下を向き押し黙る。


「……友達が死んだんだよな……悪かった……」


気まずい沈黙。

答える気が起きない。


「ところで……写真は撮ったか?」


仕事の話だ。こんな時で仕事だ。

うんざりしながらも義務感で答える。


「撮りました……カメラはそこです……」


棚の上のカメラを指差す。

編集長はカメラをいじり写真を確認する。


「でかした! よしッ! これ持ってくぞ!」


何も答えなかった。答えたくなかった。

黄生にはもうなにもかも興味を持てなかった。


次の日、テレビをつけると自分がとった写真が写っていた。

写真の確認はしていなかった。そこに映し出されていたもの、それは吹き飛ぶ赤口だった。

その日から、メディアは煽った。無責任にセンセーショナルに。


『参議院議員暗殺される』

『赤口参議院議員。聴衆をテロリストから守り爆死』

『新たな悪の組織か! 元レッド死す!』


そしてある日を境に悪意を持った報道がなされるようになる。


『新たな疑惑! 爆死写真、撮ったのは被害者の元婚約者!』

『議員の爛れた生活! 捨てたオンナと疑惑の写真』

『疑惑の写真!癌で死んだヒロインと寝取ったオンナの壮絶バトル』


退院した黄生は、その頃には家に引きこもるようになっていた。

全てが嫌だった。もう何もかもが。


そんなある日。


「警察ですが、赤口陽介さんの殺害容疑で黄生桜さんに逮捕状が出ております」


家に来た警察は、黄生を連れて行く。家の前に押しかけたマスコミ。

手錠を掛けられた黄生に容赦なくフラッシュが浴びせられる。


「いやあ、酷いオンナもいるもんですねえ。 親友の男の妻に収まろうとして失敗したら殺してしまう。許せませんよ!」


「全くその通りですよ! 死刑ですよ!死刑!」


「顔見て御覧なさい。目はつり上ってるしね。顔はぼうっと浮いてるでしょ。これキチガイの顔ですわ」


マスコミの報道は黄生の逮捕によってその悪意をむき出しにして行った。

そして全ては黄生の不利な方向へ動いていた。



「犯行に至る経緯等。1被告人の身上・経歴等……

……地方裁判所第三刑事部裁判長裁判官……」


自己への死刑判決。

まるで悪夢。

明日には夢から覚めるに違いない。

だが、黄生桜がこの悪夢から覚めることはなかった。

※塩爺嫌いじゃないです

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