96話 首相
早くどうにかしなければと思うほど、足早になってしまう。
無我夢中で歩き、『首相室』の前までたどり着く。
扉を開ける前に、一つ深呼吸をして、リズはドアを開けた。
ーーー
中は華やかな家具や飾り物がごまんとあった。
いかにも国のトップがしそうなことだ。民から絞れるだけ絞り、自分だけが甘い蜜を吸う。そんな人に怒りがふつふつと湧き上がる。
奥へと進むと、大きな窓ガラスを見、こちらに背を向けている男性がいた。
一体何を見ているというのか、外では今まさに地獄絵図が広がっているかもしれないというのに……。
男はリズたちの方にゆっくりと振り向き、こちらを卑下するような視線を向けてきた。
それだけでも嫌気がさすというのに、男はあろうことかリズたちに向かって
「ここをどこだと思っているんだ?ただの一市民がワシに会えるだけでも素晴らしいというのに…。」
と、まるで自分が神か何かかのようにいうのである。
男はフンっと鼻を鳴らし、再び窓の方を向いた。
「…!あなたがこんなことをしようと言ったんですか?!こんなのあんまりだよ!!」
「……まるで、下のものが上の命令に忠実に従うことこそ至極真っ当である……とでも言いたげだな。」
リズは自分の感情の思うがまま怒りをあらわにし、レオがまるでかわいそうな者を見るめで男に言葉を投げかける。
男はもう一度こちらを振り向きレオの表情を見ると、ひどく憤慨した態度を取り始めた。
「そりゃあそうだろう?ワシがこの国で一番偉いのだから。愚民はワシのために命を使い果たせば良い!」
「ふむ……!老害とはこのような老いぼれのことを言うのじゃな。」
しゃがれ声が耳にキンキンと響く。ただただ気分が悪くなりそうな言葉もくわわり、リズは怒り余っていっそ泣き出してしまいそうだった。
ラタムは感心したようなことを出したかと思えば、次には冷たい声色で言葉を紡いだ。
「なっ!なっ!なんて無礼なことを言うんだ!ワシに謝らんか!!」
「ほうほう!それは失礼申した。古く廃れた……失礼、伝統のある考えをお持ちの偉大なあなた様にこのような無礼をしたこと、お許しくださいますよう。」
ラタムは清々しい笑みを浮かべ、やけに丁寧に許しを請う言葉を投げかける。
チェスは『頭が固く、おかしな考えを持っているやつのことだから、ラタムの言っていることでむしろ調子に乗るんじゃないか』と思っていたが、男は癇癪を犯したように顔を赤々とさせ、口をパクパクと開けたり閉じたりしていた。
「……!…!」
「流石に皮肉がわからぬほど頭が弱いわけではなかったか。」
こんな奴はほっておけない。放っておいてはいけない。
男のこれまでの言葉を聞き、リズは改めて、この男を捕まえると決意した。




