92話 両親との決別
「なっ!このっ!」
チェスの父親は何かを言おうと口を開くが、意味のない言葉ばかりが聞こえてくる。
母親は、チェスが自分の都合のいいように使えないとわかったからなのか、絶句している。
チェスはそんな自分勝手な親を見据えているが、内心チェスはちょっとした希望を持っていた。
ここまで自身の子供にけなされたら、『悪かった』『気づけなくてごめんね』だなんて、改心してくれないか、せめてこれまで自分が感じてきた苦しさをわかってくれまいか、そのような気持ちにすがっていた。
しかし、期待は崩れ落ちていった。
「産んでもらったくせに…!子供なんて親が自由に使っていいのよ!」
「そうだ!これまで学費を出してやったのだって、お前が大人になった時に俺たちが楽に暮らしていけるようにするためだったのに!!」
リズもおもわず顔をしかめてしまうほどだった。
ただでさえ精神が不安定気味になっていたチェスは特に心に深い傷を負っていた。
そんな彼の気持ちを察したのか、それともこれ以上毒親にチェスの姿を見せてはいけないと思ったのか、サイネリアがバッと皆の前に出た。
「俺たちに従わないならお前なんかいらない!」
怒りに任せて、チェスの父親は手のひらをリズたちに向けて、炎の魔法を放ってきた。
サイネリアが咄嗟に水の魔法を繰り出すことで、誰1人怪我を負うことはなかった。
パームがその小さな体を生かし、チェスの両親の前まで駆け出し、風の魔法を放つ。
「風の力の源よ、我が問いに答えよ!イアサール!」
小さな竜巻がその場に起こり、父親と母親は少なからず身動きがしにくくなった。
「あんまり長続きはしないパム!誰かこの2人を気絶させるパム!」
「レオ!精神魔法で奴らの意識を刈り取るのじゃ!」
「心理の力の源よ、我が問いに答えよ、カルディアー!」
レオが両手を前に突き出し、精神を集中させるために目をつむりながら詠唱する。
すると、銀色の光の靄が勢いよくチェスの両親の元へ届いたと思うと、2人はフッと、まるで操り人形の糸がプツリと切られたかのように地面に倒れ伏した。
神獣たちは警戒をとかず、ルフィナが両親の脈を図るため、すぐそばまでよる。
脈があることと、意識が落ちていることを確認すると、リズたちの方を振り向き、首を縦に一つ振る。
「チェス、君の両親はここの研究員だったんだね。」
「あぁ……小さい頃からひどかったよ。ろくに家に帰ってこないし、帰ってきても遊んじゃくれなかった。」
レオは俯いたチェスの背をさする。
この場で感傷に浸ってしまいたい。しかし、敵の本陣では気を抜いた方が負けてしまうため、また気を引き締め直すと同時に、ニックを筆頭とする神獣たちがチェスの親を拘束し始めた。




