87話 母親との再会
人々は人間の国にいた頃とは違って、活気あふれていた。
よっぽど辛い生活を強いられていたのだろうか、そんなことを考えていたら、リズは母親に会いたくなった。
今頃お母さんは私のことを心配してるのかな、ちゃんと食事はしてるかな、心にぽっかり穴が空いたような気持ちに耐えられなくなり、リズはエレンを探すことにした。
ーーー
皆がどんちゃん騒ぎ……とまではいかないが、食事をしたり酒を飲んだり、楽しそうな姿の中に紛れて中と、母の面影を探す。
お母さん、お母さん。心の中で何度も繰り返す。どうやら重度のホームシックになっていたらしい。
「リズ?」
途端、エレンの声が後ろから聞こえてきた。
とっさに後ろを振り向き、今まで探していた人に思いっきり抱きつき、大声で
「お母さん!!会いたかった!」
「リズ!あぁ……私も会いたかった!」
やっと……血の繋がった大切な人と何も警戒することなく会うことができた。
それだけで嬉しくて、リズは母親の胸元で涙を流していた。くぐもった声で泣きながら、気遣うような言葉を履こうとするのだが、音にならない。
時折鼻をすする音まで聞こえてくる。
エレンは「仕方のない子ね。」だなんて、そんなこと思っていないような慈悲の笑みを浮かべて、リズの鼻元にハンカチを差し出す。
小さい頃のように母親に花を噛んでもらうなんて、ちょっと恥ずかしいような気もするが、羞恥心に構っていられるほどの余裕を持ち合わせてはいなかったのだ。
「う゛ぅ゛。ざみ゛じがっだ!!」
「あらあら、声が変なふうになっちゃってるわよ?」
リズを心配しながらも、エレンの目にも涙が浮かんでいる。
しばらくの間2人はひしと抱き合ったままだった。
ーーー
「あのねあのね。私頑張ったの。お母さんを助けたいから頑張ったの。」
「うんうん。……ありがとうね。リズは母親思いの優しい子なのね。」
すぐ近くに座れそうな石があったためそこに座り、2人は積もる話をしていた。
リズが今まで自分が体験してきたことを語ると、エレンはリズの頭を優しく撫で、彼女が見たいとずっと思ってきた満面の笑みを浮かべた。
それを見た瞬間、リズは今まで自分が頑張ってきたのが正しかった、間違ってなかったとまで思えた。
しかし、エレンは自分の娘がこの後も危険な場に赴くことに反対だった。
「……ねえリズ。本当に戦場に行っちゃうの?」
「うん。サイネリアたち的にも私たちがこの戦いをなくすために貢献してたって思われた方がいいんだって。だから私も出るよ。」
「……リズが決めたことなら止めたくないけど……お母さん、リズにはそんな危ないところに行って欲しくないよ。」
エレンは俯いて、少し悲しそうな声色で語りかけてきた。
リズだって怖いし、本当は行きたくない。でも、チェスやオスマンも戦場に向かうのだ。
自分だけが怖いとは言ってられない、そんな気がした。
「私も本当はやだけど……でもこれは自分の中で決めたことだから。ちゃんとやり遂げるって決めたから。」
「………そっか。ならせめて怪我しないように、これを。」
エレンは自身がつけていたネックレスを外し、リズの手のひらの上にそれを置き握らせた。
握らせた拳の上に自分の手を乗せながらエレンは言う。
「それは万が一危険が迫った時に発動するように作られてるの。一回きりしか使えないのが難点だけど、ないよりはマシかと思って。」
「!、ありがとう!」
「どうか気をつけて。」
エレンから了承の返事をもらい、リズは別れ際の挨拶にふさわしい笑みを浮かべてサイネリアたちの待つ場所へと戻っていった。




